漆間恋姫
ゼェゼェ…
禪院真希
弱っちぃな
真希ちゃんに"鍛えろ"と 言われた私は、
翌日の学校終わりに 本人にお願いして、
稽古をつけてもらっていた。
攻撃は渦蛇や術式で 出来るから良いとして、
私に足りないのは 探知能力と瞬発力だ。
敵の攻撃をいち早く捉え、 素早く避ける。
昨日の任務なんて 狗巻くんが助けてくれなきゃ
今頃死んでいただろう。
呪術師は いつも死と隣り合わせ。
半端な努力、半端な強さじゃ ここでは生きられない。
禪院真希
もう1本やるか?
真希ちゃんの言葉に頷く。
呪具を模した木製の武器で、
攻撃を仕掛けてくる 真希ちゃんを必死に避ける。
始めて15分。
既に足や腕は 痣だらけになっていて、
息も絶え絶えだった。
禪院真希
一旦休憩にすんぞ
真希ちゃんが武具を下ろして グラウンドの端に移動する。
私はホッと息をついて その場にへたりこんだ。
パンダ
真希はスパルタ過ぎんだよ
パンダ
加減ってもんがあるだろ?
禪院真希
あまちゃんじゃいつまで経っても上達しねぇだろ
漆間恋姫
『真希ちゃんに稽古してもらえるなんて有難いです』
と、頬に突然 冷たい何かが当たる。
驚いて顔を上げると、
真新しいスポーツドリンクを 持った狗巻くんがいた。
狗巻棘
ツナ
漆間恋姫
『え、ありがとう』
漆間恋姫
『買ってきてくれたの?』
狗巻棘
ツナマヨ、高菜すじこ
"頑張ってるみたいだから"。
"恋姫が持ってきてた水 ぬるくなってたし"。
そうおにぎり語で言って 頷く狗巻くん。
確かに私が持参した水は、
炎天下の中に晒されて 温水になっている事だろう。
漆間恋姫
『ありがとう、助かったよ』
そう精一杯の感謝を込めて 私は笑った。
禪院真希
さあ続きすんぞ
パンダ
真希ぃ〜、空気読めよ〜
禪院真希
うるせぇな!
禪院真希
なんで私が空気なんざ読まなきゃならねぇんだよ!!
喧嘩を始める真希ちゃんと パンダくんに、
私と狗巻くんは 顔を見合せてまた笑った。