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「ばいばい」
「また仕事終わったら」
「うん、ばいばい」
今日はありがとう って 君は微笑んで言ってくれた
付き合って200日記念
同棲生活100日記念
結婚を前提に同棲生活なんて ほんとに夢みたいで
夜勤の君を送り出すのも 100回目
「ただいまー」
「おかえりなさい」
おかえりなさいって言って 抱きしめるのも100回目
いつもどおりの日常
それだけで満足
君が帰ってこない
あれ、おかしいな
まさか、1日中寝てた？
時計を見ても 時間はいつもどおり
いつも君が帰ってくる、 少し後の時間
渋滞か、なんて思って
君のための料理を 作って待ってることにした
いつもは作ってくれちゃうけど
たまには、とか考えたりして
君が帰ってこない
独りで過ごすのも 心寂しくなったから
テレビをつけてみた
いつもにこやかな表情で喋る 見慣れた女性アナウンサーが
なんだか強ばった表情で
よく知ってる道路の 交通事故を報じていた
は？
君が楽しそうに 「良いでしょこれ」って
笑っていた 買ったばかりの黒の軽自動車
一緒にドライブするのが ずっと夢で
この前やっと1回 行けたばかり
君が「この道苦手」って零してた カーブのきつい道路
でも君は何時だって慎重で
居眠り運転のトラックが
＿＿さんは 意識不明の重体で...
おかしいな
いつからニュースは 誤報するように なったんだろう
それにしても 君が帰ってこない
待ってるよ
だって君は＿＿
君が帰ってこない
用意した食事も いつの間にか冷めちゃった
お腹がすいたから 食べようか、なんて思ったけど
でもやっぱり
君と食べる方が
何十倍も幸せだから
遅いな...
君が帰ってきたら
一緒にご飯食べて
それから ドライブの予定を立てよう
見に行きたいなって言ってた 映画も行こう
あ
違う
1番最初にしたいのは
いつもと同じように
「おかえりなさい」って言って 君を抱きしめること
次で101回目
帰ってきてよ
嘘だよって言って笑ってよ
一緒にご飯とか、 ドライブとか映画とか
やりたいことなんて いっぱいある
でもそうじゃなくて
ただ君に 「おかえりなさい」って言いたい
今何日...？
まだかえってこない
窓から差し込む光が眩しい
君のための料理に 虫が止まってる
やめてよ
追い払いに 立ち上がろうとするけど
なんか力が入らなくて
喉、からから
お腹空きすぎて もう空いてるのかわかんないや
でも、君だってきっとそう
だから
もう
あとすこし
待たなきゃ
風が気持ちいい
ごめんね
君の声が聞こえた、気がした
どうして？
こんなに、待たせて
そんなの、 全然いいんだよ
ずっと待ってるつもりだった
101回目のおかえりなさい を
君に
君だけに言うために
おかえりなさい
...ただいま
どうしたの？
...なんでもないよ
いこうか
...うん
君の手に、手を重ねる
ふわ、と
身体が浮いた、気がした
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