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「未来LINE」
もう高校に行かなくなってどれくらい経っただろうか、家には自分しかいない。閉じ切った扉とカーテン、暗がりに刺した光は電球の薄明かりとブルーライトだけだった。ベットで寝転んだままスマホで時刻を確認する、夜の11時51分。
少し眠くなって、スマホを置いて眠ろうとしたときにその通知は来た。久しく誰からもきていなかったLINEの通知、一体誰からだ?慣れた手つきでアプリを開き、トーク一覧を見る。
「なんだこいつ…」 勝手に友達が追加されている、よくある投資詐欺グループだったら、ブロックしてから削除するところだが、そうではなかった。
「下泉 涼…?って、俺じゃねえか。」 そこには自分と同じ名前の書かれた謎の人物がいた、そしてすぐにチャットが送られてきた。
下泉 涼
下泉 涼
下泉 涼
下泉 涼
下泉 涼
下泉 涼
下泉 涼
下泉 涼
下泉 涼
下泉 涼
下泉 涼
下泉 涼
下泉 涼
下泉 涼
下泉 涼
下泉 涼
下泉 涼
下泉 涼
下泉 涼
「…は?何言ってんだ…地震…?」 パシャンッ!!とガラスが割れたような音がして、体がそちらに反応する。写真立てが床に落ちている…。
上に垂らされている電球を見ると、それがゆらり…ゆらりと揺れ、壊れたようにチカチカと点滅している。地面の振動を身体に感じる、本当に地震が来たのだ。そして通知が鳴る。
下泉 涼
下泉 涼
下泉 涼
下泉 涼
下泉 涼
下泉 涼
下泉 涼
下泉 涼
下泉 涼
下泉 涼
下泉 涼
下泉 涼
下泉 涼
下泉 涼
下泉 涼
下泉 涼
下泉 涼
下泉 涼
―ピンポーン!! 「っ!?」 インターホンが家中に鳴り響く。体が萎縮して、心臓が飛び跳ねそうになる。
ピンポーン!ピンポーン!ピンポーン!ピンポーン!ピンポーン!ピンポーン!狂ったように何度も何度も繰り返す。 「っ?………………?……」 突然、パタリと音が鳴り止む、静寂の中で耳を澄ませる。
「帰った、……のか?」 ―……………………………………………………ガチャッ……… 「!!!」 玄関の鍵が開く音がした、なんで!?鍵はかかっているはずなのに!!
下泉 涼
下泉 涼
下泉 涼
下泉 涼
下泉 涼
下泉 涼
―タン…タン…タン… 階段を登る足音が近づいてくる…どうすればいい…!?窓から…いや、高すぎて無理だ…!とにかく、どこかに隠れないと…!!
物音を立てないように細心の注意を払って隠れ、息を潜める。 「おーい、どこに隠れたんだー?」 静かに、静かに、静かに…
…ハっはあ… …ふっ…っ …ぅ… ―ピロリン♪♪ 布団の下、僕のスマホの通知が鳴った…!
「おいおい、マナーモードにしとかなくちゃなぁ」 「布団の下だな?」 「今、殺してやる」 (…)
「なんて」 「とっさに廊下の押し入れに隠れたんだろ?」 (…!?バレた…!)
「ここだよな?親に怒られた時も、隠れ鬼のときもここに閉じこもってたよなぁ?」 (…何なんだお前は!?) 「ッ!何で!?何で自分のことを殺そうだなんてするんだ!!」
「…………忘れてるか?何でって」 引き戸が音も立てないくらい少しずつ開いていく。 呼吸は浅く、ドクン、ドクン、と鼓動が早くなっていく。 「サプライズだよ」
―え? 扉が勢いよく開かれる…!!それと同時に、クラッカーがパンッッと弾けた!!! ビクッと全身が反応する、一体何が起こっているんだ?
「誕生日!おめでとう!」
〜 〜 〜
一階のリビングに明かりをつけ時計を確認すると、時刻は0時を過ぎており、確かに僕は誕生日を迎えていた。未来の自分はテーブルに皿を並べて、誕生日ケーキの準備をしている。
「今はモンブランの方が好きなんだ、……こっちの方が良かったりする?」 「いや、チーズケーキがいい…これも、未来のケーキなの?」 「いや、これはそこで買ってきた」 「…」
僕が一番好きなケーキ、チーズケーキのろうそくを消して、話を聞く。 「未来では割と上手くやってるんだぜ、そこそこにな」 未来の自分は目に光を取り戻したような、生き生きとした感じだった。
「それはいいけど、さっきのは何だったんだよ!!」 「いやー、祝ってくれるやつ、誰もいないだろうなーと思ってさぁ笑」 「うるせぇ、余計なお世話だよ!!」
未来の僕は少し黙ってから、神妙な面持ちをして言う。 「高校のことな」 「……」僕はドキッとして身構えた。
「別に行かなくてもいいけど…あんま母さんのこと困らせんなよ?」 ガチャッと玄関の扉が開いた音がした。 「ただいまー!ケーキ買ってきたよー!」 と遅くまで働いていたお母さんが帰ってきた。
音に反応して玄関の方を向いてから、振り返ると未来の自分の姿はもうなかった。食べかけのモンブランだけを残して。 「なんだよ、それ...」 少し笑いながら、そうこぼす。
母は扉の鍵が開きっぱなしだったと注意している。 心臓がまだドクドク言っているのが、恐怖が残っているからか、変に嬉しくて、高揚してしまっているからなのか、僕には分からなかった。
「未来LINE」HAPPY END