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雨の日の教室は、水の底みたいだった。 窓ガラスを流れる雨粒。 灰色に滲む校庭。 湿った制服の匂い。 みんな眠そうに授業を受けている。 ぼんやり窓の外を見ていた。 数学教師の声は遠い。 黒板の数字は、 見ていると時々ただの記号に見える。 自分だけ、 世界にちゃんと触れていない感じがした。
教師
名前を呼ばれ,反射的に顔を上げた
教師
黒板を見ても分からない。 教室の空気が少しだけざわつく。 思わず愛想笑いを浮かべた。
はせがわ
はせがわ
クラスが小さく笑う。 教師は呆れた顔をした
教師
僕は座り直す。 その時だった。 教室後ろのドア。 窓ガラス越しに、 誰かが立っていた じっと、 僕だけを見ている。 心臓が跳ねる。 知らない男子生徒。 でも。 なぜか、 “知らない感じ”がしなかった。 目が合った瞬間。 そいつが、 ほんの少し笑った。 ぞっとするくらい静かな笑い方だった。
僕は思わず立ち上がる。 椅子が大きな音を立てる。 クラスが一斉にこっちを見る。
教師
教師が眉をひそめる。
次見た時にはそこに彼はいなかった。
教師
ぼくはゆっくり座った。 喉が妙に乾いていた。
放課後
ぼくは保健室の前に立っていた。 理由は自分でもわからない。 ノックをしても返事はない。 勝手に扉を開ける。
薄暗い保健室。 消毒液の匂い。 古いカーテン。 誰もいない。 僕は少し安心して、 少しだけ残念に思った。
はせがわ
自分に呆れた
かやま
後ろからの声
僕は肩を震わせて振り返った
あの男子生徒が立っていた
そいつは僕を見つめたまま、 ゆっくり瞬きをした。 僕は何を言えばいいか分からなかった
はせがわ
かやま
その名前を聞いた瞬間。 頭の奥が変な痛み方をした。 知らないはずなのに。 胸の奥がざわつく。
はせがわ
かやま
距離が近い。 初対面の距離じゃない。 僕は無意識に後ずさる。 かやまはそれを見て、 少しだけ目を細めた。 傷ついたようにも見えた。
はせがわ
あんな顔をされると、 責められてる気分になる。
かやま
かやまは,僕をじっと見ていた。 観察するみたいに。
かやま
はせがわ
かやま
意味が分からない。 でも。 その言葉だけ、 妙に胸へ沈んだ。 まるで、 本当に昔の僕を知ってるみたいな言い方だった。 僕は視線を逸らす。 窓の外はまだ雨。 校庭には誰もいない。 静かだった。
かやま
はせがわ
かやま
その言い方はすごく不快 僕は昔から、 “普通”って言葉が苦手だった。 ちゃんと笑う。 ちゃんと話す。 ちゃんと友達作る。 全部やってるのに、 時々、 自分だけ人間の真似をしてる気がしたから
かやま
名前を呼ばれる まだ名乗ってないのに
かやま
空気が止まる。 僕はかやまを見る。 かやまは笑っていなかった。 その目だけが、 妙に寂しそうだった。
保健室のドアが開いた。 結は反射的に振り向く。 担任だった。
教師
僕は慌ててかやまの方を見る 誰もいない。
はせがわ
担任が怪訝そうに眉を寄せる。
教師
僕は何も言えなかった
その時。 スマホが震えた。 知らないアカウントからメッセージ。
『また話したい』 添付された画像を開く。 雨の日の写真。 眠っている小学生くらいの僕 その隣で、 こちらを見ているかやま 撮影日は―― 三年前だった。