⚠︎死ネタを含みます⚠︎
⚠︎潔凛⚠︎
⚠︎完全2次創作⚠︎
⚠︎語りは凛です⚠︎
主
主
主
潔の葬儀は滞りなく終了した
葬儀には多くの人が訪れて、それぞれが目に涙を浮かべていた
俺はそんな人々をぼんやりと眺めながら 「ああ、あいつは沢山の人に愛されていたんだな」 と自身との差を感じて、少し悲しくなったりもした
潔は俺と付き合っていたことを親御さんにも報告していたらしく、俺が挨拶に行くと、潔のご両親はいっそう大粒の涙を流した
そして俺に何度も伝えた
「あの子を受け入れてくれてありがとう、 好きになってくれてありがとう、 愛してくれてありがとう」
俺は少し戸惑いながらも、自身の感謝の言葉を述べた
潔はこんなに素敵な人たちに囲まれて生活していたのか
だからあんなに真っ直ぐに育ったのかと苦笑する
潔は
俺の隣で死んだ
突然死
病気の発症から24時間以内に死亡すること
誰にでも起こる可能性のある死だ
潔は原因不明のくも膜下出血でこの世を去った
あいつは倒れる直前まで、いつもみたいな馬鹿っぽい笑顔で、
とても嬉しそうに、
とても幸せそうに、
俺の名前を呼んでいた
それが当たり前だと思っていた
幸せな時間はそう長くは続かないこと、それは俺が1番よく分かっている筈なのに
潔が倒れた後のことはよく覚えてない
俺は呆然と立ち尽くしているだけで、周りの奴が潔を介抱して、気がついたら潔は俺の前からいなくなっていた
その後誰かに声をかけられたけど、何と返したかも思い出せない
とにかく俺は、その出来事に対しての実感が湧かず、
またあいつが、いつもみたいに「凛」と優しく名前を呼んでくれるような、そんな未来があるのだと
当然のように思い込んでいた
でもあいつは、こんなにもあっさりと姿を消してしまった
もう俺は、
潔と言葉を交わすことはできない
あいつの葬儀の後、潔のご両親が俺を家に招待してくれた
何でも好きに触っていいと言われ、通されたのはあいつの部屋だった
潔のご両親は 「あの子が亡くなった後、ここはそのままにしてあるの」 と寂しそうに笑った
そして「好きにしてね」と俺を潔の部屋に1人にさせてくれた
潔の匂いがした
初めて出逢った日、
初めて戦った日、
好きだと気がついてしまった日、
不安になった日、
気持ちが通じ合った日、
喧嘩した日、
初めて身体を重ねた夜
その全ての想い出が、今、想起される
どれも温かい記憶ばかりで、気がつくと頬が濡れていた
「潔...お前どうして死んだんだよ...」
掠れた声で呟く
葬式では一滴も流れなかった涙が今になって溢れて止まらない
もう一度、俺の名前を呼んでほしい
潔の温かさを感じたい
あの柔らかな笑顔を向けてほしい
いつも俺を気遣いながら優しく抱いてくれる、甘ったるくて吐き気のしそうな夜を繰り返していたい
でも、
もう叶わないんだ
どれだけあいつを求めたって、もう返ってこない
ずっと実感の湧かなかったあいつの“死”が、 空っぽのあいつの部屋によって現実味を帯びてくる
それはあまりにも生々しくて、残酷で、めまいがしそうだった
思わず俺はその場にうずくまる
嗚咽が止まらなくて、上手く息ができなかった
でも、今はそのくらいの苦しさが心地良かった
「...会いたい、潔...もう一度だけでいい、潔...」
潔はもう戻らないなんてこと、十分に理解していた
でも、口に出さずにはいられなかった
想いが溢れて止まらない
自分でもこんなに大きな気持ちがあったのかと驚く
人を愛すことの幸せを、あいつは俺に教えてくれた
でもそれは、他の何よりも悲しいことだった
俺は嗚咽混じりの声で言う
「潔、寂しい」
『凛、泣いてるの?』
それはあまりにも温かすぎる声だった
その温かさは悲しく、残酷で、寂しさに満ちていた
そして
俺が今、1番求めていた声だった
「潔!」
俺は顔を上げる
そこには存在するはずのないあいつがいた
「お前...どうして、なんで...」
突然のことで理解が追いつかない
俺が唖然としていると、潔は楽しそうに笑った
『いや、俺まだこの世に未練ありまくりだし!凛のことが心配で来ちゃった』
潔は微笑んでいたが、それは明るい表情とは言えなかった
『...凛、顔酷いぞ、ほら涙拭いて、』
そう言って彼は服の袖口で俺の顔を擦る
『凛、俺な、死んじゃったけどさ、お前はまだ死んじゃだめだぞ』
潔は寂しそうに言う
『凛はこの先、サッカーを続けて、世界一になって、沢山の人に認められて生きるんだ』
「...そこに、どうしてお前はいないんだよ」
やっと涙が止まって、言葉にしたそれは自分で思ったよりもずっと低く、冷たく、重かった
違う
もっと言いたいことがあった筈だ
言うべきことがある筈だ
どうして彼がここに居るのかは分からない
でも居るのならちゃんと伝えなくてはいけない
しかし、どうしても言葉が出てこない
潔はちょっと困った顔で俺を見つめる
『もしできるなら、俺はずっと凛と一緒にいたかった
凛と笑って、凛と泣いて、怒って、それで
幸せになりたかった
凛の隣で夢を叶えたかった』
潔の眼から涙が零れ落ちる
『凛、本当に大好きだよ、愛してる、俺にこんな感情を教えてくれてありがとう』
止まっていた筈の涙が、また溢れ出す
俺は思わず、潔に抱きつく
「潔、そんな、もうこれで終わりみたいなこと言うんじゃねぇよ、 お前はこれからもずっと、俺の隣に居なくちゃいけないんだ、 自分だけが愛してたみたいな言い方するな
俺の方が、お前のこと、想ってるから」
「俺の前から、消えんじゃねぇよ...潔...」
子供のように泣きじゃくる俺の背を、潔は優しく叩いた
『うん、大丈夫だよ、凛 俺はずっと凛の中にいるよ、 凛の中で生き続けるから 大丈夫、大丈夫だよ』
そう言う潔の声は、今にも消えてしまいそうで、やわらかだった
『凛、聞いて?
凛の周りには、凛のことを大切に思ってくれる人がたくさんいるんだよ
お前はみんなから認められてる
だから、その人たちと幸せになって
俺が1番嫌なのは、お前が俺のせいで前に進んでいけないこと
俺は凛の足枷にはなりたくないよ
だからさ、
前を向いてよ
大丈夫だから
お前ならできるから
絶対大丈夫だから
俺が凛と一緒に夢を叶えられないのは悔しいけど、俺は凛をずっと見守ってるよ』
潔は言い終えると静かに目を閉じた
俺は潔が消えてしまいそうで、必死に抱きしめたけど
潔は俺の腕の隙間から光となって零れ落ちていった
「潔...愛してるよ」
俺は誰も居なくなった部屋に潔への気持ちを零す
『ありがとう』
その声を最後に、潔の声はしなくなった
さよなら、潔
主
主
主
コメント
2件
めっちゃ好きです⋯。 感動的で泣けて、読み終わったときは切なさで胸が締め付けられました⋯😭😭 素敵な作品、ありがとうございました🙏🙏