カーテンを閉めて

アイドルなんて、辞めてほしかった。

瑠璃の母親も、結婚を機にアイドルを辞めたらしい。

俺は、生まれてはじめて人の不幸を望んだ。

そうだな。お前には、才能なんてない。芸能界のたった一筋の、流れ星。

本当は女優に転身するとかやりようはあった。でもそんなことはしてほしくなかった。

売れたければ変わらなければいけない。そういうところなのだ、芸能界は。

お前はそのままでいてくれ。

この日を、待ってた。

俺は一緒に暮らさないかと誘った。断られるのではと思ったが、瑠璃は頬を赤らめながらも承諾してくれた。

そして、キス写真をばら撒かないかと提案した。

瑠璃はいつもの愛らしい笑顔を見せた。

呑気そうにつぶやく。全く傷ついてないようだ。

これで瑠璃のアイドル復帰は困難になった。

出ようか迷ってるらしい。

俺と瑠璃は二人だけで結婚式を開いた。

薔薇色の唇にそっと触れる。子どものようなバードキスだった。

告白されたことがあった。何度目だろうか。

女友達だった。見た目は悪くなかったが、好きになれなかった。

彼女とか、面倒くさかった。好きに遊びに行けなくなるし、束縛ダルそうだし。

嘘をつく。

また嘘をついた。瑠璃のことが気になっていた時だった。

奴は呆然としていた。

俺はボウリングの球を転がした。

嘘だ。プライドが邪魔して嘘をついてしまった。

元彼みたい。瑠璃にもそう言われてしまっていた。

好きに言えば良い。

これも嘘。アイツ、絶対こんな奴にも愛想笑いしてくれるんだろうな。そういうところが腹立だしい。

今日はたくさん嘘をついた。まあそんなことはどうでもいい。家に帰ったら瑠璃がいるんだ。

今日も可愛い。

全身を見ると白いワンピースを身に纏っていた。なんだか、良いな。

この生活が、ずっと続いてくれれば良い。

結婚という名の束縛は、何故か心地よいものだった。