──あれは、夏の初め
僕は特別な
君に出会った───
まふまふ
おーい!こっちこっちー!
君
はいはーい…
威勢良く声をあげると、君が振り向いた
夏の初め、森で出会った君
ふわふわの黒髪の、名前の知らない君
君
え?!
君
なんか茶色いのが木に……
木を指差して、君が言った
まふまふ
あー……これはね
まふまふ
セミの脱け殻!
君
ぬ、脱け殻?!
目一杯、目を開いて驚く君
…やっぱり、君は何も知らない。
まふまふ
そうだよー、
まふまふ
セミが大きくなるときに、脱皮をした脱け殻なんだ!
こうやって僕は、いつも君に教えてみせる。
君
へぇ~!
君
物知りだね!
いつも君は、そうやって僕を褒めるんだ。
──まるで、僕を怒らせないように、と言わんばかりに
まふまふ
まふまふ
やっぱりアイスはバニラだよなー
君
……うん、バニラ美味しいよね。
ほら。
共感しかしてなくて。
他人を否定しないじゃん。
まふまふ
……君、こないだチョコレート好きって言ってなかった?
共感ばっかりじゃなくて
君の答えを、聞かせてよ──
君
………うん。
君
‘‘どっちも’’好きだよ。
うつむいて、君が言った
──また、‘‘どっちも’’か……
まふまふ
本心が、聞きたいのに…
君
え?
君が聞き返した
まふまふ
なんでもないっ!!
まふまふ
まふまふ
ほら!着いたよ!!
僕はそれを指差す
君
わぁ………
感嘆の声をあげた
君
素敵な小屋……
まふまふ
でしょ?
まふまふ
いいとこなんだ!!
指差したのは、3~4畳の小さな小屋
まふまふ
ほら!
まふまふ
ベッドまでついてるんだよ!
君
凄いね……!!
君がばふっとベッドに飛び込んだ
君
ふかふか~
幸せそうな声をあげる君。
まふまふ
でしょ?
まふまふ
まふまふ
ねぇ。
君
んー?なにー?
まふまふ
ここ、秘密基地にしようよ!
おっきな声で、僕が言った
君
君
うん!!
ふわっ、と笑って、君がうなずいた。
その幸せそうな顔を、いつまでも見たいと思った───
続く