梵 天 最 強 メ イ ド

資料が完成して ベッドにダイブする

飲みたいとは言ったが 酒ザコです

居酒屋じゃなくて カフェとか行っちゃう？

起きる 働く 寝る

最近はずっとこれを 繰り返していたし

少しくらい 息抜きも必要か

一応スマホで 首領に一言断りを入れ

ウキウキルンルン お洒落着に着替えて

部屋を出た

歩き始めて少し

心地よい潮の匂いが 鼻を刺す

君と兄と私

それからみんな

思い出す限り 幸せな日々

人を殺しても 笑って生きてる自分

心底吐き気がする

仕方ないなんて言い訳を 自分に言い聞かせて

気の向くままに 海沿いを歩いた

見慣れた道も 今なら違って見える

そう感じる度 戻れないあの日々が 恋しくなる

しばらく歩くと 懐かしい公園に辿り着いた

ブランコ

滑り台

シーソー

何気ない遊具が 私の胸を締め付ける

一つ伸びをして なんとなく辺りを見回すと

黒い髪の 20代程の男性がいた

何処か見覚えのある 男の人が

「 あ 」と

その声が出るより先に

頭の中でサイレンが鳴った

ダメだ、この人は

近寄るな 声を出すな

間違いない

彼は ──

間違いなく 私の兄

“ 花垣武道 ”だった

やってしまった

そう思うより先に 私は咄嗟に隠れた

首を傾げる兄さんに対し

私の心臓は 有り得ないほど跳ねていた

叶う事なら 今すぐ彼に抱きついて

「 久しぶりだね 」って

そう話しかけたい

これ迄の空白を 埋める様に

親愛なる兄に 手を伸ばして

その指先は 小さく宙をかいた

だって ──

今の私達は “ オモテ ” と “ ウラ ”

一つになることは 有り得ない

有り得ていい はずがない

目の前の兄に バレない様に

小さく呟いた その言葉は

視界が霞む程 苦しいモノだった

名残惜しさを感じながら

踵を返して 兄に背を向ける

── 時だった

ｶﾞｼ ｯ

兄の手が 私の腕を掴んだ

確かめる様に その名前を呼ぶ兄さん

あの海みたいに青い目が 私を見据える

辛い

手を振り解いて 逃げ出したい

本気でそう思ってるのに 体は言う事を聞かない

ようやく出た言葉さえ 君は見抜く

その青い目が 一つの嘘も見逃してくれない

そう言って 穢れを知らない言葉を掛ける

その言葉に、私は ──

感情を 零してしまった

口から出た言葉は全て 兄への謝罪だった

兄さんはきっと 一度私を落ち着かせるべき

そう思ったのか そんな提案をしてきた

結局カフェに二人で入り

向かい合って座る

そこで私は全部話した

今迄あった事

今に至る経緯

その全てを 一つずつ

やっぱり聞くよね

そうだよね 受け入れられないよね

夢花、ね

やめて

やめてよ

これ以上私を

苦しめないで？

冷たい口調で 言ってしまった

それを後悔しても 出た言葉は戻せない

ﾊﾞﾀ ﾝ ｯ

夕暮れの下を がむしゃらに走った

逃げたくて 消えたくて

自分の後悔を 兄に当てつけた事

その事への嫌悪感が 腹の中を掻き回した

走って着いたのは 普通の神社

感情が 土石流の様に流れ出て

歪む視界に 崩れ落ちた

嫌悪も 憎悪も

全部自分自身のせい

自業自得な物語に 砕けそうになる

時だった

ｽﾞｷ ｯ

頭が割れそうな程の 激痛が

全身を走って

そんな誰かの声が聞こえ 私の視界は暗転した

♡ 2000