俺には物心がついた頃から
好きな女の子がいた。
茉白──
その名の通り、
消えてしまいそうなほど真っ白で
ふわふわしてて
可愛くて綺麗で眩しくて……
茉白のことが好きでたまらなかった
それなのに──
「祥ちゃん、私、祥ちゃんのことが……」
「お前は俺の大事な幼馴染だから」
それなのに俺は、
茉白の気持ちを拒んだ
あの日、茉白が言おうとした言葉の続きは
もう聞くことが出来ないだろう
一番、聞きたい言葉なのに
だって俺は
茉白じゃない女と結婚するのだから
祥太郎
もしもあの時、素直になってたら……
茉白
祥ちゃん!!
祥太郎
え、、、
茉白
祥ちゃんってば!
祥太郎
茉白? なんで?
茉白
なんでって、幼馴染でしょう?
祥太郎
いや、会うなら連絡くらいくれてもいいだろ
茉白
祥ちゃんこそ
茉白
私に隠してることあるくせに、
どうして言ってくれなかったの……?
どうして言ってくれなかったの……?
祥太郎
は? なんだよ、それ
茉白
祥ちゃんのお父さんのこと、麗香さんから聞いた
祥太郎
!!?
茉白
結婚のこともね
祥太郎
っ……
茉白
話してほしかった
茉白
祥ちゃんと私は、何でも話せる関係だと
思ってたんだよ
思ってたんだよ
ここで茉白に手を伸ばしてしまえば
俺は茉白に顔向け出来なくなる
祥太郎
茉白には関係ない
茉白
関係ないないことないでしょ
茉白
私だって和馬だって、
祥ちゃんがずっと悩んでるの、
見て見ぬふりできないよ
祥ちゃんがずっと悩んでるの、
見て見ぬふりできないよ
祥太郎
俺のせいで誰かが傷付くのは
ウンザリなんだよ
ウンザリなんだよ
祥太郎
お前たちは大切だから
祥太郎
せめて茉白と和馬にだけは、
知られたくなかったんだよ
知られたくなかったんだよ
祥太郎
迷惑かけたくない、分かってくれ
茉白
祥ちゃんのバカ
茉白
そうやって隠される方が迷惑だって、
心配かけるって分からないの?
心配かけるって分からないの?
茉白
大切な人の弱さは迷惑なんかじゃないよ
ああ、そうか。
俺はどこで間違えたんだ
閉ざしたはずの心を癒すのは
いつだって茉白だった
茉白
話してよ。祥ちゃんの秘密
茉白
全部、受け止めてあげるから
やっぱり眩しい
茉白の光が
俺には眩しい。
祥太郎
俺の父さんな、もう長くないんだ
祥太郎
いつ心臓が止まってもおかしくないって
言われてる
言われてる
茉白
うん、そうみたいだね
祥太郎
両親が経営してた会社が、2年前に倒産したんだ
祥太郎
俺の学費を稼ぐために
アルバイトの掛け持ちと借金の返済で疲れ果てて……
アルバイトの掛け持ちと借金の返済で疲れ果てて……
祥太郎
3ヶ月前に、父さんが肺ガンだって診断された
茉白
祥太郎
俺、今まで何の役にも立てなかったからさ
祥太郎
せめて最後くらい、楽させてやりたいんだよ
祥太郎
安心させたいんだよ……
茉白
それで祥ちゃんは……
茉白
結婚を決めたんだね
祥太郎
ああ
祥太郎
同級生の麗香の父親は、総合病院の院長だった
祥太郎
結婚して一生娘さんを支えるから、
どうか父さんを助けてくださいって必死で頼んだ
どうか父さんを助けてくださいって必死で頼んだ
祥太郎
こんな馬鹿げた頼みを、麗香は引き受けてくれたんだ
祥太郎
だから……
俺は一生かけて幸せにしていかなくちゃいけない
俺は一生かけて幸せにしていかなくちゃいけない
茉白
祥ちゃん……
祥太郎
ごめんな、、、茉白
祥太郎
ずっと黙ってて
祥太郎
言うのが怖かった。
茉白にどう思われるか……こんな俺、
嫌われると思って
茉白にどう思われるか……こんな俺、
嫌われると思って
茉白
嫌いになんて……なれる訳ない
祥太郎
あの日の約束、忘れてなかったよ
祥太郎
一日だって、茉白を想わない日はなかった
茉白
……ずるい。
祥太郎
茉白
祥太郎
ごめん
祥太郎
俺は麗香はと結婚するけど
祥太郎
それでも茉白のことはどうしても大切なんだ
祥太郎
だから頼む
祥太郎
俺から離れていかないでくれ……
──ギュッ
祥太郎
……!?
茉白
分かった。分かったよ、全部
茉白
祥ちゃん、私は離れていかないよ
茉白
私が、味方になるよ
茉白
だから麗香さんのこと、絶対幸せにしてあげてね
祥太郎
茉白、、、ごめん
茉白
ごめんはいらない
祥太郎
ああ、ありがとう
──「祥ちゃんは、ホントは弱いんです」
──「私も今は、どうしていいか分からないけど」
──「祥ちゃんの力になりたいって想いだけ、 心の中にあるんです」
麗香
茉白ちゃん……素敵な子だったな……。
──「俺、忘れられない大切な人がいる」
麗香
敵わないや
麗香
そりゃあ、祥太郎くんも惚れちゃうよね