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雪名

これ書き始めてからなんと半年も経ってました👏

雪名

ちょっとずつ描いてたんですけどね。
時の流れって早いですね。

雪名

しかもこれ前後編設定なので
まだこのお話だけじゃ完結しないんですよ。
後編出せるの1ヶ月後とかになりそうですけど🙄

雪名

ちなみに言いますと
私の過去作である
エンドロールにハナタバを
を読んでからの方が楽しめるかなーと思います。

水×白×水 死ネタ 病み系要素てんこ盛りです 桃さん序盤中盤若干クズです 苦手な方はブラウザバック推奨 病気に関してはそこまで詳しくないので捏造多々あります キャラ崩壊もえげつないかと思われ

もう一度言います。 死ネタ含みます。 私の過去作(エンドロール)よりもど直球に書いてます。 苦手な方はブラウザバックをお願いします。

雪名

言い忘れてましたが今回は。
題名に別の漢字も当てられます、なんて言うんですか、あれです。

すき-好き-隙

みたいな感じのやつです。
考察しつつ読んでみて下さい。

せいの狭間のおくりごと

ずっと、生きてるだけ無駄だと思ってた。

だから回復する事が難しい心臓の病気だと診断されたときは、 心なしか安心した。

やっと、消えられるんだって。 生きなくて良いんだって。

ーー

…ほとけさんの病気は…移植でしか治療の方法はありません。

やっと、逝ける。 そう思った。

ーー

ただ、今の病状では臓器が回ってくるかどうか…。

…ああ、もうそういう手術は良いです。
生きる気もないので。

事務的に説明をする医者に対して 投げやりに答える。

ーー

……えっと…?

不思議そうに眉を跳ねさせる医者。 …まあ、そりゃあそうか。 生きる気力のない患者なんか、そもそも病院なんか来ないよな。

…その…僕、お金もないですし、

…生きてても、身内と呼べる身内はもう居なくて。

ーー

…そうなんですか。

同情した様な目線を向けてくる先生。 …僕が嫌というほど見てきた目。

今日は別に、そんな目を向けられる為にここにきたわけじゃない。

だけど、その…
ここで僕の兄が昔…働いていたんですけど、

そこまで仲良いでもなかった兄が、 僕に遺した言葉。

《病気で生きる気がなくても、一度は俺の同僚に会え。》

…別に、守る義理なんてない。

でも、この約束だけは守らないといけない気がした。

その同僚の方と、お話したくて…

いふ、っていう医者の同僚…分かりますか?

…最期に交わした言葉だからだろうか。

ーー

…いふ…ですか。

ーー

あぁ…ちょっと待って下さいね。
1人、いたと思います。

…本当ですか…!

ーー

ええ。呼んできますね。少し待っていて下さい。

そう優しく言って先生は診察室を出ていく。

しまったドアをぼんやり眺め、しばらく経った時。

 

…お邪魔しますね〜…

診察室の扉が開き、派手髪の医者が入ってきた。

…えっと…?

 

 

うーん…

入ってくるなり椅子に座り、僕の顔を凝視する。

はっきり言って、不気味というか。

え…っと、誰ですか…?

 

え?
…ああ、ごめん。

 

俺がまろ…いふの同僚です。

は、と我に帰ったように謝られた直後、 流れる様に自己紹介をされる。

え、あ…あなたが。

 

そ。…あなたの兄には大層お世話になりましたよ。

 

…まあ。ここにきたってことは病気が悪化したんだ?

あ…まあ、あの…

悪化っていうか、…生きる意味がない…というか…?

コロコロと声や表情が変わる先生に気圧されながらも、 正直に質問に答えていく。

 

…生きる気がない、ねぇ…。
手術する気がないって感じ?

え、まあ…はい。

 

そっか。
…やっぱ兄弟って変なところが似るんだね。

何故か寂しそうな目でこちらを見やる先生に、 どこか…居心地の悪さを覚える。

…兄弟ですか?

 

そう。…まろも、生きる気は無かったから。

…そう、ですか。

どこか暗い雰囲気を纏っていた先生は、 頬を軽く叩くといきなり笑顔になって言った。

 

…あー、やめやめ!!
取り敢えず、今日から君の主治医のないこっていいます。

 

さっきの医者からもう病状は聞いてるし。
とりあえず入院って感じでいいー?

…え、は…入院?

治す気はないし、この人に会ったらすぐに家で引きこもろうと思っていたのに。

いきなりかけ離れた話題に飛んで… というか、全く考えてなかった入院という単語に戸惑う。

 

そ、入院。
君は治す気ないらしいけど、俺は患者を死なせるわけにはいけないし。

でも、…入院費用なんて僕出せません。
今の身体じゃもう、働くことも…

 

…親からの援助とか無いの?
流石に頼っても良いと思うけど…

…親って呼べる人はいません。
昔から、僕に興味なんてないから。

 

…そっか。

僕の言葉に対して驚いた様子を見せず、 どこか淡々と返される。

…まあ、そっちの方が気楽でいいか。

まあ、だから入院とかは…

無理です。 そう言おうとした時、

 

あ、そこは大丈夫。
君を入院させられるくらいのお金は預かってるから。

 

忘れちゃダメだけど、まろは医者だからね?

深い笑みで通帳らしきものを目の前で振られる。

…なんで僕に冷たかったあの兄が 僕にお金なんか遺しているのだろうか。

《自分で考えろ、馬鹿。》 なんて、兄の声が聞こえた気がした。

4日後。

流されるまま、とんとん拍子で決まった入院。 身の回りのことは、やけに手慣れている先生にやってもらった。

治療する気もないし、どうせ死ぬんだから…と 家を解約して家具とか諸々売り払おうとしたら、 大慌てで止められた。

死なせないよ。医者だからね。

救える命は絶対に救う。
治る見込みがあるのなら、最後まで尽くすから。

ええっと…はい…?

そんな、救うって言っても。 後の何も残ってない世界で生きるって、 意味なんてないじゃないか。

なんて捻くれた考えで先生の話をぼんやり聞いている。

そんな僕の気を知ってか知らずか先生は続ける。

じゃ、今日から君の担当医になる先生を紹介するね。

…え?

ちょ、担当医って…どういうことですか?

んーー説明は後!!とりあえず入って説明聞いてきて!

あ、ちょっと…!

押し込まれた先は、小綺麗な小さい部屋だった。

え、ちょ…先生!?

閉められたドアに向けて叫ぶ僕に、 どこかからか低めの声が聞こえる。

…いらっしゃい。
君がないちゃんの患者さん?

…あ…?

慌てて振り返った先に、ゆったりと椅子に腰掛ける 白衣を着た男の人がいた。

え…と、その…
お騒がせしてごめんなさい…

あぁ…全然ええんよ。

ここはそういう患者さんが来る場所やからね。
気にせんといて。

ふんわりとした雰囲気の先生は、 笑いながら手招きをする。

ほら、ここ座って?
僕とちょっとお話ししようや。

...はい。

出してくれそうにもないし、 示された椅子に大人しく腰掛ける。

それを見届けてから、先生は電子カルテに向き直る。

えーっと…心臓に疾患あり、移植手術必須…と。
で、君が手術を拒んでるんよね?

…まあ、そうですけど。

ふーん、なるほどな…。

何かが引っかかったのか、すこし顔を顰めてから彼はこちらに向き直る。

…よし。
これから僕が君の担当医を務めるってことは聞いとるよね?

まあ担当医って言ってもお話するだけなんやけどさ。

…お話…って、どういうことですか。

僕の生業は精神科医で。
今は訳あって、特定の患者さんのメンタルケアだけをやってるわけなんやけど。

ないちゃんに君の思考回路を根本から叩き直せって言われててな。

そう言って先生はますます笑みを深くする。

明日からの起きている間中、ずっと僕と一緒にいること。
これが治療方法で、入院費自己負担無しの条件ね。

…いや、入院費用なしの条件というか。 まず僕、入院したくないんですけど。

なんて、 心の奥で少し思った。

白 side.

初日だからと軽めの自己紹介だけをして 彼を部屋に帰してからのこと。

ないちゃんから患者について聞いた時は、 また面倒臭い依頼を押し付けられたな、と。

ただそれだけしか思ってなかったはずなのに。

まだ生きられる術があるのに、死にたいとか。
贅沢やで、ほんまに。

…ムカつくなぁ、ああいう奴。

生きることに一切執着しない。 楽しさを感じさせない。 希望を持たない。

あれ程までに投げやりな人は初めて見た。

…思い通りにさせたくないというか。

だからこそ、死なせたくないんよ。

そう小さく呟いて、パソコンに向き直る。

あ"ー…いったいなぁ…

光る画面を見ると、頭に鋭い痛みが走る。 そんな生活がもう2年ほど続いていて。

軽く頭を叩きながら小さく呟く。

悪化しとるな、この病気。

そんな言葉が部屋に響いた時。

お、いたいた。
探してたんだよ、初兎ちゃん。

静かな空気を切り裂くように、おどけた声を出してないちゃんが部屋に入ってきた。

…別に、僕はいつもここにおるけど。

あれ、そう?
てか、なんか今日冷たいね。

冷たいもなにも。
ないちゃんがあの患者を押し付けてきたんやろ。

…あ、やっぱあの患者さんが原因?
初兎ちゃんが苦手そうなタイプだよねー。

…苦手って、分かってて…

あは、ごめんごめん。
まあ頑張って。

何処か掴みどころの無い飄々とした態度のこの男に、 患者を押し付けてきたこの男に、 全てがムカつくあの患者に。

生きたい奴に命を回すことができない。 死にたい奴が生き続ける。

そんな全部がクソみたいなこの不条理に、 理不尽な怒りが溢れて。

…俺は、ああいう死にたいとか抜かしてる奴が世界で一番嫌いや…!!

気付いたら、大声で叫んでいた。

治療法が残っとるのに!!
生きとったらええことやってあるのに…!?

それを投げ捨てるのは、僕らに失礼ってやつやないん!?

そう捲し立てる僕に、 なんで怒ってるのかわからないとでも言うように彼は平然と言った。

…それを治すのが初兎ちゃんの仕事でしょ?

命は物と違って、別の誰かのものになることは無いんだから。

それを無駄に捨てさせないのが君のやるべきことでしょ。

…それは、そうやけど…

…てか。

ないちゃんは薄く笑って言葉を続ける。

そもそも…初兎ちゃんが病気で解雇されそうになってたとこを拾ってあげたのは俺だからね?

俺がいなけりゃ仕事すら出来てないわけ。

……

死ぬまで仕事やりたいーってわがまま言ったのはそっちだし、
俺の言うことには従ってもらわないとね。

…分かっとるよ…、分かっとる。

言ってることはブラック企業のそれだが、 生憎こいつの言ってることは的を射ている。

足掻いても無駄だとわかったし、 後は適当に本題を急かす。

…んで、本題は?
わざわざここに来たってことは言うことがあるんやろ?

あぁ、忘れてた。

そうやって彼は複雑な表情を浮かべ、 息をひとつ吐いてから話し始めた。

初兎ちゃんの病気のことについて、だね。

あぁ…。

半年前。 頭痛や倦怠感が続き、仕事にも支障をきたしていた。

…ないちゃんからも助言されて、念の為に受けた健診で、

頭に前例が無いような異常が見つかって。 …働けない医者はいらないって、クビにされた。

そこをないちゃんに拾ってもらって、 今もまだこの病院で働けている…という状態。

…んで、…結局どうやったん?

…結論から言うと。

次に口を開く前にチラリと見えたのは、 苦しそうな彼の顔。

でも、瞬きした直後にそれは消え去って。

…治らない。初兎ちゃんは。

彼は冷たく言い放った。

…う、そ。

思ったより深刻な状態でね。
手術で異常を取り除くしか無いんだけど。

それを施術できる医者が、見つからなかった。

彼の口から零れ落ちる声が、 耳を滑り落ちていく。

…なぁ、待ってや…
治すって、治すって言ったやん…

だって、病気見つけた時…大丈夫って言ったやろ!?

なんで…なんでよ、嘘やったん!?
また医者として生きてけるって…何やったんよ…?

今目の前にいる医者は言ったはずだ。 絶対に治すって。 治してみせるって。

…なんで…?

彼はその質問には答えず、淡々と話を続ける。

……あと、3ヶ月後には動けなくなってると思…

話を聞けやッッ…!!!

堪えきれなくなった悲鳴が口から溢れる。

…僕が死ぬって分かってて、
僕が生きる術が無いって分かっててあの患者を僕にあてたん!?

…何でなんよ、…なぁ…

彼はその問いには答えず、一つ呟いた。

…救えるはずだった患者を、もうこれ以上無駄に死なせたくないから。

は…?

初兎ちゃんもあの患者も、2人とも救うにはそれしか無かったんだよ。

救うって、…救うって何を言っとんの?

生きられない僕が…アイツと関わることで救われる訳ないやろ!?

どんだけ怒りをぶつけてもぶつけても、 彼の表情は全く変化が無くて。

もうどう足掻いても無駄なんだと悟る。

…もう良い、出てってや。

明日まで、1人にさせて…

…そう。

彼はおとなしく扉に向かっていく。 …そして、ふと振り返って言い放った。

俺も、死ぬ事を美化する奴が一番嫌いだ。

生きる術が残されてるやつがそれを捨ててまで死を選ぶ。
そういう奴が嫌いなのは、俺も初兎ちゃんとかわらない。

死は救済なんかじゃない。
……医者が一番わかってる事。

でも、それでも。
死しか道が残されて無いのだったら、
それを美化してもいいんじゃないかと俺は思うよ。

…俺からはそれだけ。
おやすみ、初兎ちゃん。

よく分からないような。難しい言葉だけを部屋に残して パタン、と扉が閉められる。

…それがアドバイスのつもり…?

それで罪滅ぼししたつもりなん…?

なんで俺が生きられへんの?
なんか、悪いことした…?

どうしようもないやるせなさが込み上げてきて。

…生きたいのに…ッ…!!!

漏れ出た叫びは、誰にも拾われずに流れていった。

後編に続く。

この作品はいかがでしたか?

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コメント

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ユーザー

2番さんの病んでる感じと3番さんの救われない感じ4番さんの淡々とした感じ、、すっごい大好きです!!!✨️🫶🏻

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