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中学2年生の夏、鬱を殺した
人気のない森に呼び出して、コンクリートブロックで鬱の頭をかち割った
2、3回頭を打ち付けたら動かなくなった
それから10年後
10年が経った
あの頃のことは夢だったんじゃないかと思うくらい、普通の人生を送っていた
高校も出た、大学も行った、就職もした
鬱のことなんかとっくに忘れていた
___はずだった
だが柊斗の部屋のクローゼットの奥には、あのコンクリートブロックがまだある
捨てていない
捨てられなかった
なぜか分からない
8月。 猛暑日だった。
仕事終わりにコンビニで買った缶ビールを片手に、柊斗はアパートの階段を上っていた。
汗でシャツが背中に張り付いている
不快な夏だ。 蝉がうるさい。
ポケットの中で、スマホが震えた
通知。 LINEだ。
画面を見ると、知らない名前からメッセージが来ていた
鬱
鬱
アイコンは猫のぬいぐるみの写真
プロフィール名は「鬱」。
嫌な汗が、暑さとは別の理由で背中を伝った
柊斗
突然吐き気が襲ってきた
急いでドアを開け、トイレに入る。
柊斗
便器に顔を突っ込んで、胃の中身を全部ぶちまけた
ビールが酸っぱくなって喉を焼く
涙と鼻水が勝手に出る
えずきが止まらない
あのコンクリートブロックの重さ。手に伝わった鈍い振動。 ぐしゃ、という音
10年間蓋をしていた記憶が、LINEの通知ひとつで 全部こじ開けられていた
スマホが震えた。また
鬱
また震えた
鬱
また
鬱
また
ひっきりなしに通知が鳴る
トイレの狭い空間に振動音が反響して、 頭がおかしくなりそうだった
気持ち悪い。
吐いても吐いても収まらない
あの藍色の髪が、片目だけ見えてる顔が、 ヘラヘラした声が___
全部、脳の奥から這い出してくる
スマホがまた光った
鬱
柊斗
便器の縁を握る指が白くなっていた
胃液しか出ない
もう吐くものがないのに、身体が勝手にえずき続ける
通知が止まらない
鬱
鬱
鬱
同じ文字が画面を埋め尽くしていく
スクロールしても終わらない
同じ「なあ」が何十行も並んでいる
そしてぴたりと止んだ
静寂。蝉の声だけがトイレの小窓から聞こえている
__ピンポン
玄関のインターホンだった
柊斗の部屋はアパートの2階、角部屋
玄関はトイレのすぐ横
ドア一枚隔てた向こうに、誰かがいる
ピンポン。ピンポン。ピンポン。
3回、4回、5回。
規則正しく、丁寧に、 まるで友達の家に遊びに来たみたいな気軽さで
そして声が聞こえた。 ドア越しに
くぐもってはいるが、 聞き間違えようのない関西弁
おーい、柊斗〜?おるんやろ?
第一層
終幕
コメント
1件
あ゛〜〜〜〜〜これ、やばいやつや!! 正直、最初のコンクリで鬱を♡♡♡シーンで「えっ」てなったけど、10年後にLINEで「鬱」から連絡来るところから一気にホラーになったわ。吐きまくる柊斗の描写とか、便器の前でフラッシュバックする感じ、めっちゃリアルでゾワゾワした。最後の「おーい、柊斗〜?」の関西弁、ドア越しに聞こえるの想像しただけで背筋凍る…。これは続き読まざるを得ないやつや。お疲れ、Otoufuさん。良い衝撃もろた🔥