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いるまが指差した位置
長々と書かれた小難しい文章の下には
とある記号が載っていた
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声が震える
いるま
いるま
いるまも少し上ずった声を発した
静かながら喜びを含む声色
俺達は互いに目を合わせ
別々の方向へと走り出したのだった
そこからの彼らは
とても慌ただしかった
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いるま
彼らは一体
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いるま
何をしようとしているのだろうか
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いるま
いるま
錘(おもり)?あれが?
大量の書物を積み上げ
あちこちに設置している様子のいるまくん
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if
急に名前を呼ばれ
反射的に返事をする
こちらに突っ走ってきたなつくんは
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なんてことを聞いてきた
if
魔紙とは
魔法を書き写すことのできる特殊な紙である
if
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if
なつくんの圧に押された俺は
持っていた魔紙を渡してしまった
その後彼らは
すっかり二人の世界に入ってしまったようで
俺の方を見向きもしなくなった
うん、空気かな?俺
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いるま
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いるま
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いるま
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半径5m程の円の中に
不規則に積み上げられた書物たちが
バランス良く配置されている
何をするのだろう
2人の会話の内容から
おそらくこれで 完成形であることが読み取れるが
これが何を意味するのか
皆目見当もつかない
いるま
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おや、口論か?
いるま
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いるま
怪訝そうないるまくんの顔
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そんな彼に
にこりと微笑み
円の中心になつくんは立った
この直後の彼の行動に 俺は目を疑うこととなる
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if
なんと彼は自分の親指の皮膚を噛み切ったのだ
真っ赤な鮮血が
彼の指から滴り落ちる
だが彼は痛がる様子を一切見せず
魔紙にその血液で何かを描き始めた
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描き終えた彼は
深く息を吐いて
目を閉じる
突如、魔紙が彼の手から飛び立った
そしてそれは
魔法陣の円周をぐるりと回り始める
if
ふと足元を見て驚いた
いつの間にかそこには
淡い光を放つ魔法陣が展開されていたのである
状況に戸惑いつつなつくんに視線を戻すと
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彼は何かを呟いていた
どうやら彼は詠唱の最中のようだ
何を言っているのかまでは分からない
聞き馴染みのない言葉
だがその詠唱は
聞いていてとても心地がよかった
まるで歌っているようで……
頭がぼうっとする
ビカッッッ!!
いきなりの強い光で
俺の閉じかけていた目は再び見開かれた
さっきまで 円周をなぞっているだけだった魔紙が
まるで意思を持ったかのように方向を変え
ある一つの錘(書物が積み上げられたもの) の上で静止し
パリン___
音を立てて弾ける
とても神秘的な光景だった
やがてなつくんの声が止んだ
詠唱の終了を合図に
魔法陣も光を失っていく
いるま
術者の少年は目を開ける
凛々しい彼の横顔は
俺の昔の相棒を彷彿とさせた
俺は待った
すぐにでも彼の元へ駆け出したい衝動を 必死に抑えて
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俺は唾をゴクリと飲む
彼の言ったこと次第で
俺たちの今後の動きが変わってくる
頼む…
俺は心のなかで手を合わせた
いるま
俺はその聞き慣れない魔法名に
首をかしげる
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彼は頷いた
彼はまず、前提から話し始める
彼の話いわく
この世には”指定印“なるものが存在し
建造物1つにつき1個付けることが
法律で定められているらしい
俺たちが日々通っているあの図書館にも
その”指定印“とやらがあるのだとか
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いるま
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いるま
建造物1つにつき指定印1
つまり
同じマークは2つと存在しない
指定印は その建造物の象徴的存在とも言えるのだ
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いるま
俺はホットコーヒーを片手に頷いた
彼の前にも俺と同様のものが置かれているが
彼は一切手を付けず
やけに真剣な眼差しで話しを進める
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指定印から場所を……
俺はハッとして彼を見る
いるま
彼は頷き
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そう断言した
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少しの不安要素を添えて
俺はあの話を聞いた直後
実験施設の指定印が見つかった場合の対処を あらかじめ決めておかないか、と
なつに提案した
話し合いで決定した役振りによると
追跡魔法陣へ魔力を流し込むのは俺の役目だ
魔法を使いたくないという彼の意思を 尊重しての決定である
だが実際に魔力を流したのはなつ自身だ
俺が水魔法で ほとんどの魔力を使い果たしたため
仕方なく変わってくれた可能性も あるにはあるが
俺は
彼の魔法に対する向き合い方に
何か変化があったのではないかと感じている
彼の話に時折出てくる”あの人“という人物
裏切り者とも言っていたか
個人的な考えではあるが
俺はなつに
“あの人”とちゃんと向き合ってほしい と思っている
なつがその人のことを本気で恨んでいるとは
俺には思えなかった
裏切られたことについて 詳しく話されたことは一度もないが
なんとなくそんな気がするのだ
俺たちの最終目標
俺たちが過去に受けた実験の真相を掴むことが
”あの人“と向き合う第一歩になればと
俺は密かに願っている
だから俺は心のなかで手を合わせた
どうか、追跡魔法が成功しますようにと
俺はなつの顔を凝視する
目を開いた彼は
俺に満面の笑みを向けてこう言った
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いるま
安心して力が抜ける
俺はその場に崩れ落ちた
こちらへとゆっくり歩いてきたなつが
俺を抱きしめる
俺も力の入らない腕で彼にしがみついた
三年間の努力が
ようやく実を結んだのだ
嬉しくないわけがない
部屋の外から
かすかに鳥の鳴き声が聞こえる
もう朝か
朝を知らせる鐘の音が鳴り始めた
だがその音は段々と遠ざかっていく
疲れた
if
if
ifさんが何か言ったような気がするが
俺達はその声を聞くことなく
眠りに落ちたのだった
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(つ∀-)オヤスミー