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薄桜鬼次伝

第10話 - ここ(真選組)に居ていい理由

2024年08月09日

#恋愛

#夢小説

#薄桜鬼

マッチョラビット

皆が寝静まった夜

千尋は部屋から出て屯所の道場へ向かう。

道場に着くと、何本も置かれている木刀を手に取る。

千尋は木刀を強く握りしめ、悔しそうな顔で一振する。

すると道場の木の壁に亀裂が入ってしまう。

それに気づく事無く、苛立ちを顕にしたまま木刀を振り続ける。

だが千尋には普通の人とはかけ離れた力を持っているため、木の壁など掛け軸などがパラパラを崩れかけている。

風間千尋

なんで…なんで！なんで！

もう一振しようとした時、後ろから誰かが千尋の手首を掴む。

沖田総(はじめ)

落ち着きなよ。
剣筋が乱れてるよ？

風間千尋

…沖田先輩…なんでここに？

沖田総(はじめ)

ん〜？
特に理由はないかな。
てか、なんでもいいでしょ？
僕が居ちゃいけない理由でもあるの？

風間千尋

い、いえ、別にそんな事は…

沖田総(はじめ)

ついでに言うとさ、
僕が手合わせしてみたかった君は今の君じゃない。
剣筋もまともに整ってない君とやったって面白くないし。

風間千尋

…私は元々これなんです。
私と沖田先輩は違う。

沖田総(はじめ)

君、何当たり前な事言ってる訳？
僕と君が同じとか逆にないでしょ。

風間千尋

……沖田先輩には分かりませんよ。
人間として生きてきた私が鬼だなんて。
そんなの急に言われた私の気持ちなんて皆さんには分かりません。

沖田総(はじめ)

君さ、うざいよね

風間千尋

！！！

千尋が目を見開く

沖田総(はじめ)

自分だけが辛い思いをしている人間だ。とでも言いたいわけ？
被害妄想ってやつ？

風間千尋

そ！そんなんじゃありません！

沖田総(はじめ)

なら、今のままで何がいけないのさ。
普段の生意気な君も、
あの夜、僕を助けた君も君自身だ。
どれも本当の君なんだから。

風間千尋

……どうして皆さん、私を忌み嫌わないんですか？

沖田総(はじめ)

え？なんでって言われても、

風間千尋

だって人間じゃない！
化け物なんですよ！？

千尋は苦しそうに言う。

沖田総(はじめ)

ほんとに？

風間千尋

…え？…

沖田総(はじめ)

ほんとに君は化け物なの？

風間千尋

…ち、違います…
私、化け物なんかじゃ……
ありません……！

千尋は涙を流し言う。

沖田総(はじめ)

なら、君は君のままでいいんじゃない？

風間千尋

…あ、ありがとうございます…

沖田総(はじめ)

ってな訳で手合わせしてくれない？

沖田はケロッとしたように言う

風間千尋

へ？
いや、え？

沖田総(はじめ)

何？してくれないの？
それとも僕に負けるのが怖いとか？

沖田は普段のSっ気な性格で言う。

風間千尋

いや、そうじゃなくて。
話がコロッと変わりすぎて混乱してると言うか、なんと言うか。

沖田総(はじめ)

じゃあ10秒待ってあげるから早くしてね。

風間千尋

え？いや、え？！

2人の会話を道場の影から見ていた、ある3人がコソコソと話している。

藤堂平次

千尋が元気になったのは嬉しいけどさ…

永倉新一

わかるぜ、平次。
その後のあれは、余計だよな。

原田右之助

ははっ、総らしいっちゃ総らしいんだがな。

3人は苦笑いをしながら覗き見している。

その後ろからある人が声をかけてくる。

斎藤肇(はじめ)

こんな所で何をしている。
もう、遅い時間だが。

「「ぎゃぁぁ！」」

斎藤が急に背後から現れたため、平次と新一の2人が驚き叫ぶ。

原田右之助

おー、斎藤じゃねぇか。
ちょうど良い所に来たな。
総の奴が千尋を励ましててよ。
まぁ、千尋が落ち込むきっかけを作っちまったのは俺なんだけどな。

斎藤肇(はじめ)

…そうか。
だが、総は普段はあれだが、気は聞く奴だ。

そう話していると、気がついたのが沖田がこちらへと歩いて来る。

沖田総(はじめ)

あのさぁ、丸聞こえなんだけど。
盗み聞きならもっと静かにやってくれないかなぁ。
てか肇くん、そこの2人、驚きすぎて腰抜かしてるけどどうするの？

沖田は平次と新一を指差しながら言う。

斎藤肇(はじめ)

あぁ、すまなかった。
驚かすつもりはなかったんだが…

斎藤は申し訳なさそうに平次と新一を見下ろして言う。

藤堂平次

い、いや、大丈夫だ！
ちょっとびっくりしただけだしよ！

永倉新一

そうそう！
気にすんなって！

2人はケロッとしたように笑顔で返す。

風間千尋

あ、あの…
皆さん、どうしてここに…？

原田右之助

ん？
あぁ、広間を出たお前の顔を見て心配になってな。
後を付けるような事しちまって悪いな。

風間千尋

あ、いえ！
私の方こそご心配おかけして申し訳ありません。

藤堂平次

千尋が謝ることなんかないって！

永倉新一

そうだぜ、千尋ちゃん。
お前さんはいつもみたいに笑ってくれてりゃいいんだからよぉ！

風間千尋

ｯ……ありがとう、ございます。皆さん…

千尋は泣きそうになりながら礼を言った。

斎藤肇(はじめ)

…心配していたのは俺達だけではない。

斎藤がそういうと先程、広間で話を聞いていた全員が現れる。

土方影歳

ここ(新撰組)にまともな人間なんてハナから居ねぇんだ。
お前が鬼だろうがなんだろうが俺達には関係ねェ。
総の言う通り、お前はお前なんだ。
他にお前がここに存在する理由が必要か？

風間千尋

！！！……
私は、これまで通り皆さんと一緒に居てもいいんでしょうか…

千尋は目尻に涙を浮かべながら問う。

その問いにその場に居た全員が一瞬、ポカンとする。

土方影歳

ﾌﾟｯ…！…ﾊﾊﾊｯ！

風間千尋

え？

なぜ笑ったのかと首を傾げると、他の人達も笑っていた。

風間千尋

あの…！
私、何かおかしな事言いました？

土方影歳

あ？いいや？
ﾊﾊｯ、お前も相変わらず物好きだと思ってな。

風間千尋

え？

沖田総(はじめ)

だっておかしいじゃない。
君、最初の頃、僕たちにいつ殺されてもおかしくなかったし、今だって監視下に居るみたいなもんなんだよ？

原田右之助

なのに一緒に居たいなんて、お前も変わってんな。

皆、笑っている。

風間千尋

だ、ダメなんでしょうか？

近藤生士

ダメとは言っていないさ。
君が良ければこれからも共に我らと居て欲しいと思っているのだから。

近藤さんは優しい笑みを浮かべながら言う。

皆も同じ気持ちだと言うかのように、その場に居た全員が近藤さんと同じ顔をしていた。

伊庭三郎

良かったですね、千尋ちゃん。

伊庭は優しく微笑みながら千尋の隣へ立った。

風間千尋

はい…！
皆さん、改めてありがとうございます！
そして、これからもよろしくお願いします！

千尋は深々と頭を下げた。

その言葉に皆が「おう！」と答えた。

藤堂平次

千尋、困った事があったらいつでも相談してくれていいからな！

永倉新一

俺にも俺にも！

原田右之助

料理の事なら任せな。

斎藤肇(はじめ)

…また暇な時で良いが手合わせも願いたい…

沖田総(はじめ)

あ、僕とも"斬り合い"しよーね。
千尋ちゃん♪

土方影歳

ほら、いつまでも騒いでないでさっさと寝やがれ！
今何時だと思ってんだ！

永倉新一

ゲッ、まぁ〜た土方さんの鬼が出てきやがった〜！

藤堂平次

さっきまでいい感じだったじゃんか！

沖田総(はじめ)

土方さんて、空気読めませんよね、

斎藤肇(はじめ)

……

土方影歳

はぁ！？
総！新一！てめぇら！
文句あんのか！

近藤生士

まぁまぁ、今日くらい良いじゃないか。
なぁ、トシ。

土方影歳

あのなぁ、近藤さん。
こいつらまだまだガキなんだぜ？
ガキが起きてていい時間じゃねぇだろ。

近藤生士

ま、まぁそうだが…

土方影歳

風間を見てみろ。
眠たくて、ウトウトしてんじゃねぇか。
あれが普通だ。
こいつらが異常なんだよ。

風間千尋

ﾊｯ！すみません！
全然大丈夫です！

土方影歳

いや、なんでお前が謝るんだよ。

土方は困ったように小さく笑った。

土方影歳

三郎、風間を部屋まで送ってやれ。

伊庭三郎

はい、もちろんです。
では行きましょうか、千尋ちゃん。

風間千尋

あ、はい。
なんだかすみません。

伊庭三郎

いえ、謝らないでください。

風間千尋

では皆さん、おやすみなさい。
いい夢を。

千尋は皆にそういうと伊庭と一緒に歩いていく。

永倉新一

おー！おやすみィ！

藤堂平次

お前もいい夢見ろよ〜！

平次と新一は手をブンブン振りながら言う。

千尋の部屋へ向かう廊下。

風間千尋

あの、伊庭先輩。

伊庭三郎

どうかしました？

伊庭は千尋の方へ視線を向け返す。

風間千尋

先輩は知っていたんですか？
…その……私が鬼だって事…

伊庭三郎

正直言うと知りませんでした。
でも君が鬼だと分かった時、驚きはしなかったのは事実ですね。

風間千尋

先輩は、き、気持ち悪いとか思わなかったんですか？

伊庭三郎

はい、一度も。
だって君は普通の女の子なんですから。
負った傷がすぐに治る体で人より力が強くたって変わりません。
君はどこにでもいるただの女の子ですよ。

伊庭は優しく微笑みながら言う。

風間千尋

！！！……
あの、伊庭先ぱ、

千尋が以前、どこかであった事があるかと尋ねようとした時。

伊庭三郎

千尋ちゃん、着きましたよ？

風間千尋

あ、そうですね。

伊庭三郎

そういえば、先程何か言いかけました？

風間千尋

あ、いえ！
気にしないでください。
大したことではありませんので。
ここまでありがとうございました。
おやすみなさい。
先輩もいい夢を。

伊庭三郎

ありがとうございます。
君も今夜、いい夢が見られますように。

伊庭は優しく微笑み、千尋が部屋に入るまで見守ってくれた。

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