『貴方に愛されて、幸せでした』
それが、貴女が僕に遺した最後の言葉でした。
貴女は初めて僕が愛した女性で
どんなに忙しくても、どんなに疲れてても僕を笑顔で出迎えてくれる
どんな時でも自分の事より相手の事を優先する
そんな貴女だから
誰よりも優しくて、美しい貴女だから
僕に負担を掛けないようにと
限界を迎えるまで黙っていたんでしょ??
どんどん蝕まれていく身体に鞭を打って
心配させるまいといつも笑って
だから僕は貴女の抱える病を知らなかった。
僕が貴女の変化に気付けてれば
あの日僕が少しでも早く帰っていれば
貴女はまだ僕のそばにいて
あの優しい笑顔で僕に笑いかけてたのだろうか。
ねぇ、答えてよ
僕1人だけ残して
手の届かない場所に行っちゃうなんてさ
夫婦間の隠し事は無しだって、約束したじゃないか。
貴女がそう言ったから僕は何でも話したのに
嘘吐きだね、貴女は。
僕の人生に添えられた1輪の花は
穢れた害虫によって枯れてしまった。
貴女が亡くなった後、医者から告げられたのは
貴女の中で小さな種が芽吹いていた事。
僕らの、僕らだけの蕾を
何とか咲かせる事が出来た。
この子に付けた名前は
『泰亨』
宝石のごとく輝く貴女のように
大きな宝になってほしくて、この名前を付けた。
貴女が気に入ってくれると、嬉しいんだけど笑
泰亨『ねぇねぇ、お父さん』
征國『どうした??』
泰亨『お母さんね、いつも笑ってるよ!!』
征國『え、?』
泰亨『時々ね、お父さんの隣に座ってるの!!』
泰亨『それでね、お父さんと手を握って、ニコニコしてる!!』
泰亨『お母さんはお父さんの事大好きなんだね!!』
征國『~っ…』
泰亨が、嘘を吐いてるようには見えなかった。
本当に貴女は僕の隣で
僕の手を握って、笑っているのだろうか。
征國『なぁ、泰亨?』
泰亨『ん~??』
征國『お母さんに会いに行こっか』
泰亨『うんっ、行く!!!!』
泰亨を小さな車に乗せて
貴女の顔を思い出しながら
貴女が待ってる場所に向かった。
「今日未明、軽自動車が歩道に乗り上げる事故がありました」
「運転していた男性1人と助手席に乗っていた6才の男の子が死亡し、警察は事故の原因を調べています」
Fin .
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ぐっく;;;;