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第1話 - あ

2023年10月11日

#恋愛

結城　真矢

アイ

イズミ、あなた、つい最近おかしくない？

イズミ

え？どうして？

アイ

あなたが会っても、挨拶をしないって

アイ

ママ友たちが噂してるよ

イズミ

えー？挨拶してなかったかな？

アイ

気付いてなかったの？

イズミ

ええ。どこかで会ったかな？

アイ

若い頃は不思議ちゃんでよかっただろうけど

アイ

30歳過ぎたら、ちょっと、無理があるんじゃない？

イズミ

そんなこと、言わないでよ～

イズミ

アイは昔から、辛口なんだから！

アイ

その代わりに、ココちゃんの評判はうなぎ登りよ

アイ

ママ友と会っても、あんたとは目が合わないけど

アイ

ココちゃんは愛想良く、挨拶してくれるんだって

アイ

あんた、ココちゃんを見習うといいわ

イズミ

もう、そんなことばかり言って！

アイ

ところで、ココちゃん短期留学に行くんでしょ？

アイ

その留学費用を払ってないんですって？

アイ

あんた、本当に留学させる気はあるの？

イズミ

もちろん、あるわよ～。

イズミ

ちょっと支払いを待ってもらってるだけなんだから･･･

～3日後～

アイ

ちょっと、どうしたって言うの？

アイ

ママ友から聞いたけど、ココちゃんの今月の給食費

アイ

払ってないんですって？

イズミ

えっ？払ってなかったかしら？

アイ

そうよ。ここのところ、何回か同じことがあったそうね？

アイ

しっかりしなさいよ！

アイ

ココちゃんが可哀想じゃないの！

イズミ

分かったわ

～翌日～

アイ

今度はどうしたの？

アイ

男の人と噂になってるけど･･･

アイ

いったい、誰？

イズミ

レンタル彼氏よ

イズミ

あるサイトで、彼氏を貸し出しますってあったから

イズミ

試しに申し込んでみたの

アイ

目撃証言は一度や二度じゃないみたいだったわよ

イズミ

彼が気に入ったから、何度かそのサイトを利用してみたの

アイ

利用してみたの、じゃないわよ！

アイ

随分、噂になってるんだから！

アイ

あなたの旦那さんは、それを知ってるの？

イズミ

そんなの、もちろん秘密に決まってるじゃない？

イズミ

でも、バレないわよ

アイ

どうして？

イズミ

あの人って、私のことに興味がないみたい

イズミ

仕事ばっかりしてて、まったく構ってくれないんだから

イズミ

だから、バレない程度に遊んじゃっても

イズミ

いいんじゃないかしら？

アイ

そんなこと言って、近所で噂がたってるんだから

アイ

しばらく自重しときなさいよ！

イズミ

は～い

～一週間後～

アイ

ちょっと、旦那さんはあなたのこと無関心って言ってたけど

アイ

考えを改めたら？

イズミ

えっ？どういうこと？

アイ

あなたのことで、随分怒っているそうよ

アイ

旦那にバレないなんて言ってたけど

アイ

バレバレじゃない！

イズミ

えっ？なんで？

アイ

叔母さんが、あなたの旦那さんから色々話を聞いたらしいんだけど

アイ

今回はあなたが悪いと言ってたわよ

アイ

あなたが、昔から母親の言うことを聞かないから

アイ

私からあなたに、上手く話を伝えて欲しいって頼まれたの

アイ

私たちは仲のいい従妹同士だし、気心が知れてるでしょ？

イズミ

なんの話なの？もったいぶっちゃって

アイ

旦那さんが言うことには、あなたは同じようなことを

アイ

繰り返してるんですってね？

イズミ

そんなこと、ないわよ！

アイ

あなた、浮気の常習犯なんですってね？

アイ

私、そんなことはまったく知らなかったわ！

アイ

話を聞いて愕然としたわ

アイ

旦那さんは、ずっと知らない振りをしていたけど

アイ

3回目だから、我慢できないと言ってたそうよ

イズミ

夫は知らない振りをしてたの？

イズミ

私はずっと、無関心を貫いていたと思ってたわ

アイ

一回目は結婚してすぐ、ホストにハマってたんだって？

アイ

その時は、支払いが回ってこないし

アイ

結婚してすぐだったから、短期間だったし目を瞑ったんだって

イズミ

えっ？夫は知らないと思ってたわ

イズミ

あの頃は貯金が結構あって、その中からやりくりしていたの

アイ

でも、結婚してすぐにホスト通いなんて

アイ

それはダメでしょ？

アイ

あんたって、クズね！

イズミ

ひど～い

アイ

二回目は結婚５年目で、メンズ地下アイドルの働くお店に

アイ

ハマってたんだってね

イズミ

それも、バレてたなんて･･･

イズミ

その頃流行ったアイドルグループがいて

イズミ

私の推しがバーで働いてたの

イズミ

しばらく、どっぷりハマっちゃったわ

イズミ

今では、いい思い出ね

アイ

何言ってるのよ！あんたの旦那は根に持ってるわよ！

イズミ

こわ～い

イズミ

執念深い人だったのね。私が知らないだけだったのかな？

アイ

3回目は私も知ってるわ

アイ

今回のレンタル彼氏のことね

アイ

さすがに今回は旦那さんも知らん顔ができなかったらしいわね･･･

アイ

離婚だって言ってたらしいわよ

イズミ

そんな～。知らないとばっかり思ってたわ

アイ

あなたも大概厚かましい女ね

イズミ

離婚なんて、ココは嫌がると思うの

アイ

ちゃんと旦那さんと向き合って、話をするのよ

アイ

すれ違ってばかりいるから、こんなことになるのよ

イズミ

でも、今から話し合っても遅くないかしら？

アイ

とにかく、話し合わなきゃ、どうしようもないでしょ？

～３日後～

イズミ

あなたのいう通り話し合ったけど、夫の決意は変わらなかったわ

イズミ

何度も謝ったけど、今回は許せないって息巻いてるのよ

イズミ

どうしよう？

アイ

どうしようもないでしょ？

アイ

今回ばかりは仲直りは難しいんじゃないかしら･･･

アイ

あなた、浮気し過ぎだわ

イズミ

もう、そんな風に言わないでよ。反省してるんだから

アイ

ところで、ココちゃんは何て言ってるの？

イズミ

離婚するんだったら、どっちについて行ってもいいと

イズミ

言ってるわね

イズミ

でも、私について行ったら生活が不安だから

イズミ

心配だとも言っているわ

アイ

ココちゃんはいつも冷静ね

アイ

そういえば、ココちゃんの留学費用は払ったの？

イズミ

いいえ、まだよ

アイ

それじゃ、給食費は？

イズミ

それも、まだなの

アイ

ココちゃんが不安がるのは当然ね

イズミ

ちょっと、現金が手元にないのよ･･･

アイ

どうしてなの？家のお金に手を付けたの？

イズミ

手を付けただなんて･･･

イズミ

ちょっと、借りただけよ

イズミ

すぐに返すんだから

アイ

あなたって、色々と残念な人ね

イズミ

そんな風に言わないでよ

～３日後～

イズミ

どうしよう。夫からとうとう離婚届を突きつけられたわ

アイ

あなた、今までのことはちゃんと旦那さんに謝罪したの？

イズミ

もちろんよ。言われたとおりに何回も謝罪したわ

アイ

それでも駄目なら、あきらめて離婚するしかないわね

イズミ

そんな～

イズミ

私、これからどうやって生きていったらいいのかしら？

アイ

悲観することはないわよ

アイ

お金以外のことなら、相談にのるからね

～翌日～

イズミ

どうしよう。夫が慰謝料を請求してきたわ

アイ

慰謝料って、いくらなの？

イズミ

300万円よ

イズミ

それと、ココの親権が欲しいって、言って来たわ

アイ

あなた、男性ばかりを追いかけて

アイ

家庭やココちゃんのことを振り返ってみたことある？

イズミ

そうね･･･

アイ

真剣に考えてみてよ

アイ

私、あなたがココちゃんといるとき、笑顔を見たことないわ

イズミ

そうだったかしら？

アイ

ママ友たちも、そうだと言ってたわよ

アイ

授業参観の時もうわの空、ココちゃんのことを

アイ

見ているのか、いないのか？

アイ

ＰＴＡの活動は、逃げ回るばかり

アイ

みんな呆れかえってるわよ

イズミ

私って、そんな風に思われてたんだ･･･

～翌日～

ココ

ママ、私パパについて行くことにしたわ

イズミ

へっ？

ココ

パパがママと離婚するから、私はどうすると聞いてきたの

イズミ

まだ、私は離婚するなんて言ってないのに･･･

ココ

弁護士は親権はパパになると言ってたわ

イズミ

そんな･･･

ココ

でも、パパは私の意見を聞いてくれたわ

ココ

最初は、ママは私がいないとって、思ってたけど･･･

ココ

パパやお祖母ちゃんの話を聞いてたら、そんなことはないと思えてきたの

イズミ

どうして？私はココがいないと･･･

ココ

ママは私のことは二の次だもの

ココ

男の人を追っかけまわして

ココ

私の留学費は払ってなくて、給食費についてもそう

ココ

私が学校で請求されて、どれほど格好の悪い思いをしたか？

ココ

せめて、給食費だけでもちゃんとして欲しかったわ！

イズミ

ママが悪かったわ、ごめんね･･･

ココ

レンタル彼氏だなんて言って

ココ

私と年の変わらない人といちゃついて

ココ

恥ずかしいと思わないの？

ココ

近所で噂されて、どれほど恥ずかしい思いをしたか･･･

ココ

家のお金を使い込んでしまったって、パパから聞いたわ

イズミ

それは、間違いなの

イズミ

私は、そんなことしていないわ

ココ

嘘ばっかり

ココ

私のことを思ってくれていたら、せめて給食費は払ってくれるわよね？

ココ

ママだって働いてるんだから、そのくらいのお金は普通あるわよね？

ココ

いったい、そのお給料はどこに流れてるの？

イズミ

それは、その･･･

ココ

パパは留学費と給食代を払ってくれるって

ココ

約束してくれたの

ココ

私のことは一番に考えてくれるって

ココ

私、パパについて行くって決めたの

イズミ

そんな･･･

ココ

ママは私のことは二の次だもの

ココ

だから、バイバイ

イズミ

そんな･･･ココ

～翌日～

アイ

ちょっと、どうしたのよ？

アイ

この間、スーパーで会ったわよね？

アイ

私のことまで、会っても分からなくなったの？

イズミ

そう？会ったかしら？

アイ

どうしたのよ？ひどいじゃない？

イズミ

私、ココに捨てられたの

アイ

えっ？そうなの？

イズミ

学校の留学費と給食代の話をしてて

イズミ

私はあてにならないからって、ココが･･･

アイ

仕方ないわよね･･･

アイ

弁護士だって、親権はあちらだと言ってたんでしょ？

アイ

諦めなさいよ

イズミ

そんな･･･

～翌日～

スミヤ

ココから聞いているんだろ？

スミヤ

離婚と親権について？

イズミ

どうして、もっと早く連絡くれなかったの？

スミヤ

どうしてって、僕も忙しかったんだよ

スミヤ

それに、呆れていたんで、連絡が行き届かなかったんだよ

スミヤ

僕は本当に今回のことで、嫌気がさしたんだよ

スミヤ

ココは君に任せていたのに

スミヤ

学校での支払いは未納にしてるし

イズミ

そのことについては、ココに謝ったわ

スミヤ

君だって仕事をしてるのに、何だってそんなことにと

スミヤ

驚いていたんだよ

スミヤ

もう、三度目の浮気だから

スミヤ

これ以上は目を瞑れないよ

スミヤ

娘を二の次にするだなんて、考えられないよ

イズミ

それは、その･･･

スミヤ

今回は、もう無理だから離婚届を記入しておいてくれよ

イズミ

私は離婚する気はなかったのに･･･

スミヤ

そんな話は聞けないよ

スミヤ

ココは連れて行くからね

スミヤ

慰謝料はちゃんと支払ってくれよ

イズミ

そんな、300万円も支払えないわよ！

スミヤ

君も働いてるんだから、そのくらいは払ってくれよ

スミヤ

弁護士に言って、給料から天引きで返済してもらうよ

イズミ

そんな･･･。ひどいわ･･･

～後日談～

アイ

結局、従妹は離婚しました

アイ

慰謝料を払いながら１人で生活するのは大変で

アイ

安いアパートに引っ越したそうです

アイ

離婚までしたのに、従妹は悔い改めることなく

アイ

アイドルの追っかけをしています

アイ

従妹の旦那と娘のココちゃんは、英語という共通の趣味があり

アイ

二人で仲良く暮らしています

アイ

旦那さんは、離婚してからというもの

アイ

以前より快活な印象があります

アイ

従妹はアイドルの追っかけをしていて、お金が足りないのか？

アイ

ダブルワークを始めました

アイ

本当に懲りない人だと、呆れてしまいます

アイ

それでも、生き生きとした様子で、それなりに楽しんでいるようです

アイ

私はというと、従妹が不憫で何くれとなく

アイ

付かず離れずという距離感で生活のサポートをしています

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結城　真矢

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