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水の中を泳ぐ夢を見た。

海は透き通っていて、水の中でも自由に呼吸をすることができた。

しかし、その代償と言わんばかりに、音が聞こえることはない。

真っ直ぐな沈黙の中、終わりのない海の中を漂い続けていた。

ーーピッピッ

機械音が規則正しく鳴っている。

しかし、その音は海の中のようにまるで響かなかった。

壁越しに音を聞いているような気分だった。

大陽

(、、、そうか、、)

大陽

(病院、、か、、、)

きっとこれも、意識を取り戻したばかりだからで、単なる意識障害だと思った。

しかし、次の瞬間、心臓がどきり2回、と嫌な音を立てた。

大陽

(まさか、、、)

大陽

(いや、そんな、、、)

大陽

っ、、、!!

大陽

(たかちゃん、、、)

気が付いたら、ナースコールのボタンを押していた。

バタバタと忙しない足音が水の中で聞こえる。

大陽

、、え、、、

大陽

そん、な、、、

医師

残念ですが、、、

医師

病気の進行は極めて危険な状態です

大陽

あと、、、

大陽

もっと、、、聞こえなくなるんですか、、?

医師

、、、、

医師

進行のスピードは一概には言えませんが、

医師

今のように、本当に徐々に、徐々に聞こえなくなっていきます、、

医師

後日、精密検査をしましょう

大陽

、、、、

大陽

わかりました、、、

医師

今は、安静にしていてください。

大陽

はい、、

それはもう、心地よい海の中ではなく、冷たく暗い底なしの水槽に沈められたようだった。

その暗闇に光などない。

行く先などない。

しかし、心のどこかは冷静にその出口を探している。

大陽

、、さっき、、

医師

、、?

大陽

たか、、

大陽

隆、、は、、、

大陽

まだ眠っているっておっしゃってましたが、、

医師

、、はい、

大陽

彼は、、僕より酷かったんですか

医師

、、、、

大陽

教えてください、、、

医師

間宮さんの場合、

医師

銃創があまり深くなく、致命傷となる場所は避けていたので、、

医師

回復が早かったのだと思われます、、

大陽

、、、

医師

しかし三ツ谷さんは、、

医師

想像以上に傷が深く、致命傷となるような場所に傷があったため、、

大陽

、、、、!

医師

出血多量で、一時、心肺停止に至りました、、、

大陽

、、え、、、

医師

心肺は戻りましたが、心肺停止時間が長かったので、、、

医師

目を覚ますのかは、、ご本人の生命力にかかっています、、、

大陽

、、、、

大陽

目を覚ますかは分からないってことですか、、?

医師

ですが、三ツ谷さんは若くて健康な体でしたので

医師

そういった方で、回復した方は沢山います

医師

しかし、一概には言えないので

医師

覚悟は、、、必要です、、

大陽

、、、、っ、、

大陽

彼は、、今どこに、、??

医師

お隣にいらっしゃいますよ、、

大陽

、、か、、カーテンを、

大陽

開けてもらっても、、、

医師

、、はい、、

カーテンが開かれる。

隣で眠る彼は、思いのほか穏やかな顔つきだった。

大陽

、、っ、、

彼の言葉が頭に響き渡る。

''来世では絶対一緒になろう''

まるで最後のような言葉。

左手の薬指には、指輪が輝いている。

''来世''

そんな言葉は信じない。

信じたくない。

視界が曇っていく。

頬に熱いものが蔦る。

大陽

たかちゃん、、、、

大陽

ぅ、、ぁ、、、

大陽

嫌だよ、、、

大陽

早く、、、起きて、、、

気が付けば医者はおらず、カーテンで囲まれたこの空間だけが、別世界のように思えた。

全てが運命の定めであって、偶然のような必然だとしたら、こんな日が来ることも決まっていたのだろうか。

その運命の波に乗って泳ぎ続けたとしたら、これからどんな未来が待っているのだろう。

心の矛盾に耐えきれず、涙が溢れる。

メトロノームのようになる心拍を打つ二つの機械音のテンポが、次第に寄り添っていく。

暗い水槽の中に、彼の姿を認めた気がした。

患者

おはよう、いつも早いわね´`*

大陽

おはようございます*_ _)

患者

今日も彼に会いに?

大陽

えぇ、まぁ^^*

患者

今日で何週間だい?

大陽

ちょうど、、、3週間ですかね、、

患者

3週間ね、、、

大陽

僕が通ってから3週間なので、、もう1か月は経ってるんですが、、

患者

、、、季節が変わってしまうわね、、

患者

夏はあと少しなのに、、

大陽

、、、、

患者

それじゃ、

大陽

はい、、

今日もいつものように彼の病室に向かう。

あの日から1か月。

彼の意識はまだ戻らない。

その間、事件は解決し、燐は今、裁判中である。

奴の拳銃は、刑事から奪ったものだったという。

隆は、姿を消していた1か月の間、燐を起訴するための準備をしていたのだと聞いた。

長かった1か月の、その後の一瞬の幸せ。

その一瞬はさも簡単にその長い時を洗い流し、残酷な一瞬はそれすらも奪っていく。

永い悲しみの先に光が待っているなど、ただの綺麗事だ。

悲しみの後に待っているのは、必ずしも後悔と罪悪感だ。

しかし、光とはいかずも小さな幸せは必ず来る。

僕らはその幸せのために悲しみを乗り越え、苦しみ、耐えるのかもしれない。

そんなことを、治療室に向かう白い廊下で考えていた。

空気の音。

その音で目が覚めた。

見上げた空は真っ白。

ふと、手に温かい何かを感じた。

お腹の辺りに重みもある。

ぼやける視界を掻き分け、そちらに目をやる。

そこには、茶髪の若い男が眠っている。

大陽だ。

、 、、 、

声を出そうとしても上手くできない。

ここは天国なのか。

そうではないことに、微かに香る消毒液の匂いで気がつく。

、、 ぃ、、、ょ、、

麻痺していた感覚が少しずつ戻り始める。

力の入らない指で、なんとか彼の手を握り返す。

大陽

、、、んぅ、、、

大陽

、、、、??

彼が起き上がる。

視界は未だぼやけているが、彼がどんな表情をしているのかは予想がつく。

大陽

、、え、、、、、

大陽

、、たかちゃん、、??

大陽

わかる?

、、、ん、、

大陽

僕だよ、大陽、、、

大陽

分かったら、手握って

声が震えている。

そして、彼の温かい手を握る。

た、、いよ、、、

大陽

たかちゃん、、

大陽

良かった、、、よかった、、、

彼は両手で手を握り、そこに頬をあてる。

鼻をすすって泣いている。

本来ならば自分が拭ってやらねばならないその涙を、そうできないのが悔しかった。

大陽

もう、、起きなかったらどうしようって、、

大陽

このままもう話せなくなるんじゃないか、、って、、

大陽

よかった、、本当に、、、

ごめ、、ん、、

大陽

、、、、

大陽

謝らないでよ、、、、

大陽

たかちゃんは、、悪くない、、、

大陽

もう、、来世で、なんて言わないで、、、

、、ぅ、、ん、、

大陽

約束だから、、、

そう言って彼は顔をくしゃっとして笑った。

その安心した笑顔が輝いていたのか、涙が光っていたのか、いずれもなのかは、覚えていない。

しかしその姿が美しかったのは、鮮明に記憶されている。

深い悲しみの後にやって来たのは、大きな後悔とそこに見えた小さな光。

後悔の階段を一段ずつ踏みしめ、光へと向かっていく。

その道がどれだけ長くても、暗くても、彼と一緒ならそれすらも幸せだと思う。

読んでくださってありがとうございます✨

ええと、、、

まずは、更新が遅れた理由を、、、

これを更新しようと思ったその日に、ちょっと、、、

同じような事件が、、、

ありましたので、、、

さすがに不謹慎というか後味が悪いというか、

落ち着いてから更新しようと思って、遅れてしまいました💦

ごめんなさい🙏

そしてそして、

次回はついにラストです!!

最後までお付き合いください、、!!

この作品はいかがでしたか?

102

コメント

1

ユーザー

タカちゃん目覚まして、良かった😭 もう最終回か、、、 楽しみに待ってます🥲

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