転校生は完璧お嬢様

葉姫 / 姫田 詞葉 side

雪梨と再会したあの日から月日が経った

日本中は秩序の欠片もなく

無法地帯と化していた

そういえば

この前死柄木くんがアメリカのトップヒーローを倒したんだって

そのヒーローの名前は……

……忘れたけど

あと、最近さ

死柄木くんの様子が……

なんていうか……

まるで今までの死柄木くんとは……

"別人"

絶対原因はオールフォーワンなんだろうけど……

……これ以上深く考えない方がいいや

？？？

とあるビルの最上階

無駄に広い部屋

赤いカーペット

好みじゃないシックなインテリア

立派な高級デスク

座り心地がいい大きな椅子

少し誇りを被ったパソコン

そして「社長 鬼灯 アイ」と掘られた卓上プレート

｢鬼｣に｢灯｣と書いて｢ホオズキ｣って読む

花の名前と同じ名前

椅子に座りクルッと後ろを向くとビルの周りを一望できる大きなガラスの壁

昔はこの景色が嫌いだった

だってここから見る景色は大っ嫌いなヒーローたちが作りあげだ世界だから

けど今はこの景色が好きだ

天気は薄暗いし、このビルの周りの建物は崩壊しているけど

もうヒーローはいないから

私を助けてくれなかったヒーロー達はこの世から消えたも同然だ

私の家は父と母の3人暮し

父は会社を経営していて、

母は花屋で働いていた

私はと言うと……

自分で言うのもなんだけど周りの子よりも賢かった

たぶん父の遺伝なんだろうけど……

まぁでも私たちはごく普通の幸せな家庭だと

そう思ってた

"私の個性が発現するまでは"

私が個性を発現したきっかけは母から貰った花言葉の本だった

花屋で働いていた母が花言葉を教えてくれたのでそこから花言葉に興味を持った私に母が買ってくれたのだ

その本を読んでいた時に個性が発現した

私が初めて両親に見せた能力はアヤメの花言葉｢メッセージ｣の力だった

この能力は、伝えたい相手の手元に手紙が出てくるというものだった

私はこの能力で二人に日頃の感謝を伝えた

これが全ての始まりだった

最初の変化は5歳の頃

ある日私は父の部屋に入った

父は私と母に書斎には絶対に入らないようにと言っていた

仕事の貴重な資料とかがあるから家族でも見て欲しくないらしい

けど当時の私は好奇心旺盛だったため父が家を空けている時間にこっそり侵入した

私は父の部屋を探索した

私は書斎の大きな椅子に登り、座った

でもまだ5歳で背が小さい私は座っても机の上は見えない

私は椅子の上に立って机の上に手を置いた

机の上にはホッチキスで止めてある資料があった

私はその資料を読んだ

けど知らない漢字が多くてほとんど読めない

読むのをやめようとしたその時だった

見覚えのある字が私の目に止まった

母は黙って資料を読んだ

そして資料を読み終えた母は涙を浮かべた

母は私を抱きしめて頭を撫でた

そして私たちは

荷物をまとめてこの家を出た