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既読の未来

2 - 既読の未来 第2話

♥

162

2021年05月20日

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6月5日 土曜日

21:30 町外れの廃墟

エイジ

──へぇ

エイジ

なかなかいいとこじゃねぇか

ユウヤ

で、でしょ?

エイジ

ベッドとかソファとかねぇのかよ

ユウヤ

それはないんだけど…

ユウヤ

あっちに、ビニールシートを敷いてあるよ…

エイジ

ビニールシートねぇ

ユウヤ

…あの

ユウヤ

今日のこと、誰にも言ってないよね?

エイジ

ああ。安心しな

エイジ

こんないいとこ、教えねぇよ

ユウヤ

ここに来るまで、誰にも見られてない?

エイジ

大丈夫だって

エイジ

見られたらこっちもやべぇんだ

エイジ

その辺は慣れたもんさ

ユウヤ

そう…よかった…

エイジ

で?

エイジ

リカはどこだよ

ユウヤ

そ、それが…

ユウヤ

ごめん…最後の最後で怪しまれて…

ユウヤ

呼び出せなかった…

エイジ

はぁ?

エイジ

なんだよお前、使えねぇな…

ユウヤ

ご、ごめん!

エイジ

はぁ…んだよ、ったくよぉ…

エイジ

…まあいいや

エイジ

だったら、金か殴るかだな

エイジ

どっちがいい?

ユウヤ

…………

ユウヤ

あの…

ユウヤ

や、やっぱり…やめてくれないかな…

エイジ

…あ?

ユウヤ

よ、よくないよ、こういうの…

ユウヤ

お金取ったり、女の子に酷いことしたり…

エイジ

…………

エイジ

お前さ

エイジ

人の役に立ちたいと思うか?

ユウヤ

…え?

エイジ

人がムカつくことと、喜ぶこと

エイジ

お前ならどっちをしたい?

ユウヤ

そ、そりゃあ…

ユウヤ

喜ぶことを…

エイジ

だよな?

エイジ

お前に説教されると、俺はすげぇムカつくんだ

エイジ

けど、お前を殴ると俺はすげぇ楽しいんだよ

エイジ

金をもらうともっと嬉しいな

ユウヤ

…………

エイジ

な?

エイジ

お前が俺を喜ばせるには、そのくらいしかないだろ?

ユウヤ

…………

エイジ

分かったら、さっさとどっちか選べよ

ユウヤ

ぐぇっ!

…いきなり、腹を蹴られた。

エイジ

ああいい、もうめんどくせぇ

ユウヤ

がはっ!

今度は背中を殴られた。

そのまま何発も、何発も…

エイジのいいように殴られる。

我慢だ。

もう少し、あと少し殴られたら…。

ユウヤ

も…もう、やめて…

エイジ

やめませーん

ユウヤ

わかった、から…

エイジ

お?

ユウヤ

奥に、お金、隠してるから…

エイジ

あーあ

エイジ

もっと早く言えば、殴られないですんだのにな

エイジ

どこだ?

ユウヤ

ビニールシートの、上…

エイジ

…おー、なんだこれ

エイジ

おもちゃの金庫か?

エイジ

…鍵かかってんじゃねぇか

エイジ

開けろよ

ユウヤ

…体が痛くて、動けない…

エイジ

ああ?

エイジ

そこまで殴ってねぇだろ、ひ弱だな

ユウヤ

開け方、教える、から…

エイジ

ちっ、めんどくせぇな…

俺はエイジに、開け方を教える。

ただしそれは、完全にでたらめだ。

エイジ

…なんだ、開かねぇぞ

エイジ

どうやるんだこれ…

背中を向けて座り込むエイジ。

俺は静かに立ち上がり、ゴム手袋をはめる。

そして、手ごろな大きさの石を拾い上げ──

ガンッ

エイジ

…がっ

──エイジは、後頭部から血を流して倒れた。

ユウヤ

…………

ユウヤ

ユウヤ

しん

ユウヤ

だ?

エイジは、ぴくりとも動かない。

ユウヤ

…………

ユウヤ

はっ

ユウヤ

はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ!

ユウヤ

(落ち着け)

ユウヤ

(落ち着け落ち着け落ち着け)

ユウヤ

(深呼吸しろ…)

ユウヤ

ふぅ──

ユウヤ

(ここからだ。ここからが大事だ)

ユウヤ

(まずは、エイジのスマホを手に入れる)

ユウヤ

(どこだ、ポケットか…?)

ユウヤ

(あっ…くそ、手が、手が震えて…)

ユウヤ

(…よし、あった)

ユウヤ

(それと、エイジの死体を)

ユウヤ

(吹き抜けになってる地下に落とす)

ユウヤ

せぇ、のっ…

ドサッ

ユウヤ

(…意外と簡単に落とせたな)

ユウヤ

(ビニールシートを敷いておいてよかった)

ユウヤ

(おかげで血のあとも残らない)

ユウヤ

(下は不法投棄の山だ)

ユウヤ

(足を滑らせて、落ちて死んだように見えるはず)

ユウヤ

(あとは──)

22:30 ユウヤの部屋

ユウヤ

(──あの後)

ユウヤ

(俺は家に帰り、窓からこっそり部屋に入った)

ユウヤ

(そしてすぐ、ネットゲームに接続)

ユウヤ

(マサルと一緒に、YTubeで生配信を始める)

ユウヤ

(途中、トイレとかで何度か離席して)

ユウヤ

(その間に家族とも顔を合わせておく)

ユウヤ

(もちろん出かける時も、窓からこっそり出た)

ユウヤ

(これで、俺はずっと部屋にいたことになる)

ユウヤ

(30分…そろそろいいか)

俺はエイジのスマホを取り出した。

ユウヤ

(エイジのスマホはパターンロックだ)

ユウヤ

(画面をよく見ると、指のあとが残ってる)

ユウヤ

(これをなぞれば…)

指紋を残さないよう、タッチペンで操作する。

ユウヤ

(…よし、ロックが解除された)

ユウヤ

エイジのRINEは…

ユウヤ

うわ…ドクロのアイコンかよ。だせぇ…

ユウヤ

名前も『エイジ様』って…馬鹿だなやっぱ

ユウヤ

一番よく会話してるのは…

ユウヤ

エミ、か

ユウヤ

彼女っぽいな

ユウヤ

よし、こいつに…

エイジ様

エミ

エミ

どしたん?

エイジ様

町外れにおもしれーとこみつけたんだよ

エイジ様

お前知ってるか?

エミ

知らない!どんなとこ?

エイジ様

俺も今から初めて入るんだよ

エイジ様

今度お前もつれてってやるよ

エミ

マジでー?約束ね!

エイジ様

おお。じゃあな

ユウヤ

…これでよし

ユウヤ

(エイジを殺したのは、約1時間前)

ユウヤ

(けど、今エイジのスマホでRINEしたから)

ユウヤ

(エイジは、この時間まで生きてたことになる)

ユウヤ

(家でゲームの生配信をしてた俺のアリバイは完璧)

ユウヤ

あとは…

23:55 町外れの廃墟

俺は再び、廃墟にやって来た。

地下をのぞき込むと、不法投棄の山の上に──

静かに横たわる、エイジの死体。

その近くに、エイジのスマホを投げ捨てる。

これで、終わりだ。

ユウヤ

(──殺した)

ユウヤ

(殺して、しまった)

ユウヤ

(妄想じゃなくて、本当に──)

やるべきことが、終わった途端。

ユウヤ

…うぅっ

急に、全身が震え出した。

妄想の俺は、ずっと冷静だったのに。

現実は、全然違って──

ユウヤ

あぁぁ…

なぜか思いきり、叫びたくなって。

逃げるように、俺は外へ飛び出した。

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