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第1話 - あ

2023年09月08日

#恋愛

結城　真矢

マサコ

おはようございます

マサコ

明日から、ご指導のほどよろしくお願いします

ルリ

あ～あのさ

ルリ

昨日はみんなの前で挨拶だったから、

ルリ

仕方なくあなたのトレーニング引き受けたけど、

ルリ

ほとんど、自分で見てマネしながら勉強してね？

マサコ

え？

ルリ

え？じゃなくて

ルリ

自分から学ぶ姿勢がないと、覚えれるものも覚えれないでしょ

ルリ

社会人なんだから、それぐらいしっかり分かってるものだと思ってたけど

マサコ

あの、でも店長からは、

マサコ

「お客様の施術中に実践で教えてもらいながらやれるって言われて...」

マサコ

横で見て一緒にやりながら、教えてもらえるんじゃないですか？

ルリ

実践は、専門学校で習ってきたんじゃないの？

マサコ

確かに、習いましたが...

マサコ

私は、経験数の長いルリさんからの指導も受けたいな、と思ったんです...

ルリ

新人指導とか、私嫌いなの

ルリ

進み遅くなるし、

ルリ

遅れたら怒られるのは私なの！

ルリ

なんでそんなもめ事に巻き込まれないといけないわけ！？

マサコ

手の動きは遅くならないように、気を付けます

マサコ

ルリさんには、迷惑はかけないので

マサコ

なので、お願いできませんか？

ルリ

無理！

ルリ

だいたい、店長も甘いんだって

ルリ

そんなしっかり教えてる時間、ないからね

ルリ

しっかり準備してきてよ

マサコ

はい、分かりました

ルリ

あと、実践がしたいのよね？

マサコ

え？はい...

ルリ

そしたら、私の脚のマッサージも、よろしくね～

マサコ

え？

ルリ

最近、お客さんすごい増えたし、

ルリ

店長もなんか、私にばっかりシフト回してくるし、

ルリ

最近ずっと休みなしで働いてるからしんどいの

ルリ

脚がパンパンで、疲れてきたんだよね～

マサコ

でも、私の家は狭いので来てもあまり快適には過ごせないかと...

ルリ

は？別にあなたの家でやってもらう、なんて言ってないけど？

マサコ

え？

マサコ

じゃあ、ルリさんの家ですか？

ルリ

は？ちょっとふざけすぎでしょ～

ルリ

誰があなたを家にあげるの？

ルリ

ランチタイムに脚のマッサージしてもらえばいいでしょ

マサコ

え？でも、私そのランチ休憩の時ぐらいしかルリさんと休憩は被らないですし、

マサコ

他の先輩のマッサージのお手伝いもしているので、

マサコ

勤務時間はランチ休憩以外、ほとんど休める時間、ないんです

ルリ

上達、したいんでしょ？

ルリ

なら、少しでも練習増やせた方がいいじゃない？

ルリ

ふくらはぎとか甲のマッサージだけだったら、私はランチ食べながら受けれるし

ルリ

マッサージ受けながらのランチ、って幸せ！

マサコ

えっと、そしたら勤務後はどうですか？

マサコ

私、少しなら残れるので...

ルリ

それ、私にも閉店後も店にいろ、って言いたいんでしょ？

マサコ

そういうことにはなりますが...そんな言い方は、

ルリ

良い度胸してるじゃん！

ルリ

私に残れ、なんて新人の身分で言っていいことだと思う？

マサコ

分かりました

マサコ

そしたら、この話は忘れてくれて大丈夫です

ルリ

は！？頼んでおいて、それはないんじゃない？

マサコ

母がマッサージ好きなので、

マサコ

母に付き合ってもらえないかお願いします

マサコ

なので、もうこの話はなかったことにしましょう

ルリ

母親に！？

ルリ

ウケる！

ルリ

友達に頼むのかと思ったら、母親なんだ～ｗ

ルリ

もしかして、友達少なくて学生時代地味キャラだったパターン？

ルリ

男子受け悪そうなルックスしてるもんね～

マサコ

母親が単純に、マッサージが好きだからです

マサコ

それと...

ルリ

マッサージしてもらっても、絶対にあんたのクオリティーには満足しないでしょ～

ルリ

まあ、練習に付き合ってくれるだけ、ありがたいね

ルリ

でも、お母さんも可愛そう

ルリ

時間が無駄になっちゃって

ルリ

絶対にちゃんとしてお店でやった方が疲れも取れるだろうし、早く終わるのに

マサコ

母親は、時間とか気にして私からのお願いを断る人じゃないので

マサコ

私が専門学校に通っている時も、すごく協力してくれました

ルリ

良いお母さんなのね～

ルリ

手のかかる子供を持って大変そうだけどね

ルリ

まあ、優しさに甘えれるんだから甘えておいた方がいいんじゃない？

マサコ

甘えてるつもりはないですよ

ルリ

ふーん、まあどうでもいいや

ルリ

明日は、常連客が来るからしっかり準備しておいてよ

~翌日～

ルリ

今日予約が入っている佐藤様だけど、手際悪すぎるんじゃないの？

マサコ

あの、せめて脚のマッサージだけでもいいので、

マサコ

左右で分けて2人でやった方が、分かりやすいな～と思ったんです

マサコ

次回は、横で一緒にやりながら、マッサージ進めさせてもらえないですか？

ルリ

そんなことしてたら、時間なくなるでしょ！

ルリ

もたもたやってる暇ないの！

ルリ

分からない！？

マサコ

私、そんな、もたもたやるつもりないです

マサコ

それに、最初と比べたらスピードは上がってきたと思うんですが...

ルリ

どこがよ！？

ルリ

ほぼ変わってないと思うけど？

ルリ

ちょっと上達したからって、天狗にならないでくれる？

マサコ

そんな...

マサコ

天狗になんてなってないです！

マサコ

今日の常連さんにも、「なかなか上手いわねって言ってもらえたし...」

ルリ

スピードは遅いと思うけど？

ルリ

スピードと、質の両方をしっかり高められて初めて、

ルリ

上達してきた、って言うもんでしょ

ルリ

もっと自己評価の標準上げた方がいいんじゃない？

マサコ

でも、マッサージの練習に付き合ってくれた母も、そう言ってくれましたし...

ルリ

練習でしょ！？

ルリ

っていうか、そんなに仕事覚えるのが遅いのって、

ルリ

母親に甘やかされ続けてきたからじゃない？

ルリ

可愛そうね～

マサコ

そのうち、後悔しますよ

マサコ

こう言っていること

ルリ

は？なんで？

マサコ

誰かが見てるものなので

ルリ

は？あなた、誰かにこのこと、話すつもり？

ルリ

あなたが上達遅いことに変わりはないし、

ルリ

別に、悪いことしてるつもりはないんだけど？

マサコ

そうですか

マサコ

そう思っているなら、それでいいんじゃないでしょうか？

ルリ

は？そんな身分で、よく言うわね

ルリ

私にたてついたこと、後悔させてやるから

～1週間後～

ルリ

今日も、常連客の佐藤さんだから、手際よくね

マサコ

はい、もちろんです

ルリ

失敗したら私の評価が下がるんだから、それだけは勘弁してよね！

ルリ

いい！？

マサコ

はい、気を付けます

～その日の閉店後～

店長

ルリさん、ちょっと話があるの

ルリ

はい、どうしましたか？

店長

本当は、明日直接顔を見て聞くつもりだったけど、

店長

あまりも衝撃的なことだったから、今話すわ

ルリ

はい...？

店長

今日の常連客の佐藤さんのマッサージ、誰がやったの？

ルリ

誰が、って...

ルリ

店長が私がマサコちゃんのトレーニングをしながらマッサージしてね、って...

ルリ

シフトふりましたよ？

店長

私は、そうしたわ

店長

それで？実際は誰がやったの？

ルリ

え？

店長

マサコちゃんが全部1人でやったそうじゃない

ルリ

そんなこと...ないですよ！

店長

うそ！

店長

もう、全部聞いたのよ、お客様の佐藤さんから

ルリ

え？佐藤様から...？

店長

私も、さっき聞いたんだけど、常連客の佐藤さんはもとうちの社員だそうよ

店長

辞めた後は、独立して自分のマッサージ店を開業したの

店長

え！？そうだったんですか...？

店長

しかも、佐藤様うちの会社が開く社員のグランプリで、

店長

ほぼ毎回トップ３に入るほどのプロなの

ルリ

でも、なんでそんな佐藤さんがうちのマッサージサロンに...

店長

実はね、佐藤さんはマサコちゃんのお母様なの

ルリ

え！？母親...！？

店長

マサコちゃんが相談していたみたいよ

店長

「マッサージって見ながら教えるものなの？とか、従業員のマッサージもするものなの？」

店長

とか...全部、あなたがマサコちゃんに教えたり、やらせたことなんだって？

ルリ

彼女が練習したい、って言うのでそれで...

店長

言い訳はやめてちょうだい！

店長

彼女の休憩時間を奪って練習させていたみたいじゃない

店長

佐藤様はもともと、うちの常連客だったけど、マサコちゃんがうちで働き始めて、

店長

相談される内容が怪しいと思って、この前のマッサージで証明したかったんですって

ルリ

証明...？って何をですか？

店長

マッサージしていると、リラックスして寝てしまうお客さんが大半でしょ？

店長

お客さんが寝たことを確認したら、全部後輩に仕事を押し付けてたらしいじゃない

ルリ

いえ、そんな押し付けるだなんて...

店長

本当はだめだけど、私だけが見る条件で、マッサージする部屋の個室の様子を、

店長

カメラで撮って佐藤さんが見せてくれたの

ルリ

え？カメラ、ですか...！？

店長

そしたら、あなた、好き放題やっているのね

店長

スマホ触ったり、持ってきた雑誌を読んだり...

店長

それで、タイミングよくお客さんが起きたところで、

店長

マッサージを再開して、最初から自分がやっていた、

店長

見たいな状況に思わせるんでしょ？

ルリ

押し付けるなんてこと、私しませんよ！

ルリ

ちゃんと、みんなにいちからしっかりと教えてます

店長

教えてる？あなたが？

ルリ

はい、お客様からも、ちゃんと評価はいただいていますし

店長

それなんだけど、他のお客様からの評価は下がっていたのよね～

ルリ

え？下がってた？

店長

マッサージ後のお客様の評価を見ると、あなたとマサコちゃんのペアの時だけ、

店長

極端に「上半身のマッサージは下手だったけど、下半身はすごくスッキリした」

店長

みたいな趣旨の評価が多いの

店長

もしかして、あなた最近、しっかりとマッサージしたこと、ないんじゃない？

店長

それで腕落としたとか、そんな情けないことないわよね！？

ルリ

えっと、それはどうなんでしょうか...

店長

答えはあなたに聞いてもしょうがないわね

店長

佐藤様からいただいた監視カメラの映像だけで、もう十分内容はわかったわ

店長

あなた、また新人から出直してきて

ルリ

え？

店長

会社でもうすぐ、新人トレーニングがあるでしょ？

店長

それに参加して、もう1度新しく入ってくる人たちと一緒に勉強しなおしてきて

ルリ

待ってください！

ルリ

そのトレーニング、終えるのに1年はかかりますし、

ルリ

復帰までにはすごく時間がかかりますよ？

店長

いいのよ、もう

店長

だって、もうお店を任せられる人がいるもの

ルリ

え？

店長

一番にお客さんのことを考えて、誰よりも早く上達しようとする熱意のある子。

店長

マサコちゃんしかいないでしょ

ルリ

そんな、あの子はまだ入ったばかりですよ！？

店長

あの子は、最近すごく上達して来てるし、

店長

早くて1年後には店舗マネージャーをできるかもしれない、って思っているわ

ルリ

店舗マネージャーなんて、それはさすがに行きすぎじゃ...

店長

決めるのは私でしょ？

店長

新人になったばかりのあなたに、何か言われる筋合いないわね

ルリ

う...

店長

ちょっとは反省して、お客様としっかり向き合うことから学びなおしなさい

店長

接客の基礎があなたは全然なってないでしょ

店長

そんな人に、新人のトレーニングなんてさせたくないわ

店長

そういうことだから、明日からは本社へ出勤ね

～後日談～

マサコ

それからルリさんはマッサージ店舗スタッフを降り、

マサコ

最初から全て、基礎を本社で勉強し直しているそうです

マサコ

実は、覚えることがすごく多く、スタッフになる前に必ず通るこの壁を、

マサコ

みんな苦労して乗り越えるんです

マサコ

ルリさんは2回目の苦労を体験しているみたいで、

マサコ

毎日徹夜で勉強中だそうです。

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結城　真矢

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