蘭
そんなに逃げ腰だと、逆にそそられるんだけど

かりん
しつこい、いい加減にして

蘭
それ、今日もう5回目だよ

蘭
そろそろ新しいセリフないの?

かりん
関わる気ないって言ってるの

蘭
ふーん

蘭
言葉と態度が合ってない気がするのは、気のせい?

かりん
……

図星だった。
私は完全に無視できていない
あの日あいつと再会した瞬間に、背を向けていればよかったのに
蘭
かりん、どこ行くの? 俺を振り切る気?

かりん
いい加減、名前呼ばないで

かりん
馴れ馴れしい

蘭
でも、呼ばれたくなかったら、こんな所うろつかないでしょ?

蘭
夜の街って、いろんな意味で危ないよ

かりん
それはあなたみたいな人間がいるからでしょ

竜胆
兄貴、いた

竜胆
また女の子口説いてんの?

竜胆
やりすぎると、捕まるよ

蘭
やりすぎてないからギリギリ楽しいんだ

竜胆
そういうとこ変わらないよね、兄貴は

かりん
どうして、あんたたちが一緒にいるの

蘭
言ったでしょ

蘭
俺たち、今は“梵天”

かりん
組織の人間と、昔みたいに話せると思ってるの?

竜胆
話してるじゃん

竜胆
かりんちゃんさ、昔はもっとトゲトゲしてたのに

かりん
あんたに言われたくない、

竜胆は口の端を上げ、笑う。どこか冷たい笑みだった。
竜胆
兄貴ってさ、本気で気に入った相手にしかしつこくしないんだよ

竜胆
分かってる?

かりん
…関係ない

蘭
関係あるよ笑

蘭
オレは君に興味がある

蘭
ずっと前からずーっとね

かりん
やめて。

鶴蝶
蘭、無駄に騒ぎを起こすな

鶴蝶
上が面倒くさがる

蘭
面倒くさがってるのは俺じゃないから

鶴蝶
…その女、梵天に関わらせる気か?

蘭
さあね、俺の気分次第

蘭
けど、こんな面白い子、放っとくのは惜しいだろ?

鶴蝶
_巻き込まれるな

鶴蝶
_引き返せるうちに引き返せ

かりん
…引き返すって、どこに?

蘭
かりん、もう一度だけきくよ

蘭
こっちに来る気はある?

蘭
それとも、まだ逃げる?

かりん
……っ

自分でもそれが“逃げ”なのか“踏み出し”なのか、わからなかった