何故こんな事になって居る。
中也の頭を疑問が掠める。
あの後… 中也は教師陣三人に囲まれ乍ら、鴎外と与謝野の治療を受ける為太宰の家に向かって居た。
其れが何故
こんな混沌_カオス_状態へと発展したのか。
与謝野 晶子
太宰 治
与謝野 晶子
中原 中也
遡る事三十分。
家に着いて、太宰の家って広いんだな、と思って…
肩を消毒して貰い、新しく包帯をぐるぐると巻かれた処迄は良かった筈…
太宰も別室で包帯の巻き直しをして、出て来た時には頭にも巻いてあるから少し吃驚して…
其処で冷蔵庫を開けた与謝野が、中に入った発泡酒やら葡萄酒を見付けたのが混沌の始まりか。
そう、其処で三人で呑み始めて仕舞ったのだ。
流石に教師、中也に酒を薦める事は無かったが。
太宰も最初は呑んで居たが、今では暴走し始める与謝野講師を宥めるのに精一杯だ。
太宰 治
森 鴎外
中原 中也
与謝野 晶子
与謝野 晶子
太宰 治
中原 中也
中原 中也
そう…呑もうか、の云い出しっぺは太宰。御目出度の酒だよ、なんて云いながら日本酒を持って来たのが呑み会の本当の始まりだった。
太宰 治
与謝野 晶子
太宰 治
森 鴎外
太宰 治
中原 中也
遠い目をして呟く中也。
大人達は其れすら聞こえて居ない。
正座をした脚が痺れて来た。
太宰と与謝野の取っ組み合いで飛んで来た発泡酒の缶が頭に打つかる。痛かった。
太宰 治
夜道、太宰と中也が街灯の光の下を歩く。
あの後、酔って眠った与謝野を布団に寝かせ、鴎外に部屋の片付けを押し付けて外へと出たのだ。
如何せ片付いてなど居ないだろうけど、と太宰が溜息を吐く。
一人で帰れると云ったのだが、送るから良いよと云われて仕舞い、二人で散歩がてら夜風に当たる。
太宰 治
中原 中也
太宰 治
中原 中也
他愛も無い会話を交わし、ゆっくりと歩を進める。
もう少し話して居たい、そう思って不自然では無い程度に中也が遅く歩く。
太宰には魂胆が見抜かれて居るのだろうか…と考え乍ら。
太宰 治
中也の方は見ず、目を閉じて云う太宰。
其の横顔を思わず見詰めて仕舞う。
中原 中也
中原 中也
ヴェルレエヌとの闘い。 太宰はああなる事が全て判って居たのでは、と中也は感じて居た。
太宰は何も云わない。
月に照らされて、琥珀色になった瞳だけが静かに凪いで居る。
太宰 治
太宰 治
家迄数メートル、最後の街灯の下で中也が足を止める。
対して、家の前___少しだけ前に行った、太宰の後ろ姿が妙に印象に残った。
太宰 治
太宰 治
太宰 治
御免、と繰り返す太宰の慌てた姿が、中也の脳裏に再生される。
然し、それ以外に誤算が無かった、と云う事は中也を驚かせた。
つくづく底の見えない人だ…と中也は不思議な感覚に襲われる。
太宰が中也の方へ振り向き、薄く微笑んだ。
太宰 治
中原 中也
は、と我に返り玄関前迄駈ける中也。
太宰 治
20センチほど高い彼の目を見て、中也は頷いた。
中原 中也
___保健室で。 二人の声が重なる。
其の時は、もう一つの〝事〟の存在など、考えもして居なかった。
コメント
5件
最高です…いや、ホント表現とかマジ語彙力とか天才すぎます…
お久しぶりです。 旅行楽しかったです(((( 皆この話の事忘れてなかったよね!?ね!? …まぁ、其処は置いといて…今回は息抜き回で、ギャグ要素が多めでした。楽しんで頂けたなら幸いです♪ それでは次回から第二部の始まりです!