最後の夜景
青黄 他アプに出したやつ ちゃんとリメイクしたはずだけど 前よりも意味不になってる()
特に意味など無かった。ズボンのポケットから取り出した愛用しているスマホ。ロックを解除し彼のトーク画面を開けば四文字を打ち変換する。送信した後ゆっくりと夢の中へ溺れていった。
目を覚ませばいつもは無い温もりを感じる。何度も謎な母音を口から漏らせばベットが揺れた。目を開けば彼の胸板。暖かくて僕にとっては苦しくもあった。背中に腕を通ししっかりと固定されていて僕が動くことは不可能だ。
「…何がったの..話してよ。僕、そんなに頼りないかな…」 不安なのか彼の声は震えているようにも感じる。彼の背中に腕を回せばピクンと少し振動を感じた。彼だ。僕の求めていた彼だ。僕の作戦は無事成功し忙しく作業に追われているはずの彼は僕の腕の中だ。
「…大丈夫、ですよ..」 わざと不安そうなか細い声を口に出せば彼の腕の力は強まった。もう少しだけここままがいいですなんて言えばいつもなら離れていってしまう彼は今足を絡め合わせ、分かったと口に出した。
一時間くらい経ったのだろうか。彼のスマホが鳴った。彼は僕から離れスマホに手をかける。もしもし、といつもとは違うトーンで話をしている彼を見て僕は胸が苦しくなった。
じゃあ、なんて言って耳からスマホを離すと上着を着始めた。急用が出来たと言って僕が体を起こす時には部屋にはいなかった。また、これだ。僕がおかしいのだろうか。ここまで考えてしまうのは。
スマホで何度調べても〝嫉妬〟としか出てこなくて頭が痛くなりそうだった。違う、そうじゃないんだ。ただ僕の隣に彼がいて欲しいだけなんだ。彼の隣には、僕ひとりが。独占欲と言う奴なのだろうか。でも僕はそれさえも認める気にはならなかった。
数日経ったのだろうか。僕は彼とのトーク画面と睨めっこしている。次はなんて送ろう。××たいは前に送ってしまったから効果は薄いだろう。辛い、苦しいなんて送り付けても僕の方が疲れてて辛いし苦しいよなんて思われるのも嫌だ。
送らなくても分かってくれる、構ってくれる方法。ちょうど明日はメンバーの集まりがある。僕は引き出しの中にあったカッターに手をつけた。…少しやり過ぎてしまっただろうか。身体がふらつき始めた。でも、これで、彼に構ってもらえる。腕に荒く包帯を巻いてベットの上で時が流れるのを待った。
足に力が上手く入らず歩こうとすら思えない。でも今日彼に会えば、これに気付いてもらえれば構ってもらえる。そう信じて僕は集合場所である彼の家へ向かった。
彼の家の前では既に騒ぎ声が聞こえる。先客が居るのだろう。合鍵を使って入ればいいのだがせっかくなら彼に開けて欲しい。彼の目をしっかりと見たい、なんて思いながらインターホンを軽く押す。中から声が聞こえすぐにドアが開いた。
「いらっしゃい、…ぁ、合鍵使えばよかったのに」 忘れてきちゃってなんて無理矢理作ったような笑顔で伝えた。無意識で片腕を掴んでしまっていることにも気付かず。
部屋には既に僕以外のみんなが揃っていた。30分も早めに来たのに。僕が来るずっと前から騒いでいたかのようにみんなで食べたのであろうピザの箱やお弁当のゴミが散らかっていた。僕が来る必要なんてあったのだろうか。僕無しでわいわい騒いでいた方が楽しいのでは無いか。
僕は明らかに部屋の端の方である所に座り彼らを眺めていた。楽しそうだった。ゲームやお菓子を広げ、まるで僕とは違う世界に居るようだった。帰りたかった。昨日までのわくわくした感情なんて一切無かったかのように。
そのまま僕のことは忘れられ30分程だった。周りのメンバーも時計をチラチラと見始め僕と目が合ったメンバーがもう来てたんだなんて言えばみんなの視線が僕に向いた。
その時、初めてメンバーに怖いと思ってしまった。そこから普通に話し合いが始まり僕が参加することも無く終わった。最後にこれ、よろしくねなんて言われまた作業が増えただけだった。
その後も彼の家ではメンバーが騒がしかった。彼に構ってもらいたいなんて感情は無かった。ただひたすら、今すぐにここから立ち去りたかった。違ったんだ。僕の考えが甘かったんだ。 「..作業が残ってるので帰りますね」 「ぇ、あ、..うん」
付き合ってもないのに、ホモ嫌いな彼と付き合える訳もないのにそんな事を考えていた僕が馬鹿でしかなかったんだ。
あれ以来、彼に会っていない。いや、会いたくなくて避けている。珍しいはずの彼からのお誘いすら作業と言って断った。彼のばったり会ってしまうのも怖くて外にも出ていない。作業と息抜きであるあの行為の繰り返し。僕の身体には次々に傷が増えていくだけだった。
彼に送ったあの言葉。本当に心から思う日が来るなんて思ってもいなかった。ただひたすらに苦しくて辛くて、消えてしまいたくて楽になりたくて。おかしい程に狂っていく自分に涙もこぼれなくなった。
公式放送の今日。体調不良と言って欠席にしてもらった。体調不良は間違ってはいない。グループのメールでは何か買って持っていこうかや大丈夫?なんて言葉が送られてきていたが大丈夫ですと可愛らしいスタンプを送っておいた。後で何が起こるかなんて考えもせずにベットにダイブしていった。
気の所為だろうか。声がしたような気がして目を覚ます。目の前には一番会いたくない人。僕は無理矢理寝たフリをしようとしたが無理だったらしい。 「ねえ…これ、..なに…」 彼が指さすのは僕の腕。初めは構って欲しくてやっていたはずが今では辛い時の、毎日の息抜きだ。変に言ってしまえばもうこの行為は出来ないだろう。
「なんでもないですよ」 「なんでもないわけないだろ、…」 すぐさまツッコミを入れられゆっくりと抱きしめられる。久しぶりだからか、懐かしいようにも感じる。 「…体調は..?」 「昨日よりは」
僕が笑顔で答えれば彼は悲しそうな顔をした。何故僕のためにそんな表情をするのだろう。彼は僕の手をぎゅっと握り無理はしないでねと言って帰って行った。その何気ない行動と言葉に何故かかっこいいと思ってしまう。あぁ、好きだな。この恋愛感情は活動にも影響が出てしまっていると言うのに今の僕にはどうすることも出来なかった。
スマホを触りエゴサをする。それも、僕の名前だけではなく彼の名前も一緒に。そうすれば直ぐにワードは引っかかり僕はページに飛ぶ。普通なら許されてはいない、ダメな物。でも僕たちはそういう物に甘いから許しているがしっかりと理解していない人達の物に検索は見事引っかかる。
でも、僕はそれを見るのが好きだった。僕と彼が隣にいる世界線。付き合っている世界線。子供を作っている世界線。沢山の僕と彼の物語がある。そう、僕と彼が隣にいる事を望んでくれている人達がいるということ。僕の気持ちを認めてくれているように感じてずっと見ていたいと思ってしまう事も何度かあった。
実際には出来るはずもない、だからこそ嬉しかった。
でも、苦しいという事実は変わらなかった。終わりの無いこの感情。彼を見る度に弾む心。嫌でしかなかった。
久々に思ってしまった。彼に〝構って欲しい〟と。どうせなら前のように一瞬だけではなく長い、長い時間。彼と一緒に居たかった。決めたなら行動は早い。これは僕のいい所でもあり悪い所でもあった。
事務所の屋上。夜の冷たい風に当たりながら彼を待つ。別に彼の前では無くても良かったがもしもの時に備えて。これが最後になってしまうくらいなら最後は彼の顔が見たかった。音を立てながら開くドアに目線を向ける。彼は僕に気づいたのか驚いた表情で僕に駆け寄って来ていた。
ごめんね。間に合わないよ。好きだったよなんて口パクで伝えたが多分伝わることなど無いだろう。いや、無くていい。僕が後ろに体重をかければふわっと身体が浮いた。正確には落ちた。
あ、高すぎたかな。ふと考えた時にはもう遅くて少し笑ってしまう。ほんと、僕は何がしたかったのだろうか。構って欲しかったらこんな事はしないのに。あーあ、ほんと僕は馬鹿なんだな。
最後に見たのは綺麗な夜景と目の前の彼の笑顔だった。
〝僕も好きだよ〟
end
コメント
6件
号泣しちゃった🥺
めっちゃ好き、、 もっと早く見れたらよかった、、 ブクマ失礼します、、、
神、という言葉がこれにいちばんあってる、 てか、神しか出てこない( めちゃ、すき 小説として出して欲しいくらいすき( ? ぶくしつ、!