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主
nmmn注意⚠️ キャラ崩壊注意⚠️ 誤字脱字注意⚠️ 血表現注意⚠️ 花魁パロ
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15,切見世の闇
吉原の喧騒は、夜ごと変わらぬ。
大門の外では客の呼び込みが響き、楼の内では三味線が鳴り響く。
だがその華やかさから、ほんの数筋、細い路地を曲がるだけで――空気は一変する。
湿り気を帯びた土の匂い。
足元に転がるのは、破れた簪、擦り切れた帯。
昼でも薄暗いその一角こそが、「切見世」だった。
夕刻。
花鏡楼の裏口に、駕籠がひとつ据えられていた。
中に座らされる翠嵐は、白粉も薄く、ただ病の色を隠すためだけに塗られていた。
翠嵐
小さく呟いた声に、傍らの黈羽が身を震わせる。
黈羽
必死にしがみつく黈羽の腕を、女中が乱暴に引き剥がす。
紅鶴
蒼霞
紅鶴と蒼霞が間に割って入ろうとするが、師匠格の女たちが立ち塞がる。
冷ややかな声に、二人は歯を食いしばった。
翠嵐
翠嵐は短くそう告げ、駕籠の戸が閉じられた。
切見世。
駕籠から降ろされた途端、鼻を突くのは腐敗したような臭気だった。
染みついた酒、汗、膿。
豪奢な花鏡楼の畳とは比べものにならぬ、湿った板の間が足裏に広がる。
煤けた灯りの下、痩せこけた女が近づいてきた。
かつては花魁だったのだろう、髪に挿した簪は折れ、紅は滲んでいた。
女は乾いた笑いを零し、咳き込む。
血の混じった痰が床に吐き捨てられた。
周囲には、同じように落とされた者たちがいた。
白粉も塗れず、顔を赤黒い斑点に覆われた者。
指の間までただれた者。
目だけが爛々と光り、客を求めて縋りつく者。
翠嵐の胸を、冷たいものが掠めた。
――これが、俺の行き着く場所か。
夜。
切見世にも、客はやってくる。
花街の華やかな座敷を楽しめぬ者、安く肉体を欲する者。
粗野な笑い声が響き、壊れかけた女たちが引きずられるように座敷へ消えていく。
番人の男が、翠嵐を乱暴に引き立てた。
翠嵐
翠嵐
翠嵐
振り払おうとした瞬間、咳が込み上げる。
口元を押さえる手から、赤黒い血が滴った。
男は吐き捨てるように笑った。
その頃、花鏡楼。
みことは廊下を走り回っていた。
黈羽
焦燥に駆られる声に、らんが肩を掴む。
桃李
桃李
なつが低く言った。
紅鶴
こさめの瞳が鋭く光る。
蒼霞
いるまは扇を閉じ、妖艶な笑みを浮かべた。
茈月
六人の間に、決意の色が宿る。
その頃、切見世で翠嵐は、暗い座敷の奥へと引きずられていた。
翠嵐
灯りの下、崩れた鏡に映ったのは、血に濡れた自分の顔。
目の奥にはまだ、消えぬ炎が残っていた。
だが、その炎が燃え尽きるのは――もはや時間の問題だった。
15・了
主
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𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝♡160
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