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昔から運が悪かった。
父親
父親
父親
家中に響き渡る罵詈雑言の嵐。
其の次に降りかかるのは暴挙。
父親
父親
私が生かされている理由は一つ。
金のため。
私は物心ついた頃からずっと此の待遇を受けていた。
何故生き残っているのか、
何故殺さないのか。
彼奴等にとって私は保険だから。
最悪の場合のための保険。
本当に生計が立てられなくなった時、
私を売る。
父親
抑々、私たちは此の家の実子ではない。
昔、此奴が言った
「本当の子供だったら可愛かったのかもな」
其の言葉で確信を得た。
私だってこんな家に拾われたくなかった。
もっと、温かくて幸せの溢れる家に拾われたかった。
父親
何で、私がこんな仕打ちを受けなきゃいけないの?
此は何かの罰?
私が何かしたの?
________否、
正確には、"私たち"か。
私のお姉ちゃん。
唯一、私と全く同じ境遇の姉。
お姉ちゃんがいたから今迄生きていられた。
私たちに名前は無い。
若しかしたら初めは在ったのかも知れない。
でも、「お前等に名前なンか贅沢だ」
そう云われて、名付けては貰えなかった。
父親
父親
破壊音が居間から鳴り響いている。
息を殺して早く時が過ぎるのを待った。
足音がどんどん近づいてくる気がする。
震える体をお姉ちゃんが抱き締めて呉れた。
お姉ちゃんも震えてる。
自分だって怖いのに、私を庇って呉れる。
自分だって、泣きたい筈なのに。
父親
父親
父親
お姉ちゃんが私を隠して行ってしまう。
口元に人差し指を当てて伝えて呉れる。
お姉ちゃんが傷つくところなんて見たくない。
父親
父親
父親
お姉ちゃんが首を横に振った。
顔に拳が落ちた。
父親
父親
父親
父親
そう云いながらお姉ちゃんに蹴りを入れる。
頭に血が上って思わず飛びかかった。
でも、直ぐに抑えつけられる。
父親
終わらない地獄。
毎日毎日毎日
如何すれば逃げられる?
如何すれば止めて呉れる?
如何すれば頭を撫でて呉れる?
如何すれば、普通でいられるの?
考えるのも止めたい。
もう厭だ。疲れた。
生きていたくもない
酷く頭が重かった。
目が覚めると、横にお姉ちゃんは居ない。
冷や汗が吹き出て、心臓が口から飛び出そうになった。
居間はやけに静かだった。
部屋の真ん中でお姉ちゃんが佇んでいた。
其れ以外、誰も居なかった。
矢っ張り、お姉ちゃんも疲れてる。
見れば判る、例え後ろ姿でも。
私の所為?
私の為にお姉ちゃんは疲れるの?
私が、
私が居るから。
私が呼ぶと驚いた顔で振り返る。
青痣だらけの腫れた顔で。
私が云うと、お姉ちゃんは酷く傷ついた顔をした。
と思えば、家に在る適当な鞄に食べるものと飲むもの、
其れから、毛布とか上着を詰め込んだ。
其処ら辺に散らかってる箱を積み重ねて、
父の使ってる灰皿で窓を割った。
私の手を取って、云った。
初めて見る外の世界。
考える隙も与えられず、
お姉ちゃんに手を引かれて走り出した。