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写真を、僕は消せなかった。 授業中も、 休み時間も、 家に帰ってからも、 何度も開いてしまう。 画面の中。 眠っている幼い僕。 その隣に座るかやま。 カメラを見ている、 黒くて静かな目。 撮影日は三年前。 ありえない。 結は藍と会った記憶なんてない。 なのに、 写真を見るたび、 胸の奥がじわじわ痛んだ。 思い出しかけてる感覚。 でも、 あと少しのところで逃げていく。
夜23時40分。
ぼくはコンビニの前にいた。 眠れなかった。 だから適当に家を出た。 雨は止んでいたけど、 空気が湿っている。 道路が街灯をぼんやり反射していた。 コンビニ横の縁石へ座る。 車の音。 遠くの信号。 誰かの笑い声。 世界は普通に夜をやっている。 なのに、 自分だけ少しズレてる感じがした。
かやま
声。 僕は反射的に顔を上げる。 心臓が強く跳ねた。 かやまだった。 コンビニの灯りの外。 暗い歩道に立っている。
はせがわ
かやまは首を傾げる。
かやま
当然みたいに言う。 僕は笑いそうになった。 怖いのに。 少し安心してる自分がいた。 かやまは僕の隣に座った。 距離が近い。 肩が触れそうだった。 僕は無意識に少し離れた。 かやまは何も言わない。 ただ、 コンビニの光をぼんやり見ている
はせがわ
かやま
はせがわ
かやま
その言い方で、 家にいるのがあまり好きじゃないと分かった。 沈黙。 でも不思議と気まずくない。 むしろ、 静かなのに落ち着く。 僕はそれが少し嫌だった。
かやま
はせがわ
かやまは答えない。 代わりに僕を見る。 その目。 懐かしいものを見るみたいな、 変な目だった。
かやま
はせがわ
かやま
かやまは笑わない。 冗談っぽくも言わない。 そのせいで余計怖い。 僕は視線を逸らした。 喉が詰まる。 息苦しい。 でも、 逃げたいとは少し違った。
かやま
はせがわ
はせがわ
かやま
はせがわ
初対面だし… そう言おうとしただけど、 僕は口を閉じた。 本当に初対面なんだろうか。 写真。 あの言い方。 頭の奥がまた痛む。
かやま
その言い方は卑怯だった 責めるみたいでも、 縋るみたいでもある。 僕は目を閉じる。 最悪だと思った。 昔から。 誰かに必要とされると、 断れなくなる。
はせがわ
かやまが少し目を丸くする。 それから、 ほんの少しだけ笑った。 初めてちゃんと笑った顔だった。 でも、 その笑顔を見た瞬間。 なぜか結は、 泣きそうになった。
帰り道
二人はほとんど喋らなかった。 湿った夜風。 自販機の白い光。 遠くで電車の音がする。 かやまは僕の半歩後ろを歩いていた。 ついてくる影みたいに。 途中、 古い歩道橋を上がる。 僕が階段へ足をかけた時
かやま
はせがわ
振り返る。 かやまは何でもない顔をしていた。
かやま
はせがわ
かやまは答えない。 ただ、 少しだけ困った顔をした。 その顔が、 妙に胸に引っかかった。
僕の家は古いマンション 親はいない。 母親は夜勤。 父親はいない。 かやまは何も聞かなかった。 それが逆に楽だった。 部屋へ入る。 散らかった教科書。 脱ぎっぱなしの制服。 コンビニの袋。 古いゲーム雑誌。 かやまはゆっくり部屋を見回した。
はせがわ
かやま
僕は眉をひそめた。 意味が分からない。 かやまは勝手に床へ座る。 僕のゲーム機を見つけ
かやま
はせがわ
僕は冷蔵庫から麦茶を出した。 コップを二つ。 かやまは礼も言わず受け取る。 でも、 その自然さが妙に居心地よかった。 最悪だった。
深夜一時過ぎ。 僕はベッドに寝転がる。 かやま当然みたいに隣へ入ってきた。 狭い。 肩が触れる。 体温が近い。
はせがわ
かやま
かやま
はせがわ
かやま
その“うん”が、 否定みたいに聞こえた。 僕は目を閉じた。 眠い。 でも神経だけ起きてる。 隣に誰かいる感覚が、 落ち着かないのに、 少し安心した。 そのまま、 いつの間にか眠っていた。
不意に目を覚ました時。 部屋は暗かった。 デジタル時計だけが光ってる。 午前3時17分。 喉が乾いていた。 僕はぼんやり瞬きをする。 その瞬間。 心臓が止まりかけた。 かやまが起きていた。 すぐ隣で。 暗闇の中、 じっと僕を見ている。 瞬きもせず。 僕は息を飲む。
はせがわ
声が掠れた。 かやまは少し黙ってから言った。
かやま
冗談みたいな言葉。 でも声が静かすぎた。 笑えない。 かやまは暗闇の中で、 僕を見たまま言う。
かやま
意味が分からない。 なのに。 その言葉だけ、 なぜか胸の奥へ沈んだ。 僕は視線を逸らした。 喉が苦しい。
かやま
その声は、 泣きそうに聞こえた。