TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

たっぷりと水を入れた水瓶を棒の両端にかけ、

その天秤棒を肩にかついで

水を王宮まで配達するのが、その水配達人の仕事だった。

その両端にかけた水瓶のうち、1つは、

ヒビも欠けたところもない完全な水瓶だったが、

もう1つには、ヒビが入っていた。

川から王宮までは、遠い道のりだったが、

完全な水瓶は、いつも満杯の水を運ぶことができた。

ところが、ヒビ割れたほうは、川から王宮に着くまでに、

水の量が半分ほどに減ってしまうのだ。

2年間毎日、

配達人は王宮まで、水瓶1杯半の水を運び続けた。

完全な水瓶は、自分の仕事を誇りに思っていた。

目的通り、1滴も取りこぼさずに水を運ぶことができたからだ。

しかし、ヒビ割れたほうの水瓶は、

ヒビの入った水瓶

目的の半分しか仕事を果たせていない

と、自分のダメさを恥じていた。

ある日のこと、川のほとりで、

ヒビ割れた水瓶が配達人に話しかけた。

ヒビの入った水瓶

あなたに一言謝らせて下さい。

ヒビの入った水瓶

私は、自分が恥ずかしいのです。

配達人

なぜ?

配達人は聞いた。

ヒビの入った水瓶

私は、この2年間というもの、

ヒビの入った水瓶

いつも、自分の容量の半分しか

ヒビの入った水瓶

水を運ぶことができませんでした。

ヒビの入った水瓶

横っ腹のヒビのせいで、

ヒビの入った水瓶

水が染み出し続けてしまうからです。

ヒビの入った水瓶

私のせいで、王宮まで苦労して

ヒビの入った水瓶

水を運ぶあなたの努力が報われません。

ヒビの入った水瓶

あなたはこんなに働いているのに、

ヒビの入った水瓶

申し訳ありません!

水瓶は答えた。

配達人は静かな口調で言った。

配達人

川から王宮へ向かう道沿いに

配達人

きれいな花々が咲いているだろう。

配達人

水瓶はノドをうるおす水を入れる。

配達人

花は心をうるおす彩りを与える。

配達人

それぞれができることを

配達人

一生懸命にやればいいんじゃないか。

なるほど、丘に上る道の途中、

太陽の恵みを得た道端の花々が

人々の心に潤いを与えていることに間違いはない。

ヒビの入った水瓶

でも、『水を入れる』という役割を、

ヒビの入った水瓶

私は果たせていないんです。

配達人は優しい口調で水瓶に言った。

配達人

あの花たちは、

配達人

道の片側だけに咲いていることに気づいたかい?

配達人

花が咲いているのは

配達人

君のぶらさがっている側だけなんだよ。

配達人

花が咲くためには太陽の光だけでなく、

配達人

水も必要なんだ。

配達人

君のおかげで、

配達人

あの花たちは咲き誇ることができ、

配達人

その花たちが、道行く人たちや、

配達人

王宮の人たちの笑顔を作っているんだよ。

黙ってその話を聞いていた、完全なほうの水瓶が言った。

完全な水瓶

私には、君のように水をまくことはできない。

完全な水瓶

だから花を咲かせることもできない。

完全な水瓶

満杯の水を運ぶことができる私こそ

完全な水瓶

完全だと思っていたけれども、間違っていた。

完全な水瓶

目には見えないけれど、私にも、

完全な水瓶

花を咲かせることができないという、

完全な水瓶

ヒビ割れがあるんだ。

そして、水配達人に向かって言った。

完全な水瓶

今度から、毎日、

完全な水瓶

私たち水瓶の位置を変えてもらえませんか。

完全な水瓶

道の反対側にも、美しい花を咲かせてあげたいんです。

この作品はいかがでしたか?

0

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚