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1 - 思い出話 5分で読めます

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2022年01月28日

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放課後

今は僕だけの教室

君がやって来る。

にやりと笑う君は語る

私たちが出会ったのは3年生の時だよね

いい思い出ばっかりだなあ

君の黒い髪がなびいた

おはよう

声をかけてくれた君はすごく笑顔だったね

「おはよう」

名前は?

僕は緊張してなかなか答えられなかった

こんなに綺麗な同級生に話しかけられたら誰でも戸惑うだろう

だけれど君は僕のペースに合わせていてくれたね

それから君は皆と笑顔で話していたね

少し寂しかったけれど色んな君が知れて少し嬉しかった

…ねぇ…?

なかなか君の声に気づけなかった僕は急いで顔を上げる

すると君は僕が好きな笑顔でいた

悩んでいるように見えた僕を心配して声をかけてくれたようだった

「心配ありがとう、なんでもないよ」

そっか、気に病まないでね

なんでもない僕へかける言葉すら優しい

それから僕は君への想いをまぎらわすかのように他の子達と話していた

君が紙を落として廊下にばらまいてしまったね

僕はとっさに拾ったけど、そんな僕に君は

ありがとう。

可愛くて、優しくて、でも申し訳なさそうな笑顔で感謝してくれたね

その瞬間僕は君に恋に落ちているのだと知れたよ。

前々から好きだったのだと思う

君のいい所を探せばキリがないくらい

最後まで拾ってくれてありがとう。優しいね

君がまた丁寧にお礼を言う

「いいよ、このくらい」

僕は上手く返せていただろうか

じゃあ、またね

君は満足そうに消えていった

僕の誘いに来てくれた君

おまたせ、待たせちゃってごめんね

君が遅れたんじゃなく僕が早すぎたのかも知れない

それを口に出せるほど器用じゃなかった

「いいよ、行こう」

内心君の雰囲気に戸惑っていたよ

いつもは綺麗なのに今日は可愛いもプラスしていた

可愛く結びあげられた黒に輝く髪、花びらのようなピンクのロングスカート

君を見つめているとどうかしてしまいそうだった

可愛い?

僕はすぐには答えられなかった

気持ちをどんな風に伝えればいいのか、どう伝えたら相手は喜んでくれるだろうか

その事を頭の中でめぐらせていたけど、返事はすぐしたと思う

「似合ってるよ」

これが精一杯の返事だった

君が満足そうに頬を赤らめて微笑むと僕は安堵した

君と出会ってからもうすぐ1年が経つと思う

卒業してしまう前に告白しようと思った

卒業までは1ヶ月

卒業しても寂しくならないように僕のそばにいてほしいし君のそばにいたい

その思いを決して君以外に伝える気はなかった

あの日、君と初めてあったこの場で告白することに決めた

告白した僕は気が気じゃなかった

君は耳まで真っ赤にそめていた

きっと僕も同じだった

君が泣きそうなのか分からない、鈍感でダメな僕に対して

君はうなずいてくれたね

「私も好きでした。よろしくお願いします」

はっきり口に出してくれた君を抱きしめた

この日は今までの人生の中の大きな山だったのかも知れない

君が話し終わる

ここには僕しかいないから 好きなように好きなだけ話せたのだろう

だけど僕の視点で、僕のように話す君は、少し意地悪じゃないかな?

君が微笑む

「こんな事もあったよね」

その話を僕は君から何回聞いたのだろう

「あの時は…」

思い出話につかっている楽しそうな君

でも少し寂しい顔をしていた

通話終了

通話
03:02

君の事故を知ったのはその日の事だった

命は助からないのだという

声が出なかった

絶望と悲しみで何にも手をつけられなかった

電話越しだったけれど君の声を最後に聞いたのは僕だった

君は何を考えているのかわからない

君が事故に遭った事を君は忘れているかのように楽しそうに思い出を語っていた

いや、本当に忘れてるのかもしれない

時々僕だけがいる教室にあらわれて 思い出話をするのはなぜだろう

そして最後には寂しそうに笑って消えていくのは何故だろう

この前君に「笑顔が好き」って言ったことが君を苦しめていないだろうか。

大好きだったよ、じゃあね

いつもは「またね」と言うのに今日だけは違った

僕も好きだよ、ずっと

満足そうに微笑んだ君はもうこの世に悔いなんてなさそうだった

今日が卒業式だからかな。

次会う日は違う世界かもしれない

その時はまた僕は君に恋するだろう

見えないはずの君の黒髪が 風に吹かれて 綺麗になびいてるように見えた。

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