如月 朔良
わからなかった
如月 朔良
ここが何処で
さっきまで何をしていたのかも
『 帰らなきゃ 』
私の本心はそう言っていた
でも 、
如月 朔良
私が歩いてきたであろう道は
"壁" だったのだ
この場合は「変わっていた」が正解かな?
ええい!今はそんなことどうでもいいわい!
如月 朔良
私は壁にそっと触れる
ひんやり冷たく、硬いその壁は
なにか恐ろしく不気味だった
如月 朔良
私は決心し、手を強く握りしめる
『 ダンッ...! 』
力強い音が路地裏内に響いた
如月 朔良
私は握りしめた右手を労わるようにさする
私は壁を思いっきり殴ったのだ
もしかしたら壊れてくれるかも〜
みたいな考えから。
今思えばめっちゃ無謀......
如月 朔良
でも、馬鹿ポジティブみたいな考えを捨てられる訳もなく、
私は壁を叩き続けた
如月 朔良
あれからどれだけ経ったんだろ
私はもう疲れていた
手は赤く腫れ 、じーんと熱くなっている
如月 朔良
それでも私は「諦める」ことはせず、
また、手を高く振り上げた
『 そんなに頑張ること? 』
如月 朔良
ふいに揺らいだ迷いで腕を はらりと下におろした
『 でも、帰らなきゃ 』
頭の中で誰かが言う
でも、どこへ ...___?
バイトもやめた今、
私は誰にも必要とされていないようなものだ
帰る場所なんてあるんでしょうか
如月 朔良
とうとう私はこの状況にどうしていいか分からず
膝から崩れ落ち、力なく地面に座り込んだ
『 へい、らっしゃいっ! 』
如月 朔良
ふと聞こえた気持ちいいくらいの濁声に
バッ...と前を向いた
前はぼんやりともった提灯の灯りが漏れ、淡い光を放っていた
それにうっすら人(?)の影も見える!
助けを呼べるかもしれない。
そんなちっぽけな希望を胸に
私は体を引きずるように進んでいった
でも 、
『 カエルの内臓は売り切れたんですわー 』
つづいて聞こえてきた濁声に
そんな希望は一瞬で打ち砕かれた
カエルの内臓!?
そんなん売ってんの!?
てか食べれるんだねぇ、あれ。
学生の諸君。いや、そうじゃない君も覚えておくといい
安易な期待は簡単に裏切られるぞ!
心の中で決めゼリフてきなことを言うと
私は脱力したようにまた、座り込んだ
ふりだしに戻ったよォ。
もしかしたら二度と帰れないどころか
私 、食べられるかもね
やだなぁ....、美味しくないのに....
なんかよく分かんない侘しさから
ぽつり、
小さな小さな涙が一滴、手の甲に零れた
如月 朔良
如月 朔良
私はごしごしと強引に腕で涙を拭う
人に言えるような人生歩んでない奴でも
やっぱ最後ってなると涙も出るんだね
最後に彼氏つくっとけばよかった。
最後に高ぁいステーキ食べとけばよかった。
最後に 、最後に────
『 ジャリッ..... 』
乾いた音が路地裏内に響く
なんだよぉ、もうちょい後悔 振り返ってもいいだろぉに。
如月 朔良
私は「最後」 ともいえる力を振り絞り
震える手を握りしめ、ゆっくり前を向いた
如月 朔良
淡い光の逆光で
姿こそ見えなかったが 、
背の高い男性が1人、確かにこちらに向かって歩いてくる
うーわ、イケメンそー
イケメンに食われるなら本望だわ。
できれば生きてたいけど
私は逃げもせず、唇をかみしめてその男性を見つめていた
『 ジャリッ......ジャリッ......!! 』
だんだんと近づいてくる足音
『 ピタッ.... 』
ついに男性は私の目の前でぴたりと止まる
あー、終わったんだなー
お母さん 、産んでくれてありがとう
おばあちゃん 、飴ちゃんくれてありがとう
あと、支配人─────
『 ストンッ....! 』
如月 朔良
私は飛び上がるようにして立ち上がった
大丈夫 、急にイケメンがいてびっくりしただけ
大丈夫、大丈夫。
色んな人に感謝を思っていると
男性が視線を合わせるようにしゃがみこんだのだ
如月 朔良
私は恐怖を押し殺すように睨みつける
???
口元を狐のお面で隠した男性は
何か考え込むようにしばらくの間じっと黙って私を見ている
なんか喋ってくれよぉぉぉ!
ふつふつと湧き上がってくる恐怖を無視できなかった
ほんの少し紫がかった奇麗な目
今にも吸い込まれそうだった
???
やっと聞こえた男性の声。
少し高くて綺麗な声。
お面のせいで少しこもった声。
初めて聞いたはずなのに 、
???
その声に懐かしさを感じていた__
終わり。
(※昨夜 投稿したものを修正して再投稿しています。)
コメント
2件
最高です! 続き楽しみです!
面白かったです!この後はどうなるんだろう…?