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製菓実習室を出ると, 廊下は思ったより静かだった。 授業の切れ目だからか, 人の気配が薄い 康平は, 少し前を歩いている。 歩幅は揃えているのに, 並んではいない 蓮音は, その背中を見ながら考えていた。 さっきの沈黙の続きを, どこで終わらせるべきかを
康平
呼ばれた気がして, 足が止まりかける
康平
一拍,遅れて 心臓が跳ねた 蓮音は振り向かない。 振り向いたら, 何かが決まってしまう 気がしたから
蓮音
康平
言いかけて, 言葉が止まる。 康平は頭を掻いて, 小さく息を吐いた
康平
蓮音
いいわけがない。 そう思ったのに, 声には出なかった 康平は歩き出す。今度は、 ほんの少しだけ、距離を詰めて 名前で呼ばれた余韻が, まだ,胸の奥に残っていた 溶けきらなかった言葉とは, たぶん,こういうものだ 言われなかったこと。 言い返さなかったこと。 それでも,確かに置いていかれたもの 蓮音は,視線を前に戻す
蓮音
その言葉は,口にしない。 康平の背中が,少しだけ近い それだけで, 今日の距離は, 昨日とは違っていた