TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

「未来LINE」

もう高校に行かなくなってどれくらい経っただろうか、家には自分しかいない。閉じ切った扉とカーテン、暗がりに刺した光は電球の薄明かりとブルーライトだけだった。ベットで寝転んだままスマホで時刻を確認する、夜の11時51分。

少し眠くなって、スマホを置いて眠ろうとしたときにその通知は来た。久しく誰からもきていなかったLINEの通知、一体誰からだ?慣れた手つきでアプリを開き、トーク一覧を見る。

「なんだこいつ…」 勝手に友達が追加されている、よくある投資詐欺グループだったら、ブロックしてから削除するところだが、そうではなかった。

「下泉 涼…?って、俺じゃねえか。」 そこには自分と同じ名前の書かれた謎の人物がいた、そしてすぐにチャットが送られてきた。

下泉 涼

よう

下泉 涼

下泉 涼

お前、誰だよ?

下泉 涼

俺は、お前

下泉 涼

そういうの良いから、誰がこんなことやってんだよ

下泉 涼

お前は今

下泉 涼

高校にも行かず、死んだみたいに、ただ時間を浪費している

下泉 涼

は?誰だっつてんだよ

下泉 涼

苦しいだろ

下泉 涼

何をしても、何も感じない

下泉 涼

永遠に希望がないように思える

下泉 涼

お前に何がわかんだよ

下泉 涼

全てわかる

下泉 涼

俺は未来のお前だ

下泉 涼

何言ってんの?頭大丈夫か?

下泉 涼

やばすぎ

下泉 涼

では、証拠を教えよう

下泉 涼

上に垂らされてる、電球を見ていろ

下泉 涼

本日23時55分47秒に、少し大きな地震がくる

「…は?何言ってんだ…地震…?」 パシャンッ!!とガラスが割れたような音がして、体がそちらに反応する。写真立てが床に落ちている…。

上に垂らされている電球を見ると、それがゆらり…ゆらりと揺れ、壊れたようにチカチカと点滅している。地面の振動を身体に感じる、本当に地震が来たのだ。そして通知が鳴る。

下泉 涼

心配するな、余震もなく、大した地震ではない。

下泉 涼

さて、本題に移ろうか

下泉 涼

いや、地震なんて震源地が遠けりゃ、少し前に知ることもできるだろ!

下泉 涼

お前が未来からきた証拠にはならない

下泉 涼

そう思っていれば良い、今にわかる

下泉 涼

俺が過去にやってきた理由

下泉 涼

それはお前を殺してやるためだ

下泉 涼

は?

下泉 涼

さっきから何言ってんだお前!?

下泉 涼

生きていたって何の良いこともない、そうだろう?

下泉 涼

わかるよ、大人になったって何も変わりはしない

下泉 涼

お前が大人になって苦しまないよう、今息の根を止めてやるんだ

下泉 涼

そうして、俺も死ぬ

下泉 涼

まじで頭イカれてんのか?

下泉 涼

できるならやってみろよ、馬鹿野郎!!

下泉 涼

もちろん

下泉 涼

下泉 涼

玄関の前にいる

―ピンポーン!! 「っ!?」 インターホンが家中に鳴り響く。体が萎縮して、心臓が飛び跳ねそうになる。

ピンポーン!ピンポーン!ピンポーン!ピンポーン!ピンポーン!ピンポーン!狂ったように何度も何度も繰り返す。 「っ?………………?……」 突然、パタリと音が鳴り止む、静寂の中で耳を澄ませる。

「帰った、……のか?」 ―……………………………………………………ガチャッ……… 「!!!」 玄関の鍵が開く音がした、なんで!?鍵はかかっているはずなのに!!

下泉 涼

合鍵は、植木鉢の下だったよなあ

下泉 涼

そう簡単に忘れないもんだ

下泉 涼

お前、ほんとに俺なのか…!

下泉 涼

ああ、だからさ

下泉 涼

お前が今二階の自室にいて

下泉 涼

逃げ場が玄関先の階段しかないことも、知ってる

―タン…タン…タン… 階段を登る足音が近づいてくる…どうすればいい…!?窓から…いや、高すぎて無理だ…!とにかく、どこかに隠れないと…!!

物音を立てないように細心の注意を払って隠れ、息を潜める。 「おーい、どこに隠れたんだー?」 静かに、静かに、静かに…

…ハっはあ… …ふっ…っ …ぅ… ―ピロリン♪♪ 布団の下、僕のスマホの通知が鳴った…!

「おいおい、マナーモードにしとかなくちゃなぁ」 「布団の下だな?」 「今、殺してやる」 (…)

「なんて」 「とっさに廊下の押し入れに隠れたんだろ?」 (…!?バレた…!)

「ここだよな?親に怒られた時も、隠れ鬼のときもここに閉じこもってたよなぁ?」 (…何なんだお前は!?) 「ッ!何で!?何で自分のことを殺そうだなんてするんだ!!」

「…………忘れてるか?何でって」 引き戸が音も立てないくらい少しずつ開いていく。 呼吸は浅く、ドクン、ドクン、と鼓動が早くなっていく。 「サプライズだよ」

―え? 扉が勢いよく開かれる…!!それと同時に、クラッカーがパンッッと弾けた!!! ビクッと全身が反応する、一体何が起こっているんだ?

「誕生日!おめでとう!」

〜 〜 〜

一階のリビングに明かりをつけ時計を確認すると、時刻は0時を過ぎており、確かに僕は誕生日を迎えていた。未来の自分はテーブルに皿を並べて、誕生日ケーキの準備をしている。

「今はモンブランの方が好きなんだ、……こっちの方が良かったりする?」 「いや、チーズケーキがいい…これも、未来のケーキなの?」 「いや、これはそこで買ってきた」 「…」

僕が一番好きなケーキ、チーズケーキのろうそくを消して、話を聞く。 「未来では割と上手くやってるんだぜ、そこそこにな」 未来の自分は目に光を取り戻したような、生き生きとした感じだった。

「それはいいけど、さっきのは何だったんだよ!!」 「いやー、祝ってくれるやつ、誰もいないだろうなーと思ってさぁ笑」 「うるせぇ、余計なお世話だよ!!」

未来の僕は少し黙ってから、神妙な面持ちをして言う。 「高校のことな」 「……」僕はドキッとして身構えた。

「別に行かなくてもいいけど…あんま母さんのこと困らせんなよ?」 ガチャッと玄関の扉が開いた音がした。 「ただいまー!ケーキ買ってきたよー!」 と遅くまで働いていたお母さんが帰ってきた。

音に反応して玄関の方を向いてから、振り返ると未来の自分の姿はもうなかった。食べかけのモンブランだけを残して。 「なんだよ、それ...」 少し笑いながら、そうこぼす。

母は扉の鍵が開きっぱなしだったと注意している。 心臓がまだドクドク言っているのが、恐怖が残っているからか、変に嬉しくて、高揚してしまっているからなのか、僕には分からなかった。

「未来LINE」HAPPY END

この作品はいかがでしたか?

30

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚