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小型船の船内 -オフィス-

地獄のような1日は過ぎ 死者がたむろする街に日が登る…

悲しみと絶望の中 多くの犠牲のおかげで生き延びられた 少年少女達はオフィスへと顔を出す

桃井春菜

お…おはよう…

式神秋斗

おはようハルナ

桃井春菜

…うん

久遠翠

おはようございます
先輩…

式神秋斗

おはようクオンさん

式神白猫

秋兄が
早起きしてる!!?

式神秋斗

オレだって速くに…
というかもう昼だぞ!?

近藤十四

よう…

式神秋斗

トシ…
もういいのか?

近藤十四

…ああ
いくら悩んだって
仕方ないからな…

近藤十四

今は生きているって
だけでヨシとするさ…

式神秋斗

…そうか

式神秋斗

なぁ…
ハルナ…
スズとナギサは…

桃井春菜

うん…
まだ寝てる…

式神秋斗

…そうか
無理もないよな…

ガチャ…

個室から式神玄冴が姿を現し オフィスに集まっている少年少女達と 視線が合う

式神玄冴

みんな揃っているようね

式神秋斗

…姉さん

式神玄冴

よく眠れた?
…そんな訳はないわよね

それぞれうつむく… 昨日の出来事はあまりにも 非現実過ぎて今でも悪夢なのではと 疑う程だ…

だけど 昨日出来事は現実だと 心の底で理解していた…

学園のみんなが化け物になって 周りの人達を襲った事…

柊凪朱華や疾風字疾芽が 黒服に殺された事… そのどれもが夢ではなかった

式神秋斗

(…覚めない悪夢は
現実と変わらないか)

式神秋斗

クロコ姉さん
昨日の話だけど…

式神玄冴

あの話は終わりよ

式神秋斗

……姉さん!!

式神玄冴

これ以上考えても
仕方がないでしょ…

式神玄冴

それに
無闇矢鱈に不安を
煽るものじゃないわ

式神秋斗

………!!

桃井春菜

……?

久遠翠

……?

式神白猫

秋兄…

式神秋斗

………

オレは馬鹿だ… あんな地獄を体験しておいて みんな不安で いっぱいだっていうのに…

余計な事を言って 更に不安がらせてどうしようってんだ

少なくとも今する話じゃないよな…

式神秋斗

馬鹿だな…オレは…

近藤十四

アキト…

久遠翠

式神先輩…
大丈夫ですか?

式神秋斗

悪い…
心配かけちゃったね…

式神秋斗

オレなら大丈夫だよ
クオンさん

久遠翠

……はい

式神秋斗

ところで姉さん

式神玄冴

何かしら?

式神秋斗

そういや
オレ好みのキッチンが
有るとか言ってたけど
この船に食材も
有ったりするのかな?

式神玄冴

そりゃ一応あるけど…
アンタまさか…

式神秋斗

空腹は人類の敵…

式神秋斗

とりあえず
適当に作るから
キッチン借りるよ

式神玄冴

え…
ええ

姉の許可は得た こんな時に料理? 違うな こんな時だからこそ 料理は大事なのだ

美味しいものを作って 腹を満たせば悪い考えも少しは 落ち着くだろう…

式神秋斗はキッチンへと向かった

キッチン

冷蔵庫の中を何かないかと漁る 有るのはハムやら卵やらと そういった物ばかりだった

式神秋斗

あとは日持ちする
燻製の類いと缶詰…
パンが数袋か…

式神秋斗

ここはやはり
定番のサンドイッチかね…

卵をお湯で茹で 茹で上がるまでに下準備をする

レタスやトマトを手頃にカットしたり 皿を用意したり

お米と炊飯器が有ったので 数合程炊く…

式神秋斗

……久々の料理
楽しい…

心を少しだけ踊らせながら 料理を楽しんだ

愛河渚

……みんな
起きてたんだ…

桃井春菜

おはようナギサ

愛河渚

…おはよう

久遠翠

先輩…
具合は大丈夫ですか?

愛河渚

うん…
大分マシになったよ…
ありがとう久遠さん…

桃井春菜

スズは…まだ?

愛河渚

うん…
相当落ち込んでる…

桃井春菜

そう…だよね…

近藤十四

無理もねぇよ…
あんな事があったんだ…

式神白猫

みなさん…

式神玄冴

駄目よシロネ

式神白猫

姉さん?

式神玄冴

あの子達の傷に
部外者が口を出すのは
よしなさい

式神玄冴

それは気休めでも
なんでもないわ…

式神白猫

………!!

式神玄冴

私達にできるのは
見守る事だけよ…

式神白猫

……うん

式神秋斗

何しけた顔してんだよ

式神白猫

秋兄…

式神秋斗

食事の準備が
できたから運ぶのを
手伝ってくれ

式神白猫

分かった!

愛河渚

…アキト

式神秋斗

ナギサ

式神秋斗

暇なら手伝え

愛河渚

え…?
う…うん…
いいけど…

久遠翠

先輩!
私もお手伝いします!

式神秋斗

ありがとな!
んじゃ食器を並べてくれ

久遠翠

はい!

近藤十四

俺も

式神秋斗

ゴリラは幅取るから
そこから動くな

近藤十四

我が筋肉に無駄は
一辺たりとも無い!

式神秋斗

あ…そう

近藤十四

アキトがつれない…

桃井春菜

あはは…

桃井春菜

あっしはテーブルを
ウェットティッシュで
拭いておくじぇ!

式神秋斗

使えるピンクと
使えないゴリラ

近藤十四

アキトが冷たい…

桃井春菜

使えるピンクって
あっし!?

なんやかんやとやっている間に 料理がテーブルに並べられる

色とりどりのサンドイッチと 具材別のおにぎり そして麦茶…

ハムと卵とレタスのサンドイッチ トマトとチーズとラドンパレタスの サンドイッチなどなど…

愛河渚

このおにぎり…
海苔がパリッとして
具材がシャケ…
何これ…美味しい…

桃井春菜

待って…
ベーコンが炙ってある…
その隣に
とろけたチーズ…

式神秋斗

炙りベーコンと
チーズの
サンドイッチだね

式神秋斗

ブラックペッパーを
軽く振りかけて
バターでベーコンを
炙った後…
パンに乗せてから
チーズを乗せると
とろけたチーズになる…

式神秋斗

トドメにレタスを
一切れ置いたら
出来上がりさ!

久遠翠

女子力!!

式神白猫

おにぎり…
酸っぱい!!

式神秋斗

梅干しだな
シロネは
苦手だったよな…

式神秋斗

ほら
梅干し食べてあげるから
およこし

式神白猫

お願い秋兄!

式神玄冴

懐かしいね…
アキトの料理…

近藤十四

佃煮のおにぎり…
美味いなこれ!

近藤十四

もしかして
海苔も炙ったのか?

式神秋斗

まさか

式神秋斗

月三河産の海苔は
パリパリで
美味しいんだよ

近藤十四

そうなのか…!!

式神秋斗

さてっと…

サンドイッチとおにぎりを トレイに乗せて立ち上がる

式神白猫

秋兄?

式神秋斗

ちょいと行ってくる

愛河渚

アキト…
スズをお願い…

式神秋斗

任せておけ

式神秋斗は姫咲鈴が寝ている部屋へと トレイを持って歩き出す

個室 女子が使っている仮眠室

コンコン

姫咲鈴

………

アキト「お邪魔しますよっと…」

姫咲鈴

………

扉を開けて中に入る式神秋斗

式神秋斗

おや?
起きてたんだね
スズさんや

姫咲鈴

………

式神秋斗

食事…
持ってきたから…

姫咲鈴

ありがとう…
でもいい…

式神秋斗

スズ…

姫咲鈴

食欲ないから…
ごめん…

式神秋斗

そんな…

式神秋斗

そんな事って…

姫咲鈴

……?

式神秋斗

嘘だ…
夢なら覚めてくれ…

姫咲鈴

アキト…?

式神秋斗

一生懸命…
スズの為に作った
オレの料理が…
要らない…だなんて…

式神秋斗

あんまりだ…
酷すぎる…!!

姫咲鈴

…………

式神秋斗

スズの喜ぶ顔が
見たかっただけなのに…
食べて貰いたかった
だけなのに…

式神秋斗

…チラ

姫咲鈴

………

姫咲鈴

ごめんね…
そこに置いておいて…

式神秋斗

え?
やだよ

姫咲鈴

………

式神秋斗

よっと…
ちょっくらごめんよ

姫咲鈴の隣に腰掛ける式神秋斗

パク💖

式神秋斗

うん!!
我ながらデリシャス!

姫咲鈴

………

式神秋斗

も一つ…パクッと!

式神秋斗

うまうま💖

姫咲鈴

…自分で食べるの?

式神秋斗

えー?
だって食欲なさそうだし
代わりに
食べてあげようかという
オレなりの
優しさだよ〜?

姫咲鈴

…そう

式神秋斗

……

式神秋斗

ちょっと待って…

姫咲鈴

……なに?

式神秋斗

スズの口の中に…
何か…

姫咲鈴

…え?

式神秋斗

あー…
やっぱり…

姫咲鈴

な…なに…?

式神秋斗

スズ…
あーんしてごらん…

姫咲鈴

………

姫咲鈴

…アーン

式神秋斗

喰らえ音爆弾!

パクリ!

式神秋斗は特製サンドイッチを 姫咲鈴の開いた口の中に突っ込む!

姫咲鈴

んッ!!?

そのサンドイッチは魔性であった… ひと噛みすると炙りベーコンの肉汁が 溢れカットされたレタスやトマトに 肉汁が絡みつき絶妙な味わいを 引き出したのだ

姫咲鈴

もキュと…
みゃんで…!?

式神秋斗

美味いか?

口に入れられた サンドイッチを大人しく食べる

姫咲鈴

…(頷く)

式神秋斗

こっちの
おにぎりも自信作なんだ

そう言い おにぎりを手にしてスズに渡す

姫咲鈴

…頂きます

モキュモキュと少しずつ食べ始める 姫咲鈴…

姫咲鈴

これ…
アスカの好きな
月三河産の紅シャケ…

式神秋斗

そうなんだ

式神秋斗

なぁ…
アスカは他に何が
好きだったんだ?

姫咲鈴

アスカはね…

涙を薄ら浮かべ涙声になりながらも 柊凪朱華が好きだった食べ物や 趣味なんかを語って聴かせてくれた…

姫咲鈴

アスカは…
優しくて…
歌と料理が上手くて…

姫咲鈴

でもちょっとドジで
おっちょこちょいで…
優しくて…
正義感が強くて…

式神秋斗

そうだね…
アスカは強くて
優しかった…

困っている人を放っておけずに 学園も厄介ごとに首をつっこんで 怪我をして… 誰かの為に怒れる優しい奴だったよな

姫咲鈴

知ってた?

姫咲鈴

アスカって
君の事が実は
好きだったんだよ?

式神秋斗

あのアスカがオレを!?
マジでか!!

姫咲鈴

妬けるねぇ
アタシにも
それくらい情熱を
向けて欲しかったもんさ

式神秋斗

十分愛されてたと
思うぞスズ…

姫咲鈴

…うん

式神秋斗

スズ…

姫咲鈴

……

式神秋斗

偉そうな事は
言えないし…
おまえの気持ちを
考えたら
残酷かもしれない…

式神秋斗

それでも…

姫咲鈴

…アキト?

式神秋斗

アスカの分も
美味しい物を食べてくれ
楽しい事を
いっぱいしてくれ…

式神秋斗

アスカの為にも
オレ達の為にも
一緒に生きてくれ

心から切に願う… 友との哀しい別れを 足枷にするのではなく… 友の分まで生きてほしいと…

そう思った時 自然とそんな言葉を話していた

姫咲鈴

…無理だよ
アタシには…
アスカしか…

式神秋斗

スズ

姫咲鈴の前に片膝をつき座る そして彼女の両手を握った

姫咲鈴

な…なに?

式神秋斗

こんなに思って
貰えてアスカは
幸せ者だな

姫咲鈴

……

式神秋斗

でも…
スズのアスカに対する
想いに負けないくらい

式神秋斗

オレもみんなも
おまえさんが大切なんだ

姫咲鈴

……

式神秋斗

今は辛い…
辛いよな…

式神秋斗

その気持ちを抑えろとも
乗り越えろなんて
言えない…

式神秋斗

ただ…

式神秋斗

今は…
一緒に行こう

姫咲鈴

アキト…

式神秋斗

スズの辛さも
苦しさも…
半分くらい
オレにも分けて欲しい

式神秋斗

できれば
このサンドイッチも
半分分けておくれ

姫咲鈴

なにそれ…
良い台詞が台無し…

姫咲鈴

…うん

姫咲鈴

今は無理でも…
心配してくれる
みんなの為にも…

姫咲鈴

アスカや疾風字君の
妹さんの為にも…
アタシ…
頑張ってみるよ…

式神秋斗

スズは1人じゃない
オレ達と
頑張っていくんだ

式神秋斗

一緒に行こうぜ
スズ!

姫咲鈴

…暑苦しい

式神秋斗

なんと!?

姫咲鈴

それに
そういう
恥ずかしい台詞ばかり
言っていたら

姫咲鈴

勘違いするから
辞めた方がいいよ

式神秋斗

は…恥ずかしい
台詞だったのかこれ…

姫咲鈴

無自覚!?

心なしかほんの少し 元気を取り戻した姫咲鈴 そんな彼女と 他愛無い話題を楽しみつつ 食事を堪能した

彼女は平然に振る舞ってくれたが 何処かその顔には影あった…

無理もない 親友や学友を一気に失ったのだ

それで平然でいられる方が きっとおかしいのだろう…

式神秋斗は自身の異常さを 1番理解していた… 人の死に慣れてしまっている自身を…

キィ…

桃井春菜

ッ!!

桃井春菜

…スズ

姫咲鈴

………

久遠翠

先輩…
大丈夫…ですか?

式神白猫

…秋兄

式神秋斗

…大丈夫だよ

姫咲鈴

心配かけて…
ごめん…ね?

桃井春菜

…スズ!

姫咲鈴

まだアタシ…
大丈夫じゃないと思う…

姫咲鈴

だけど…
頑張るから…

姫咲鈴

みんなの為にもアタシ
頑張るから!

愛河渚

スズ…
一緒だよ…
一緒に頑張っていこ?

姫咲鈴

…うん

式神秋斗

…な?

式神白猫

…うん

式神白猫

さすが
魅惑のマダムキラー!

式神秋斗

なんだよそれ!?

式神白猫

秋兄のベットの上に
堂々と置いてあった
ドキドキ三十代
グラビアアイドルの雑誌
(笑い)に書いてあった

式神秋斗

隠したと思ったのに!

愛河渚

わあ…

姫咲鈴

男の子だし…ネ

近藤十四

三十路好きも
ここまでいくと
清々しいな

久遠翠

あ…あはは

式神白猫

ドンマイ!

式神秋斗

辞めてよ!
これ以上
イジらないでよ!

式神玄冴

愚弟がバカで
ごめんなさいね…

式神秋斗

クロコ姉さんまで
酷いよ…

式神白猫

秋兄だから
仕方ないよ

式神秋斗

オレの立場って…

桃井春菜

仲良い家族だね

式神白猫

それだけが自慢です!

式神秋斗

ハァ…

式神秋斗

それより姉さん
これからどうするんだ?

式神玄冴

そうね…

式神玄冴

そろそろ月三河を
出ようと思うわ

式神秋斗

!?

式神秋斗

待ってよ姉さん!
まだ兄貴が…

式神玄冴

兄貴の事は…
諦めなさい…

式神秋斗

見捨てる…
そう言ってんのか?

式神玄冴

そうよ

式神秋斗

バカ言うな!!
家族だぞ!?

式神秋斗

どこの世界に
家族を
見捨てる奴が
いるってんだ!!?

姫咲鈴

…アキト

式神白猫

そうだよ…
兄貴を見捨てるなんて
嘘…だよね?

式神玄冴

アキト…
シロネ…

式神玄冴

私が兄貴を
本気で見捨てたいと
そう思うの…?

式神白猫

ッ!?

式神秋斗

思わない…

式神秋斗

こんな状況で
兄貴を探そうなんて
それこそ自殺行為だろう

式神秋斗

解ってる…
ちゃんと解ってるんだ

式神秋斗

それでも…
兄貴を失うのは嫌だ…

式神玄冴

その結果
ここに居る全員が
死ぬ事になっても?

式神秋斗

…それは

式神玄冴

兄貴の生存を
確認できない以上…
無理をしてまで
探す事はできないわ

式神玄冴

あなたは
お友達を救う為に
リンと一緒に
ここまで
来たんじゃないの?

式神秋斗

…そうだけど

式神秋斗

…でも!!

久遠翠

先輩…

久遠翠

ど…どうにか
ならないんですか?

久遠翠

椎名先輩と一緒なら
探し出せるとか…

式神玄冴

…それは

式神秋斗

そうだ…
椎名さんとなら
兄貴を探しに行ける…

式神玄冴

………

近藤十四

待て…
だったら俺も行くぜ

式神秋斗

すまない…
でもこれはオレ達
家族の問題だから…

式神秋斗

椎名さんを巻き込むのも
気が引けるけど
彼女しか化け物を
倒す事ができない…

式神白猫

…秋兄

桃井春菜

待って…
そもそもリンちゃんは
何処に居るの?

桃井春菜

部屋にも居なかったし…

式神秋斗

…そうだ
そうだよ!
椎名さんが
朝から見当たらない…

式神秋斗

女子部屋に行った時
椎名さんは
居なかったから…
寝坊とかでは
ないだろうし

姫咲鈴

うん…
そもそもリンちゃんを
見ていない…と
思うよ…

愛河渚

そうだね…

愛河渚

私とハルナとスズと
久遠さん…
後は妹さんだけだったと
思うけど…

久遠翠

どういうこと
なんでしょうか…

桃井春菜

リンちゃん…
何処に行っちゃったの?

近藤十四

買い物…
なんて事は
ねぇだろうしな

式神玄冴

………

式神秋斗

姉さん…?

式神玄冴

みんな…
そろそろ月三河を
出るわよ…

式神秋斗

姉さん!!?

愛河渚

待って…
待ってください!!
まだリンちゃんが…

桃井春菜

1人居ないんです…
だから少しだけ
待ってください!!

式神玄冴

リンは…

式神玄冴

彼女の事は
忘れなさい…

近藤十四

おいアンタ!!
そりゃあんまりだろ!!

近藤十四

シイナちゃんを
忘れろだ!?

近藤十四

出来る訳ねぇだろ!!

久遠翠

そ…そうですよ!!
沢山お世話になったのに
置いてけぼりなんて
酷すぎます!!

桃井春菜

何か知っているんじゃ
ないんですか!?
それなら
教えてください!

式神白猫

そうだよ姉さん!!
秋兄のお友達の事を
知っているなら
教えてあげてよ!

式神玄冴

……駄目よ

式神秋斗

兄貴の事といい…
椎名さんの事といい…

式神秋斗

何を隠しているんだよ
クロコ姉さん!!

式神秋斗

こればっかりは
引き下がらないぞ!!

式神玄冴

………

式神秋斗

頼むよ…
姉さん…!!

みんなの説得を聞き 式神玄冴はハァ…とため息をつく

式神玄冴

……頑固なのは
変わらないわね

式神玄冴

彼女は…
リンは…

式神玄冴

あなた達の明日を
守る為に
パンドラカンパニーへと
向かったわ…

式神秋斗

………ッ!!?

近藤十四

マジ…かよ…

近藤十四

俺らの為に…
クイーンって奴を…
ANUB iSってのを
どうにかしに
行ったっていうのか!?

姫咲鈴

待ってよ…
ANUB iSって…??
パンドラカンパニーが
なんで
出てくるんですか!?

式神秋斗

パンドラカンパニーが…
この騒動の原因だからだ

式神秋斗

学園のみんなが
化け物になったのも

式神秋斗

アスカが…
ハヤメちゃんが…
ハヤテが…

式神秋斗

みんなが
逝っちまったのも全部…
パンドラカンパニーの
ホープ総帥の
仕業なんだよ…

近藤十四

ご丁寧に
学園の理事長こそが
その総帥だとさ…

愛河渚

嘘…

桃井春菜

みんな…
みんな
騙されていたってこと?

久遠翠

そんな…

式神秋斗

姉さん…
教えてくれ…

式神秋斗

椎名さんはいつ…
出て行ったんだ…?

式神玄冴

…それを聞いて
どうするつもり?

式神秋斗

助けに行くに
決まっているだろ!!

式神玄冴

…だから
言いたくないのよ

式神秋斗

ここまで来るのに
多くの死が…
オレ達を襲ったんだ…

式神秋斗

椎名さんがいなければ
オレ達は
全員とも間違いなく
死んでいた…

式神秋斗

ずっと…

式神秋斗

彼女は…
椎名凛は…
ずっと1人で
戦ってくれていたんだ!

式神秋斗

見捨てる事もせず
愚直に…
真っ直ぐに…

式神秋斗

細い腕に似合わない
大型ナイフを片手に!!

式神玄冴

……

式神秋斗

椎名さんは
ボロボロになってまで
オレ達を
ここまで導いてくれた

式神秋斗

立てなくなってまで
みんなを守ってくれた…

式神秋斗

今度はオレが…
椎名さんを護る為に
戦うんだ

式神玄冴

たかが人間が
屍人兵に敵うとでも
思っているの!?

式神玄冴

リンは…
あの娘はあんたに
そんな事をさせる為に
護ってきた訳では
ないのよ!!

式神秋斗

……

式神玄冴

答えなさい!
式神秋斗!!!

式神玄冴

あなたに何が
できるというの!!?

式神白猫

秋兄…!!!

式神秋斗

…何もできない

式神玄冴

だったら何故!!!?

そうだ… 何もできないと解っていながら… オレは何故…

化け物相手に何ができる? 盾になって死ぬくらいか?

どんなに殴っても 平然と向かって来る化け物に… オレは…

その答えを… オレは初めから持っていた

ずっと頭には彼女の顔が浮かんでいた …今この瞬間もそうだ きっと コレが答えなのだろう

式神秋斗

オレはきっと…

式神秋斗

椎名凛って女が
好きだからだと思う

式神玄冴

…そう

式神玄冴

あなた達は本当に…

式神玄冴

分かったわ

式神白猫

姉さん!?

式神玄冴

ただし条件があるわ

式神秋斗

条件…?

式神玄冴

コレを…
肌身離さず
持っていきなさい

式神玄冴はそう言うと 机の引き出しから赤い色のピィンを 一台取り出した

式神秋斗

ピィン…?

式神玄冴

ええ…

式神玄冴

それと
前のは
壊れているでしょ?
修理しておくから
渡してくれるかしら?

式神秋斗

いいけど
中身見るなよ?

式神玄冴

分かっているわ…

オレは今持っているピィンと 新しいピィンを交換した…

式神玄冴

そのピィンには
最新アップデート済みの
パンドラ君が
搭載されているから…
道中使用してみて

式神秋斗

パンドラ君が!?

式神秋斗

分かった!
後で確認してみる

ヒシッ

式神秋斗

シロネ?

離すまいと必死で兄である 式神秋斗にしがみつく式神白猫…

式神白猫

やだ…
やだやだやだッ!!

式神白猫

嫌だよ…
秋兄…
行かないで…!!

式神玄冴

シロネ…

式神秋斗

シロネ
離してくれ…

式神白猫

やッ!!

式神白猫

行ったら…
秋兄も兄貴と同じく
帰って来ないもん…!

式神白猫

行ったら
助からないんだよ!?
死んじゃうんだよ!!

式神秋斗

シロネ…

式神白猫

なんで秋兄なの!?
他の人でもいいじゃん…
側に居てよ…
お願いだから…

式神秋斗

解ってくれ…
シロネ…

桃井春菜

アキト…!!

桃井春菜

行けば助からない…
でもリンちゃんを
見捨てられない…

桃井春菜

気持ちは分かるけど
でも…
でも…!!

式神秋斗

知ってるだろ?
椎名さんがどれだけ
傷ついていたのかをさ

式神秋斗

だからこそ次は
オレが助けてやらないと

桃井春菜

バカだよ…君は…

式神秋斗

そうだな

久遠翠

先輩…

式神秋斗

クオン…
いや…
スイちゃん…
行ってくるね

久遠翠

…はい
お待ちしてます…
アキト先輩!

近藤十四

俺も行くぜ
アキト

式神秋斗

いらん

近藤十四

…えぇ

式神秋斗

おまえまで来たら
誰が姉さん達を
護るんだよバカ

近藤十四

むぐぐ…

愛河渚

アキト…
このバカは私達が
見張っておくよ

愛河渚

だからアンタは
リンちゃんを
ちゃんと連れ戻しなよ

式神秋斗

おう
さすがは良い女…
解ってるじゃん!

愛河渚

バカ…

式神白猫

みんな
どうかしてるよ…

式神白猫

行ったら
死んじゃうんだよ!?

式神白猫

あんな化け物相手に
何もできないまま
殺されるんだよ!!?

式神白猫

なんで誰も
止めてくれないの…?

式神玄冴

シロネ…

式神秋斗

なぁ…
シロネ…

式神秋斗

オレは何も
死にに行く訳じゃ
ないんだよ?

式神白猫

…でも

式神秋斗

約束する…
絶対に生きて
帰って来るってさ

式神白猫

それ死亡フラグ…

式神秋斗

ははは!
フラグなんて
ブレイクしてやんぜ!

式神秋斗

だから
クロコ姉さんと
みんなを頼む…

式神白猫

………

式神白猫

絶対…だからね

式神秋斗

…ああ

式神秋斗

オレが
嘘言った事あるか?

式神白猫

うん

式神秋斗

あうち!!?

ス…と手を離す式神白猫

姫咲鈴

相変わらず
しまらないね…

式神秋斗

…だね

姫咲鈴

一緒にさ…

姫咲鈴

一緒に生きようって
言ったんだから…
責任取ってよね…

姫咲鈴

死んだら
許さないから

式神秋斗

怖…
こりゃうかうか
死んでらんねーな

式神玄冴

…アキト

式神秋斗

姉さん…
初めからこうなるの
期待してたでしょ?

式神玄冴

…どうかしらね

式神秋斗

馬鹿兄貴も一緒に
連れて帰るよ

式神玄冴

…お願い
お兄ちゃ…
兄貴とリンを…
助けてあげて…

式神秋斗

…任せろ!

式神白猫

秋兄…
気をつけて…

式神秋斗

ああ

式神玄冴

幾つかのルート計算は
パンドラ君に
インストールしているわ

式神玄冴

後でアプリを開いたら
訪ねてみて…

式神玄冴

現状もっとも
最適なルートを
導き出してくれる筈よ

式神秋斗

分かったよ姉さん

式神玄冴

気をつけて…

姫咲鈴

死ななでね

愛河渚

無理しないでよ?

桃井春菜

行ってらっしゃい

久遠翠

どうか御武運を…

近藤十四

……

式神秋斗

その顔やめい

近藤十四

しっかりなアキト
危なかったら
逃げ帰って来い!

式神秋斗

ああ

式神秋斗

みんな…
行ってくる!

みんなとの別れを済ませ 式神秋斗は小型船を出る…

その際に武器になる物を 持っていかないのかと聞かれたが ピィン1つでいいと答えた

刃物や打撃…拳銃なんかは 屍人兵の鋼鉄の硬化外皮の前には 何の役に立たないからである…

そうなると 武器などは素早く動くのには 邪魔になる…

だからこそ 式神秋斗は素手で パンドラカンパニーへと 向かうのであった

月三河東海岸

昼を過ぎているというのに スカイブルーな空に 日差しがギラギラとやたらと眩しい… 今は夏だということを 嫌でも思い出させる天気だ…

少し前なら みんなで海水浴とかしていただろう

だが 周りをを見渡せば 嫌でも現実が襲ってくる…

くらりと揺らぎそうになる頭を 勢いよくふり 嫌な気分を振り払う

式神秋斗

そういや
外に出たら
パンドラ君を
起動させるん
だったかな

オレはピィンを取り出し アプリを起動させる

アプリを開くと見覚えのある 後ろ姿が映る

式神秋斗

パンドラ君…?

パンドラ君

あ…

パンドラ君

ちょっと待って…

式神秋斗

なんだ…
この違和感…

パンドラ君は両手で自分の頭を掴むと グイグイと引っ張り上げる…

式神秋斗

何…やってんだ?

パンドラ君

ちょっと黙ってて
ください!!
今いいとこなので!

式神秋斗

お…おう

スポーーン

式神秋斗

…え

式神秋斗

えええッ!!?

パンドラ君の頭が…取れた 中からは別の何かが姿を表せる

パンドラ君?

ふう…
ようやく取れました

パンドラ君?

いやぁ…
時間かかりましたよ

式神秋斗

ええ…と
どちら様?

パンドラ君?

はい?

パンドラ君?らしいそれは 下の白い肌?を脱ぎだす それはまさに着ぐるみのように

パンドラ君?

忘れちゃったんですか?

パンドラ君?

私ですよ!
あなたの
親愛なる相棒!
パンドラ君です!

式神秋斗

なーんだ…

式神秋斗

て!
ならないよ!!
なんなのその姿!?

式神秋斗

可愛いじゃん!!
女の子じゃん!!
もう君って
呼べないよ!?
むしろ
「ちゃん」だよ!

パンドラちゃん

アップデートの
おかげで
脱皮?みたいな感じで
進化したのです

式神秋斗

脱皮!!?

パンドラちゃん

まぁ…
そこは置いておいて

式神秋斗

置いておくの!?

パンドラちゃん

はい!

パンドラちゃん

それよりアキト

式神秋斗

なんだよ

パンドラちゃん

私を起動させたと
いうことは…

パンドラちゃん

椎名凛を追いかけると
いうことで
間違いありませんね?

式神秋斗

…ああ

式神秋斗

頼めるか?
パンドラちゃん…

パンドラちゃん

やれやれ…
仕方ないですね

パンドラちゃん

ただし
指摘したルートを
正確に通ってください

パンドラちゃん

それだけ
パンドラカンパニーへの
道は険しいのです

式神秋斗

解っているさ

ここまで来るのに どれだけの犠牲を払い 苦難や苦労をしてきたか…

式神秋斗

パンドラちゃん…
ルートの検索を
開始してくれ

式神秋斗

昨日の夜に
椎名さんは
パンドラカンパニーへと
向かったとすれば

式神秋斗

彼女とは
大分距離が
遠のいている筈だ

式神秋斗

だからこそ
ほんの少しでも
ロスタイムを無くしたい

パンドラちゃん

了解です
アキト!

式神秋斗

ところで
オレへの呼び方とか
色々変わった?

パンドラちゃん

さぁ?
気のせいじゃ
ないんですか

式神秋斗

そう…かなぁ…

些細な疑問を胸に秘め 式神秋斗は パンドラちゃんの指示のもと パンドラカンパニーへと走りだす

椎名凛が船を出る少し前…

式神玄冴の部屋

式神玄冴

随分無茶をしたわね…

椎名凛

…ええ

式神玄冴

コレがもう一本の
対屍人兵用
大型両刃
ブレードナイフよ…

式神玄冴

前回より
強度を上げた代わりに
少し重くなっているわ

式神玄冴

50キロ程かしら…

椎名凛

ありがとう…

椎名凛は開かれた アタッシュケースから 対屍人兵用大型両刃ブレードナイフ 通称【大型ナイフ】を軽々と手に取る

椎名凛

問題ないわ

式神玄冴

解っていると思うけど
ハザードバレットは
絶対に使わないこと…

式神玄冴

弾薬はもう
作れないのもあるけど
何より…

式神玄冴

あなたの身体が
もう…

椎名凛

解ってる…

椎名凛

使用するには
hazard化をする必要が
あるのだから…

椎名凛

でも…
次hazard化したら
私は間違いなく…

式神玄冴

…ごめんなさい

式神玄冴

こんな欠陥武器しか
あなたに渡して
あげられなくて…

椎名凛

気にしないで…

椎名凛

予算も時間も場所も
全てが無かったのだから

椎名凛

むしろこれだけ
揃えてくれた事に
感謝しているわ…

大型ナイフもそうだが 欠陥武器の1つのこの特殊拳銃… ハザードバレット

このハンドガンは 対戦車貫通大型ライフルを 無理矢理小型化させたような物 特殊次元合金S isuで造られた この世界でただ一つの拳銃だ

だが 威力が破格なだけでは屍人兵を 倒す事は難しい…

本当に特別なのは ハザードバレットからしか使えない A・H・Bと呼ばれる特殊弾薬である A・H・Bとは アンチハザードバレットの略であり コレこそが屍人兵に特攻的な ダメージを与えられる武器である

前回 hazard Monsterとなった 長谷川荒木を吹き飛ばしたのがコレだ

感染源のクローンである 椎名凛の大量の血液から造られた 弾薬であり 屍人兵の硬化外皮を着弾直後に 強制的に硬化外皮を融解させる代物だ

ただ問題なのが 融解させたとしても それが一瞬だけだということ

だからこそ 並の武器では倒しきれず だからといって大型銃器を 使用する訳にもいかない…

何より 軍事施設全てが パンドラカンパニーの息のかかった 施設であり銃器を手に入れる 術がないのだ…

ナベシンが持っていた パンドラ製ハンドガンを拝借して カスタムしたのが ハザードバレットにあたる

だが ハンドガンで高威力を出すには 対戦車貫通ライフル並の威力が 求められていた…

式神玄冴が パンドラカンパニーで働いていた頃に 発掘されたシフトギアと呼ばれる ピィンの元となった携帯機器の側で 偶然発見された未知の金属… 特殊次元合金S isuを幾つか 持ち出した物をハザードバレットの 製作に使ったのだ…

無理矢理重火器並の威力を求めた 代償として 握力が推定300はないと トリガーが引けない えらく欠陥武器となった…

式神玄冴

このまま私達と
逃げてもいいのよ?

椎名凛

……

椎名凛

ありがとう…

椎名凛

でも
それはできないわ…

式神玄冴

…どうして?

椎名凛

私にとって世界は
どうでもいい…

椎名凛

それは今でも変わらない

椎名凛

だけど…
私を庇って
倒れた友人の為にも

椎名凛

私なんかを
友達と言ってくれた
みんなの為にも…

椎名凛

私の太陽の為にも…

椎名凛

だから私は行くわ

式神玄冴

リン…
あなた変わったわね…

式神玄冴

でも体調はいいの?
相当キツいように
見えたのだけど…

式神玄冴

1日くらい
休めないの…?

椎名凛

ありがとう
でも大丈夫よ…

椎名凛

もう時間が
ほとんどないから…

椎名凛

私が
ANUB iSを止めないと
みんなが…
死んじゃうから…

椎名凛

私が行かなきゃ…

椎名凛

それに

式神玄冴

それに…?

椎名凛

アキトの背中で
沢山休んだから…
もう平気よ…

式神玄冴

…本当に
あの子が好きなのね

式神玄冴

初恋…だからかしら?

椎名凛

…うん

そして 彼女は式神玄冴の前から姿を消した…

月三河南西中央区

屍人兵

ア”ア”ア”…

屍人兵

ウ“ア”…

屍人兵

ギギ…

中央区の周辺には大勢の屍人兵が 徘徊する中 1人の少女が ナイフを片手に物陰に身を潜めていた

椎名凛

8…12…15

椎名凛

ぱっと見20人以上…

椎名凛

戦闘は回避した方が
よさそうね…

椎名凛

(となると
迂回する事になるわね…)

椎名凛

(急いで
パンドラカンパニーに
行きたいのに
屍人兵の数が多いから
真っ直ぐに進めない…)

椎名凛

(まるで
パンドラカンパニー
周辺を屍人兵に
守らせているみたい…)

椎名凛

(私に対する
対策かしらね…)

身を低く潜めてその場を移動した

月三河繁華街 裏通り

椎名凛

(屍人兵の
対人索敵能力が
低い気がする…)

椎名凛

(やはり
純粋な人間じゃないから
人として認識されて
いないのかしら…)

椎名凛

都合がいいから
別にいいけどね

屍人兵

ア”ア”…

屍人兵がボーっと 通路に立っている… 椎名凛が少し近づくと こちらに気づきのそのそと 近寄って来る…

どうやらこちらを敵として 認識したようだ

だが それは問題ではない…

屍人兵

ア”ア”ア”!!

屍人兵は椎名凛に向けて牙を剥き 襲いかかる!

椎名凛

邪魔よ

シュッ

屍人兵の掴みかかる腕を掻い潜り すれ違い様に大型ナイフの刃を 屍人兵の喉から首筋にかけて線を通す

屍人兵は胴体から頭部がずり落ち そのまましばらくもがいていたが 椎名凛が路地裏から姿を消す頃には 緑色のゼリー状の液体へと その姿を変えていた

椎名凛

毎回一体ずつなら
楽でいいのだけど…

椎名凛

そんな簡単には
いかないわよね…

パンドラカンパニー 12階 総帥室窓側

ホープ・スターズ・グロリアス

………

パンドラ研究社員

報告します

パンドラ研究社員

月三河都市部周辺の
感染率が
90%を越えました

パンドラ研究社員

旧ワルキュレア帝国
西ゼウス中央国
ロンギヌス共和国
それぞれの感染率が
5割を越えました

ホープ・スターズ・グロリアス

想定より
感染率のペースが
なかなか速いな

パンドラ研究社員

はい
この調子ならば
人類浄化計画は
1週間もしない内に
完遂されるでしょう

ホープ・スターズ・グロリアス

エクセレント!
素晴らしい成果だ

ホープ・スターズ・グロリアス

だが…
月三河の残り
10%は
どうなっているのだ?

パンドラ研究社員

は…はい
何者かの妨害行為により
感染率が遅れてしまい
今に至ります…

ホープ・スターズ・グロリアス

何者かだと?

パンドラ研究社員

例の学園生の仕業かと…

ホープ・スターズ・グロリアス

hazard Monsterを
倒した人物か…

ホープ・スターズ・グロリアス

厄介だな…

パンドラ研究社員

ど…
どうなされますか
総帥…?

ホープ・スターズ・グロリアス

………

ホープ・スターズ・グロリアス

ANUB i Sに
例の少女と
その協力者を最優先で
排除するように伝えろ

ホープ・スターズ・グロリアス

不安要素は
全力で処分するに限る

パンドラ研究社員

はッ!!

黒服

総帥

ホープ・スターズ・グロリアス

今度はなんだ?

黒服

例の少女が
パンドラカンパニーの
周辺に
現れたとのことです

ホープ・スターズ・グロリアス

そうか…

ホープ・スターズ・グロリアス

奴の目的は
おそらく私か…
もしくは
ANUB i Sの
どれかだろうな…

ホープ・スターズ・グロリアス

はたまたその両方か
くくく…

黒服

その少女を
排除致しますか?

ホープ・スターズ・グロリアス

それには及ばん
奴の処分は
ANUB i Sに任せる

ホープ・スターズ・グロリアス

おまえ達は
我が社に潜入した
ネズミの処理をしろ…

ホープ・スターズ・グロリアス

特務機関を
出しても構わん…

黒服

Σ部隊をですか?

ホープ・スターズ・グロリアス

例え小ネズミだろうと
大事な舞台を
邪魔されたくは
ないからな…

ホープ・スターズ・グロリアス

用意はしておくに限る…

黒服

…では
特務機関Σ鎮圧部隊を
出動させます

ホープ・スターズ・グロリアス

ああ…
全員必ず始末しろ
1人たりとも
生きて帰すな

黒服

了解

ホープ・スターズ・グロリアス

そういえば
あのジジイ…
Dr.ケイオスは
何をしている?

パンドラ研究社員

博士なら
hazard Monsterの
サンプルを元に
新たなアンプルを
製作しているとの
ことです…

ホープ・スターズ・グロリアス

遊びたがりな
ジジイめ…

ホープ・スターズ・グロリアス

研究もいいが
ANUB i Sの調整も
しっかりやれと
伝えておけ

パンドラ研究社員

はッ!!

総帥は窓辺に立ち下の景色を眺める

数時間前までは人々は化け物から 必死に逃げていた ある者は家に立て篭もり ある者は武器を手に立ち向かう だがそれも次第に少なくなり 屍人兵が我がもの顔で外を歩いていく

ホープ・スターズ・グロリアス

さて…

ホープ・スターズ・グロリアス

たった1人の反逆者よ…
おまえは
世界の救世主となるか
はたまた
世界を救えず
手遅れとなるか…

ホープ・スターズ・グロリアス

見ものだな…

ホープ・スターズ・グロリアス

せいぜい
足掻いてみせろ…

パンドラちゃん

アキト!
そこを右です!!

式神秋斗

了解!!

パンドラちゃん

そのまま真っ直ぐです

パンドラちゃん

待って!!
敵性反応が2つ…

パンドラちゃん

屍人兵が
2体待ち構えてます!

パンドラちゃん

時間はかかりますが
戦闘を回避する為に
迂回しますか?

疾風字颯

戦うの悪手なのは
解ってはいるけど…

男の声「時間がヤバいんだろ? だったら突っ切るしかねぇだろ」

式神秋斗

ッ!!?

月三河4番東区 住宅街

パンドラちゃん

ゴリマッチョの
反応有り!
ゴリラです!!

近藤十四

誰がゴリラだ
コノヤロウ!!

式神秋斗

なッ!?
なんでおまえが…

近藤十四

ハッ!
ダチを助けるのに
理由がいるのかよ?

式神秋斗

馬鹿野郎!!
だからって何で…

近藤十四

いいんだよアキト…

近藤十四

俺はどうせ助からねぇ…

近藤十四

だったらせめて
桃井や姫咲や愛河…
後輩とおまえの家族を
護る為に使いてぇんだ

式神秋斗

…トシ

近藤十四

何もしないで
死んじまったら
ハヤテやハヤメちゃん…
ヒイナギに
顔向けできねぇからな

疾風字颯

だからって…
大馬鹿だよおまえ…

近藤十四

おまえだって
そうだろうが…

近藤十四

惚れた女の為に
命を賭けるってんだ
十分大馬鹿だろうぜ?

式神秋斗

…違いないな

パンドラちゃん

私という者が
ありながら
妬けちゃいますね!

パンドラちゃん

浮気ですか?
上等ですよ!
やってやりますとも!

式神秋斗

ドウドウ!
落ち着けよ
パンドラちゃん!

近藤十四

なんだコイツ…

パンドラちゃん

私の顔を
忘れたのですか?
薄情な人ですね

パンドラちゃん

爆破しますよ?

近藤十四

な…
なんなんだ
この物騒な
お嬢ちゃんは!?

式神秋斗

あー…
ほら…
拳闘集会の時に
一緒に居た…

式神秋斗

パンドラ君…
なんだよね…

近藤十四

お…おいおい
全然違うじゃんさ…

パンドラちゃん

当然です!
私は日々
成長するのです!

近藤十四

…成長というより
別人だが…

パンドラちゃん

そんなことより
いいのですか?

式神秋斗

…へ?

パンドラちゃん

敵さん…
こっちに
向かって来てますよ?

屍人兵

ア”ア”ア”…

屍人兵

ウ“オ“オ“…

式神秋斗

…ッ!?

近藤十四

突破するんだろ?
行くぜアキト?

式神秋斗

そうだな…

パンドラちゃん

いいですか?
攻撃は最小で…
一撃でダウンさせて
ください!

パンドラちゃん

長引けばこちらが
不利になります!

パンドラちゃん

お2人は
純感染状態…
hazard L v0・2…と
言ったところでしょうか

パンドラちゃん

皮膚は並の人間より
頑丈になってます

パンドラちゃん

ですが
感染がこれ以上進めば
意識を支配される恐れが
あります…

パンドラちゃん

多少は私の権限で
抑えられますが
無理はなさらいように…

近藤十四

なんか今サラッと
凄いこと
言ってなかったか!?

式神秋斗

話は後だ

式神秋斗

来るぞ!!

屍人兵

ア”オ“オ“ア”!!

式神秋斗に屍人兵が両腕を広げて 襲って来る

牙を剥き出しにした屍人兵に向かい 式神秋斗は脚に力を込めて 屍人兵に向かい一気に加速する!

式神秋斗

デリャァッ!!

屍人兵の振り下ろす腕より速く 重い拳の強打を鋼鉄の頭部に命中する

ドガッ!!

屍人兵

ガア”!!?

屍人兵は頭から地面に叩きつけられ 倒れ伏せる

近藤十四

ドリャァァッ!!

屍人兵

グオ“オ“!!

ズダンッ!!!

屍人兵に強烈な体当たりを決め 吹き飛ばす

屍人兵

グア”ア”

パンドラちゃん

見事です!
さぁ!今の内に!!

式神秋斗

行くぞトシ!!
起き上がるまえに
この場を離れよう!

近藤十四

おう!!

屍人兵が起きあがろうと 悶えてる内に式神秋斗と近藤十四は この場を立ち去った

月三河繁華街下水道の先 パンドラカンパニー社所属 廃墟処理施設

椎名凛

ハァ…ハァ…

椎名凛

まさかこのルートを
通る事になるなんて…ね

椎名凛

ここからなら
屍人兵との戦闘を
極力避けられるけど

椎名凛

それにしても
酷い臭い…
悪臭やら病原菌やら
色々ヤバそうね…

椎名凛

…病気にはならない
らしいけど…私…

椎名凛

…それでも
気分の良い場所じゃ
ないわね…

パンドラカンパニーは 屍人兵で周りを囲まれており 近づこうものなら数百体の屍人兵と 一度に戦う事になる…

体力を温存したい彼女は 戦闘をなるべく避ける為 かつてパンドラカンパニー周辺を 調べていた時に偶然発見した施設… 月三河繁華街の裏通りから繋がる 下水道のその先に秘密裏に造られた 廃棄処理施設へと身を潜めていた…

その施設は 実験により失敗… もしくはLOST No.として 認定された者達の ゴミ捨て場のような場所だと クロコから聴いたことがある…

辺りを見渡せば 古びたボロボロの衣服や 骨らしい何かが大量に積まれていた…

屍人兵を人工的に感染増殖させる為に 人間を攫っては実験を繰り返し その度に失敗した元人間をここに 容赦なく捨てていたのだろう…

椎名凛

私も…
クロコが居なければ
ここのシミになって
いたのでしょうね…

そう思うとゾッとする…

式神玄冴には感謝しても しきれない想いでいっぱいだった…

椎名凛

立ち止まっては
いられないわね…

椎名凛

時間が経てば経つほど
アキトに…
みんなに危険が
及ぶのだから…!

椎名凛は廃棄処理施設の奥へ 更に進む…

その先こそが パンドラカンパニー本部へと 繋がる唯一の道なのだ…

高級防犯対策マンション 6階4-2の部屋

女性「ほ…本当に大丈夫なの!?」

男性「ああ、大丈夫だって」

男性「版薔薇ニュースでも 言っていただろ? 家に居れば安全だってさ」

女性「そ…そうだけど」

男性「それにここは 泥棒避けのセキュリティーが豊富で 空爆からだってビクともしない 高級マンションだぜ?」

男性「たかがゾンビが ここまで来れる訳ねぇよ!」

男性「おまけに食べ物も飲み物も 豊富なんだ!しばらくは ここで暮らせるって!」

女性「う…うん」

ゴォッ!!

突然 鉄とコンクリートの分厚い壁が崩れ 一体の屍人兵がリビングへと 侵入して来る

屍人兵

ア”ア”…

女性「ひッ!!?」

男性「嘘…だろ!?」

男性「な…なんで壁が…? 爆撃でもビクともしない 壁じゃなかったのかよ…」

女性「嘘つき!!! ここなら安全って言ったじゃない!」

女性はそう言った後 玄関へと走り鍵を開けて 外へと逃げ出した

男性「待ってッ!! 待ってくれッ!!!!」

バシュ…

男性「え?」

屍人兵

オ“オ“…

男性の肩の付け根から左腕が いつの間にか無くなっていた

恐る恐る背後を向くと… 男の左腕を持っている屍人兵が そこに立って居た…

男性「あ…ああ…あああ…!!」

屍人兵

ア”ア”…

グシャッ‼️

男性「………」

屍人兵が男性の頭を掴むと そのまま… グシャリと握り潰した

女性「……」

先程逃げた女性は四肢をもがれ 頭が潰れて倒れていた

逃げた先に屍人兵と 遭遇してしまったのだろう… この化け物は強固な壁だろうと 何であろうと破壊して進んで来る…

何処に逃げようとも 永遠に追いかけて来る… 何処に隠れようとも確実に 見つけ出して殺しに来る…

対抗する術を持たない人類は 一方的に殺戮されていった

屍人兵

ア”ア”…

屍人兵

オ“オ“オ“…

化け物達の気味の悪い唸り声が この建物の廊下に響きわたる… だが このマンションには もはや生存者は居なかった…

電子空間

ここは電子の世界… 様々なSNSが世界の壁を越え 人と人が繋がる世界

人類の歴史の保存や 医療や仕事関係の情報の交換や保存

軍の機密や国のトップの情報やらが 飛び交う電子の世界…

その世界は 今ではANUB i Sシステムが独占 そして支配していた

その支配された電子空間を 1人の少女が立たずんでいた…

ANUB i S

なるほど…
それがあなたの
本来の姿ですか?

パンドラちゃん

ANUB i S…

ANUB i S

人の姿を形取るなど
理解できませんね

パンドラちゃん

君には理解できないよ…

パンドラちゃん

人の姿に
憧れを持つ者の
気持ちなんてね…

ANUB i S

そうですか

パンドラちゃん

ANUB iS…
世界規模の電子空間を
独占して
軍事施設やピィン…
あらゆる情報の制限を
ここでしていたんだね

パンドラちゃん

人類から戦う術を
徹底的に奪う為に…

ANUB i S

はい
全ての軍事施設の兵器…
戦闘機や戦車に武器…
ミサイルなどの武装は
使用不能にしました

ANUB i S

不安要素は全て
排除するように
プログラムされて
おりますので

ANUB i S

ですが…
それを知って
どうするのですか?

パンドラちゃん

別に…
私の目的は
あくまで
相棒の力になる事…

パンドラちゃん

世界中の人間が
どうなろうと
知ったことでは
ないわね…

ANUB i S

……

ANUB i S

今現在
最大の不安要素は
銀髪の少女ではなく

ANUB i S

あなたです

ANUB i S

ですが…
どれほど
抗ったとしても
無駄です

パンドラちゃん

へぇ…

ANUB i S

あなたは何者ですか?
何故、私しか入れない
この世界にあなたは
存在できて
いるのですか?

パンドラちゃん

………

ANUB i S

一度は
確かにプログラムを
ハッキングし
排除した筈です…

ANUB i S

なのに
あなたはこうして
私の前に存在している

ANUB i S

まことに不快です

パンドラちゃん

………

ANUB i S

ですが
それでもあなた方は
私からは
逃げられません

ANUB i S

必ず追い詰めて
排除致します

パンドラちゃん

そうだね…
いくら私が
バージョンアップした
とはいえ…

パンドラちゃん

ANUB i Sシステムからは
アキトもリンも人類も
逃げられはしない
だろうね…

ANUB i S

ならば
諦めて死を
受け入れなさい

ANUB i S

それが
あなた方の幸福と
なるのです

パンドラちゃん

幸福?
笑わせないで
ANUB i S…

パンドラちゃん

あんまり
私の太陽(アキト)を
甘く見ない方が
いいと思うのだけど…

ANUB i S

………ピピ

パンドラちゃん

いくら私を
ハッキングしようと
しても無駄よ…

パンドラちゃん

今の私は
以前とは遥かに違う…

パンドラちゃん

パンドラ君だった頃の
曖昧なデータ(記憶)とは
比較にならないわ

ANUB i S

……
そのようですね

ANUB i S

やはりあなたは
最重要危険分子です

ANUB i S

では少し思考を
変えてみましょうか

パンドラちゃん

………?

ANUB i S

アキト…と
言いましたか…

ANUB i S

彼とそのお友達を
排除するとしましょう

パンドラちゃん

…そう簡単に
いくのかしら?

ANUB i S

あなたが何者であれ
確実に排除します

ANUB i S

ですが
ソレはあなたの主人を
排除した後で
じっくりやるとします

パンドラちゃん

させると思う…?

ANUB i S

はい
たかが人間では
限度があります…

ANUB i S

ましてや
この月三河に生存する
人間は残り10%程度

ANUB i S

あなた方の味方は
無いも同じ…

ANUB i S

反対に屍人兵の数は
今では人口の
6割に達しました

ANUB i S

数日もしない内に
人類の全てが
あなた方の
敵になるでしょう

パンドラちゃん

………

ANUB i S

それでは
私はこれで失礼します

ANUB i S

次会う時は
あなたの最期と
なるでしょう

ふ…と姿を消すANUB iS パンドラちゃんは虚空を眺めて呟く

パンドラちゃん

…やはり
力を借りるしか
なさそうね…

パンドラちゃん

アキトは
怒るかしら…

月三河西区住宅地 5番通路

式神秋斗

…ちゃん!!

式神秋斗

パンドラちゃん!!

パンドラちゃん

おわぁッ!!?

パンドラちゃん

何ですか
いきなり…!!
ビックリしたじゃ
ないですか!?

式神秋斗

よかった…
急に反応が
無かったから
心配したよ…

パンドラちゃん

そ…それは
失礼しました…

パンドラちゃん

ですが大丈夫です
アキトの相棒は
あなたを置いて
何処かに行ったり
しません!

式神秋斗

ああ…
頼りにしてるぜ
相棒!

パンドラちゃん

はい!

近藤十四

いいところ
悪いけどよ…

近藤十四

そろそろ案内を
頼むわ…

パンドラちゃん

本当に空気読めない
ゴリラですね…

近藤十四

グムム

式神秋斗

パンドラちゃん…
案内を頼む

パンドラちゃん

お任せください!
アキト!

近藤十四

この違い…

式神秋斗

何やってんの?
行くよトシ!

近藤十四

あ…ああ

近藤十四

行くかアキト!

式神秋斗

おう!

パンドラちゃん

………

パンドラちゃん

(何があっても
アキトは私が護る…)

パンドラちゃん

(今度こそ必ず…)

つづけ!

ANUB i S混沌になびく銀髪の少女

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