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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

登場人物

のあ

のあです

うり

うりです

えと

えとです

ゆあん

ゆあんです

ナレーション的なのが多いです

けっこう大恋愛だと思っていた。 この人しかいないと、 運命の相手に巡り会えたのだと本気で思っていた。 幸せでいっぱいの恋になると信じていた。 なのに、いつからこうなっちゃったんだろう

今から3年前、忘れもしない八月一日 私は彼に出会った。

中3の夏休み。仮にも受験生だというのに、私はろくに勉強もせず 同じ中学の友達と遊んでばかりいた。 今日は小学校からの親友である えとに誘われて、 海で花火をする予定だった。

ゆあん

おーい!こっちこっち!

自転車を降りて海岸へ向かうと、 ゆあんくんが大きく手を振った。 他に男の子が五人いる。 私たちは四人だから、 ちょうど十人だ。

ゆあんくんはえとの彼氏。 私たち三人は小学校が同じで、 卒業式の日にゆあんくんが えとに告白して付き合い始めた。 中学は離れてしまったけれど、 ずっと変わらずに仲良しだ。 初恋すら未経験の私とは 大違い。

挨拶と自己紹介もそこそこに、 みんな「花火だー!」 と叫びながら、雑然と並べられている 大量の手持ち花火に手を伸ばしていく。 みんなの後ろで選び終わるのを待っていると、

うり

やらないの?

視界の端に誰かの足が映り込んだ。 目線を上げて相手を確認する。 チビの私よりも十センチくらい背が高い彼は、首を傾げて私の顔を覗き込んだ。 間違いなく初対面ではあるものの、 彼のことは知っていた。

のあ

うりさん、だよね?

うり

え?なんで俺の名前知ってんの?

のあ

だって有名だし

うり

まじか。照れるな

全然照れていない彼を見て、 こんな風に、初対面の相手にも名前も 知られているのは慣れているだろうと思った。お世話にも広いと 言えないこの田舎町では、 たとえ別の学校だろうと目立っている人の顔や名前はなんとなく把握している。

うりさんは、イケメンで有名だった。 間近で見たのは初めてだけれど、 確かに噂通りのイケメンだし、 笑った顔が人懐っこくて可愛い。

うり

うりでいいよ。てか名前は?

のあ

のあ。私も呼び捨てでいいよ

うり

おっけー、のあな

うりさん改めうりは、 花火を待つことなく砂浜に座った。 なぜか私もつられて隣にしゃがむ。

うり

のあってどういう字?

人差し指で砂浜に”乃亜”(適当です) と書く。 すっかり日が暮れているのに、 砂にはまだじんわりと熱が残っていた。

うり

いいじゃん。可愛い名前。

言いながら、うりも人差し指で砂浜に ”瓜”(適当) と書いた。 ふたりの名前が砂浜に刻まれた。

のあ

誕生日いつ?

うり

今日

のあ

えっ?私もだよ!八月一日!

うり

まじか!同じ誕生日の奴、
初めて会ったかも。
なんか嬉しいな!

笑顔は素直に可愛いし、 なにより話しやすい人だ。 こりゃモテるだろう。 私自身、今かなりドキッとした。 いや、話しかけられた瞬間からずっと ドキドキしている。

それからうりは、自分のことを話してくれた。 ゆあんくんとは中学に入って すぐ意気投合し、 毎日のように遊んでいること。 勉強は嫌いだけど、 学校は好きだからサボらずに通っていること。運動は大好きだけど、 遊んでいる方が楽しいから 部活には入っていなかったこと。

うり

俺らやばくね?中三の夏休みに海で花火って。みんな今頃死に物狂いで勉強してるんだろうな!

のあ

私も思ってた。
高校どこ行くの?

うり

下沢高

のあ

あ、同じだ。
えととゆあんくんもだよね

うり

のあはなにコース?

のあ

普通コース行くつもり。
うりは?

うり

専門コース

のあ

もしかして、普通コースより通常授業が少ないから?

うり

ばれたか、

誕生日が同じ。 たったそれだけなのに、 勝手に運命を感じてしまう。 うりと出会えた今日は、 私にとって大切な日になった。 砂浜に書いたふたりの名前は、 帰る頃には波に呑まれてまっさらに なっていた。

それから私たちは、 中学最後の夏休みを満喫するべく呆けた うりは帰る時間が遅くなると、 遠回りになっても 私も家まで送り届けてくれた。

なにもない田舎道を ただ並んで歩いた日。 自転車で2人乗りをした日。 ひとつの傘に2人で入った日。 うりの右肩がびしょ濡れに なっているのを見たときには、 もうどうしようもないくらい 好きになっていた。

学校が違う私たちは、 夏休みが終わると今みたいに 会えなくなってしまう。 勇気を振り絞って告白しようか悩んでいた矢先、

えと

のあ、うりさんのこと好きになったの?

えととふたりきりで遊んでいたとき、 えとが窺うように切り出した。 うん、と即答できなかったのは、 えとの表情が険しかったからだ。 もしかして、応援してもらえないのだろうか。

えと

ごめん。こういうこと言いたくないんだけど。うりさんは、あんまりおすすめしない

ショックを受けて 黙りこくっている私に、 えとは続けた。

えと

うりさん、彼女いるよ

心臓が握り潰されたみたいに痛くなって、頭をぶん殴られたみたいに視界が揺れた。 放心状態になってしまった私は、 そっか、としか返せなかった

-うりさんは、あんまりおすすめしない このときえとが言った言葉の本当の意味を、 私はずっとあとになって 知ることになる。

ここで終了です

ぜひ次のも見てください

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