桜子の秘密

彼は最近毎日外を眺めている。

なんだか、心苦しそうな顔をして

そろそろ桜が咲きそうな木々を見つめている。

私は席を離れそうな彼の袖を掴もうとした。

だが、掴むことは出来ず、彼はその場から颯爽と去っていった。

私は伸ばした手をそっと、自分の胸に置き、服を握りしめた。

彼が帰ってから私はある場所に向かった

まただ。

最近よくこの場所に来て、こうやって 彼に会う度に苦しくなって…

そしてまた君に

という気持ちが止まらなくなるんだ

私は、晴人くんの所に駆け足で行った

彼も私の方に近づいてきた。

あと少し…

もう少しで

やっと彼にたどり着いたと思った。

今までの気持ちも全て伝えようとした

全部、全部。

だけど、そう簡単にはいかないんだね

なんでなんだろう…

どうして、私は

死んでしまったのだろうか

スゥっと彼が私の体を通り抜けて行った

私は後ろから、ゆっくり、ゆっくりと 晴人くんに近づいた

晴人くんは、桜の木の下で膝をつき、袖を濡らしていた

そして、彼の後ろまで行き

そっと、彼を後ろから抱きしめた

私は、触れた感覚すらなく 彼も触れられた感覚すらない

だけどね

そんなことも関係ないくらいに

好きだよ