その後、部屋に戻ってから3人で食事を始める。
私の目の前には異世界の食物、溶き卵を包んで焼いたプレーンオムレツに葉物野菜を刻んだものと、食べやすい大きさに切られた焼き加減の燻製肉や、よく目にする堅焼きのパン…
それから、柔らかな香りを伴う白い汁物… おそらくポタージュ類だ。
見てくれは前世の料理と変わらない…
が、果たして食べても大丈夫なのかと内心気を揉む…
なにせ、本来なら猛毒である魔力なる摩訶不思議な代物が溢れかえる世界。
食材の中にそれが含まれていたとしてもおかしくは無い。
恐る恐る2人の方を見ると美味しそうな顔を浮かべながら咀嚼している
特に問題なさそうだが…
エレノア
ミランダ
保安官
何を躊躇う!お前はかつて西部の荒野を戦い抜いた男だろ!
この程度で怖気付くな!
食え!
目を瞑り、思い切り口に頬張る。
すると…私の口に広がったのはなんとも言えない旨み!
保安官
途端に、私の口元から無意識に大量の唾が溢れ出る。
保安官
そこから先、無我夢中になって出された食事を頬張っていった。
自分が今少女のからだということも忘れる程に…
なんならほんのり目元から涙が滲むような感覚さえ覚えた。
エレノア
ミランダ
保安官
直後、食べ物が喉につっかえてむせ込んでしまう。
ほら言わんこっちゃない!
という声と共に、差し出された水を飲みながら喉の詰まりを解消していく。
保安官
エレノア
保安官
どれも実に美味だ。
なんならネバダの田舎町や陸軍の士官食堂で食わされた料理よりもよっぽど良い。
さすが王宮だけあって、食材の新鮮さは段違いだった。
ひとしきり、おかわりを貰って満腹感と同時に…
昨日から張り詰めていた神経が緩む感覚を覚えた。
よっぽど気を張ってたのかもしれない…
ミランダ
保安官
私の顔を見た2人が穏やかな笑みを浮かべながら後片付けをしていく。
満腹になってふと思い返したが、我ながら食の大事さを失念するとは良くない事…
一先ずは余韻に浸ろう。
その後エレノアさんとミランダさんが別仕事で退出した後、1人部屋で思案に耽る。
空腹は落ち着いた…
これからは、目標を果たすことに考えを向ける。
「この世界に慣れること…」
自然と生活していけば否が応でも慣れていくだろが…感覚的に慣れるよりも早く、常識やこの世界の歴史を始めどのような国があり…どのようなもの達が住むかを学ぶべきだ。
次に2つ目、こっちは3つ目にも通ずるものがある…
「魔法、あるいは祈祷の習得…それから魔石」
これらを早いうちから身につけねばならない。
幸い、私の面倒をみてくれると、国王が色んな王国関係者達の前で公言してくれた。まぁ中身がお嬢さんでないあたりやや情報に偽りありな気もするが…
だからといってこんな非力な身体じゃ畑仕事しようにも、クワやサスマタに振り回されるのがオチだ。
当面はお言葉に甘えさせて頂くとする。
それに気になることもあった
リーンフリート
ジョンソンに似る騎士長、あそこまでそっくりさんのご登場、奇跡が起こらない限り早々無いが、そんな奇跡が起こったのならば他のそっくりさんがいる可能性も充分ある。
ただ…そうなると、妻のアメリアのそっくりさんがいた場合の事…
自分で言うのもなんだが、妻は本当に気建てが良く何より美人。私ではない誰かと夫婦となっているかもしれない…
果たして、その現場を目撃した時私は穏やかでいられるのだろうか?
無論、見知った顔ならば、幸せな生活を送るに越したことはないが…
私は素直に、妻のそっくりさんを祝福できるのか…
不意に、腰掛けているテーブル席の上で頭を抱えた…
保安官
つい口から零れてしまった…
何か気分の変わることがしたい…
保安官
そうして、部屋の外に出る。
兵士
保安官
私が顔を出したのは、城内にある練兵場の厩舎。
生前、気持ちがあがらない時やモヤモヤを解消したい時は、馬を走らせて風を感じながら凝り固まった思案をよく吹き飛ばしていた。
保安官
兵士
保安官
兵士
保安官
まぁ、子どもが馬に乗りたいなんて言い出したら普通そうなるか…
兵士
困惑している兵士が、そう言って奥から簡易的な轡をつけた小ぶりの一頭を引き連れてきた。
やや遠巻きに見えるものの、立派な毛並みを持つ栗毛…
やっぱり王都ともあれば扱ってる品種は上等だ。
保安官
と思ったが、栗毛が近づくにつれ嫌な予感が漂ってきた。
保安官
兵士
保安官
しまったなぜこんな初歩的な事に気づかなかったのだろう…
中世文化圏の王城といえば一大軍事拠点としての側面も持ち合わせる。
そこで扱われる乗用馬、性格に違いがあれど乗り込むのは兵士だ。
なら飼育されてる馬もまた、戦争という空間を疾走できる胆力を持つ馬しかいない!
軍馬
私の目の前に来たソイツもまた気象の荒い吐息を漏らしてる…
あれれおかしいぞ馬ってこんな怖い生き物だったっけ!?
その巨体に思わず後ずさりしてしまう
兵士
保安官
なんて強がりを口にしたのはいいけど…
内心、チビりそうだ!!!
が、馬に怖気付いて乗る前から諦めるなど、保安隊の長を務めた私のプライドが許さん!
そうして、轡の紐を掴みながら足掛けに片足を乗せた。
兵士
保安官
兵士
半ば強引に大股を開いて馬に跨る
軍馬
直後、馬が暴れ回り、全身を思い切り振り回し始める。
必死に手網にしがみつくも、全身を支えきれずぶっきらぼうに投げ出されかける
保安官
そのまま大暴れしてくる馬が、全身をうねらせ…
衝撃で私も宙に投げ出された。
保安官
兵士
駆け出した兵士の人が、空を飛んだ私をキャッチした。
兵士
保安官
兵士の腕の中で半泣きになりながら全身が震えた…
生前、苦戦することはあれど多くの馬を制御して見せたというのに…
軍人として悪友と戦地を走り抜けた時なんか扱いの難しい軍馬だって乗りこなしたというのに!!!
娘のからだとはいえ制御するどころか、馬に放り出されるなんて…
ほんとに情けないぃぃ!!!
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