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天才すぎる…
祖母
祖母
祖母
祖母
祖母
祖母
ジリジリリリとけたたましく鳴る、頭もとの目覚まし時計を止める。
小峠華太
強張った体を解(ほぐ)す為に、体を伸ばす。
小峠華太
小峠華太
夢の内容を思い出そうとするも、思い出せない。
ドアをコンコン叩く音に続き、ドアが開く。
和中蒼一郎
小峠華太
蒼一郎さんが部屋に入ってくる。
小峠華太
そのまま、蒼一郎さんはベッドの端に座り、俺の髪に指を通す。
髪を梳(す)かれる気持ち良さに、自然と頬が緩(ゆる)む。
和中蒼一郎
小峠華太
和中蒼一郎
小峠華太
和中蒼一郎
小峠華太
小峠華太
和中蒼一郎
小峠華太
それは、つまり、蒼一郎さんの家族の顔合わせという事か?目茶苦茶、重要な事じゃねぇか!
小峠華太
和中蒼一郎
少しだけ、残念なような気もするが、ほっと胸を撫で下ろす。
和中蒼一郎
小峠華太
和中蒼一郎
昨夜の事を思い出し、恥ずかしくなる。
小峠華太
和中蒼一郎
蒼一郎さんは、部屋を出ていった。
俺はクローゼットから、シャツと黒のデニムを取り出す。
着替えを終え、蒼一郎さんの待つ、ダイニングへと向かった。
何本も電車を乗り継いで、やっと着いた。
斜陽(しゃよう)が降り注(そそ)ぐ、ノスタルジーな田園(でんえん)風景が、俺達を出迎える。
舗装されていない畦道(あぜみち)を、俺は蒼一郎さんの後をついて歩く。
蛙(かわず)と蝉時雨(せみしぐれ)を聞きながら歩く畦道に、どこか懐古(かいこ)を感じる。
しかし、懐古以上に、チリチリと火種が燻(くすぶ)っているかの如く、焦燥感(しょうそうかん)に駆られる。
一歩、また一歩と近づくにつれて、俺の焦燥感は拭えないところまできていいた。
燃えるように赤く染まった山を俺の視界が捉えた、その時だった。
まるで、走馬灯(そうまとう)のように、在(あ)りし日の、祖母との思い出が頭を過(よぎ)る。
祖母
祖母
あれ?そういえば、蒼一郎さんとは、どこで知り合ったんだっけ?
小峠華太
和中蒼一郎
祖母
そうだった。俺の首の痣を見つけた、蒼一郎さんが、駆け寄ってきたんだ。あれ?そういえば、この痣は、どうして出来たんだっけ?生まれた時にはなかったはずだ。
祖母
祖母
小峠華太
記憶を辿り、おばあちゃんが言っていた事をなんとか思い出す。
祖母
右手と左手で狐を作り、向かい合わせる。
祖母
左手の狐を逆さにし、右手の小指と左手の人差し指、左手の小指と右手の人差し指を合わせるようにして、手を組む。
祖母
右手と左手の中指と薬指を開いて、右手の中指と薬指を左手の人差し指の下から通し左手の親指で押さえる。
祖母
祖母
小峠華太
狐の窓から覗いた先に、九本の尻尾、尖った銀糸(ぎんし)の耳を頭から生やした、蒼一郎さんが立っていた。
和中蒼一郎
小峠華太
和中蒼一郎
戸惑う俺を余所に、落ち着き払った蒼一郎さんが、俺へと言霊(ことだま)を発する。
和中蒼一郎
急な睡魔(すいま)に襲われ、そのまま俺は夢の中へ誘(いざな)われる。
その日、一年で最も暑い日だった。
夏の暑さなどに気をとられず、子供の俺達は、外で遊んでいた。
モブA
モブC
モブB
小峠華太
モブC
モブB
モブC
モブA
小峠華太
モブB
モブB
モブA
モブB
モブC
小峠華太
モブB
小峠華太
モブC
俺達は禁忌(きんき)を侵(おか)し、山に入った。
山に入ったのは、初めてだったため、カブトムシを探している間に、皆とはぐれてしまった。
小峠華太
小峠華太
帰り道が分からず、俺は途方に暮れていた。そんな時だった。
突然、炸裂音(さくれつおん)が鳴り響く。
小峠華太
俺は音が聞こえてきた方へと駆け出した。音の正体は分からないが、人がいる事は間違いない。
草木を掻き分けて抜けると、何やら白い物体がそこに倒れていた。
俺はその白い物体に、そっと近づいてみる。
白い物体は、狐だった。ただ狐は手負いのようで、足から血を流し、ぐったりとしている。俺が至近距離まで近づくと、狐は顔をあげた。
狐
狐は俺をみるなり、威嚇してくる。
小峠華太
俺の言葉を理解したのか、狐は唸るのをやめた。
小峠華太
消毒液なんて持ってなかったんで、取り敢えず、ハンカチで足を巻いて、患部の保護をする。
小峠華太
狐
俺は狐を抱えあげた。その時だった。後ろから、何かが近づいてくる気配に気付き、咄嗟に俺は狐を俺の服の中に入れ、その場に座り込む。
小峠華太
すると、薮から散弾銃を構えた男が出てきた。
モブ男
小峠華太
小峠華太
小峠華太
モブ男
十月の神無月(かんなづき)。神様は皆、こぞって、出雲神社に出掛ける。村の人もお狐様の不在の月に、山の手入れの為に入るが、それ以外の月は、誰も入らないのだ。
モブ男
小峠華太
散弾銃から火薬の匂いが漂ってくる。狐を撃ったのは、この男だ。
モブ男
モブ男
小峠華太
俺はこの場を離れる為に、立ち上がった。帰り道は相変わらず、分からないが、狐を逃がす為に、男が出てきた薮へと向かう。
モブ男
モブ男
小峠華太
小峠華太
モブ男
この後、どうやって山を降りたのか覚えてないが、気づけば、山の入り口に立っており、ハンカチと狐は消えていた。
これが、ばあばの言う、狐につままれたというやつだと片付け、日が暮れてきており、俺は家路を急いだ。
小峠華太
おばあちゃんっ子の俺は、誰よりも先に、祖母へと帰宅の挨拶を告げた。
祖母
俺を見た途端、祖母の顔から血の気が引いていく。
祖母
祖母は、俺に近づき、首筋を確認する。
小峠華太
祖母の言っている意味が分からず、祖母が大事にしている鏡台を覗くと、俺の首筋には、曼珠沙華(まんじゅしゃげ)のような、小さな痣が出来ていた。
小峠華太
祖母
祖母の絶叫を聞きつけた両親が、祖母の部屋へと飛び込んできた。
祖母から事情を伝え聞くと、両親も祖母と同様に、顔色をなくす。
話を聞き終えた後、母が涙を流しながら、俺を力強く抱きしめる。
俺は何がなんだか分からないまま、呆然(ぼうぜん)と立ち尽くす。ただ幼心にいけないことをしてしまったのだけは分かった。
今から、祖母と両親で大事な話をするから、俺は部屋にある全ての荷物を詰めるように言われた。
全ての支度を終えると、両親から、引っ越す事を伝えられる。
小峠華太
祖母
祖母
小峠華太
祖母
小峠華太
祖母
祖母
小峠華太
祖母
祖母
小峠華太
俺は両親と祖母に促され、車へと乗り込んだ。
華太の乗った車を見送った、その足で祖母はお狐様のお社へと向かう。
祖母
孫を救いたい一心で、祖母は躊躇(ためら)うことなく、懐刀(ふところがたな)で、自らの頸動脈を掻き切った。
そして、華太が町を出た翌日、 祖母の訃報(ふほう)の報せが届いた。
祖母の葬儀に出たいと華太はせがんでみたが、祖母の遺言により、お通夜から、華太は両親の知り合いに預けられた。
長い夢から目を覚ます。
しとしと雨が滴る境内に俺はいた。
小峠華太
どうしてここにいるのか、思い出そうとするも、記憶に霞(かすみ)がかかったように、あやふやで思い出せない。
小峠華太
寝る前まで着ていた服は見当たらず、俺は何故か、金襴緞子(きんらんどんす)の白無垢を着ている。 (※金襴緞子:華やかで美しく高価な織物のこと)
とおりゃんせ、とおりゃんせ
何処からともなく、子供の歌声が聞こえてくる。
ここはどこの細道じゃ
小峠華太
天神さまの細道じゃ
ちょいと通してくだしゃんせ
御用のないもの通しゃせん
この子の七つのお祝いに、お札を納めに参ります
あれ、この歌詞、変じゃないか? 元々、天神様にお札を納めに来た筈なのに、どうして母親は『どこの細道じゃ』なんて尋ねたんだ?
行きはよいよい、帰りは怖い
怖いながらもとおりゃんせ、とおりゃんせ
それに、行きはよいよいなのに、帰りは怖いってどういうことだ?もと来た道を辿って、帰ればいいはずだ。なのに、なぜ?
祖母
小峠華太
祖母が俺の腕を力強く掴んだ。
祖母
小峠華太
祖母
祖母
小峠華太
あれ?そういえば、おばあちゃんは、十三年前に死んだはずだ。なんで、ここにいるんだ?
祖母
小峠華太
祖母
小峠華太
祖母
和中蒼一郎
小峠華太
突如、黒の袴姿の蒼一郎さんが、立ち塞がるように、俺達の前に現れた。
和中蒼一郎
和中蒼一郎
祖母
和中蒼一郎
和中蒼一郎
蒼一郎は、華太の綿帽子を少し捲る。
祖母
小峠華太
綿帽子から、白い耳がぴこっと飛び出す。
祖母
和中蒼一郎
和中蒼一郎
祖母
和中蒼一郎
小峠華太
祖母
和中蒼一郎
小峠華太
提灯を持つ、狐面をつけた男に先導され、俺達は歩く。俺達が一歩歩くと今度は俺達の後ろに、朱色の長柄(ながえ)傘を持つた狐面の男が続く。
俺達が歩く度にどんどんと増えていき、祝言会場につく頃には、長蛇の列をなしていた。
祝言会場につくと宴(うたげ)が始まり、狐面をつけた者たちが『めでたや、めでたや』『ついに九尾様の元に嫁がきた』と囃(はや)し立てる。
その中で、一人だけ、悲哀にくれた涙を溢す者がいた。
小峠華太
和中蒼一郎
祝言の日に泣いていた者は、俺の世話係りを務めてくれている。
小峠華太
祖母
その者は、俺の祖母だと名乗る。可笑しきかな。人間と狐に血縁関係などある筈がないだろうに。何故、俺の縁者(えんじゃ)と申すのか。
間違いではないかと問い直そうとするも、その者が懇願(こんがん)するように見てくるものだから、俺は問うのをやめた。
小峠華太
ある日、その者に輪廻(りんね)の時が巡ってきた。
終(つい)ぞ、その者が誰かも分からぬまま、その者は、俺のもとを離れ、輪廻していってしまった。
ただ何故か、俺の瞳からは、ホロホロと涙が溢れていた。
俺はなんで泣いているのか
それすらも分からぬまま、涙が止まるまで、俺は涙で頬を濡らし続けた。
おわり
あとがき 曲パロで使用できるものの条件は以下の通りになります。 著作権を持つ人が死んでから、死後70年経過していること。死後70年経過すれば、著作権は消滅ますが、著作権を持つ人が保護期間に、延長申請をしていたら、権利は保護された状態なので、使用すると著作権侵害に抵触します。 なので、童謡系などは、使用できる物も多いです。 『とおりゃんせ』は、江戸時代の関所での母親と門番のやり取りを歌った歌ですが、他に口減らし説などがあります。理由は歌詞にある『七つのお祝いに』の部分です。江戸時代、七歳になるまでに死んでしまう子供が多く『七つまで神のうち』と言われており、 七つまでは、いつ死んでもおかしくないという意味です。 幼い頃、母がこれを間違って覚えていて、七歳になるまでは、代わりに神様に守ってもらって、七歳過ぎたら、人間の子として返してもらうのだと、話を聞いてから『神様は気に入った子供を七歳になるまでに殺して、自分の手元に返そうとする恐ろしい存在』と勘違いしてました。今回、私の勘違いを元に話を作ってみました。 『はないちもんめ』 娘を遊郭に売りたい父親と安く買い叩きたい女衒(ぜげん)の心情を歌っています。 なので『勝って嬉しい花一匁』は、勝敗の勝つではなく、購買の『買う』の、買って嬉しい花一匁。 反対に、父親は安く買い叩かれて、悔しい。値切ることを『まける』って言いますよね。だから『まけて悔しい花一匁』となります。 『かごめかごめ』 降霊術説、遊女説、埋蔵金説など色々な説が提唱されてます。 一番有名なのが、陰謀説(いんぼうせつ)。 陰謀説⇒遺産相続でもめており、産み月が近づいたある日、階段を降りていると何者かによって、後ろから突き落とされた。そして、この場合の『後ろの正面だあれ?』とは『自分を階段から突き落とし、お腹の中の赤ちゃんを殺した犯人はだあれ?』を意味します。分かりやすくいえば、犯人探し。 『ずいずいずっころばし』 茶壺に追われて、どっぴんしゃんの『どっぴんしゃん』は、首チョンパを表します。茶壺に追われて⇒人間よりも、お茶の方が身分が高かった時代があり、茶壺を視界にいれたり、茶壺の横を横切ったら、その場で死刑か、後日死刑になっていました。遊郭での、性的な遊びともされてます。 ホラー系や妖怪系の話に使うなら 『ゆびきりげんまん』『さっちゃん』『てるてる坊主』辺りが、オススメですね。