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うわあ……最初から重い空気がびっしり詰まってたね。えとの「今日は何も起こりませんように」って願いがもう切なくて、みゆのやらかしに振り回される日常がリアルに伝わってきた。のあさんの誕生日会のところ、すごく胸が痛かったよ……。「みゆが行けないなら私も行かない」って選んだえとの強さと、その後の孤独がひしひしと感じられて、私も一緒に泣きそうになった。でも最後に現れた男の子、この出会いがどう転ぶのか、続きがすごく気になるよ。みやさんの筆致、丁寧で好きだなあ。
今日は何も起こりませんように。
朝起きた時、
学校に行く時、
どこかにお出かけする時。
私は願う。
「何かいいことあるといいな。」
なんて贅沢は言わない。
だからどうか、
双子の姉の"るな"が何も、
"やらかしませんようにって"
※1話目からめっちゃ長いです。
新連載「貴方がいたから」 START!
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その日の大学病院は、平日だけど混んでいた。
学校が冬休みに入ったせいか、
病院内に小さい子の姿が多い。
私と手を繋いでいる、 るなの指にきゅっと力がこもる。
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るなは1本調子に言って、 商品の並ぶ棚に手を伸ばした。
選んだのは いつもと同じ小袋に入ったチョコレート。
この病院で診察を受ける日は、
必ず売店に来てチョコレートを 買うのがるなの決まり事。
1度、目当てのチョコが 売り切れてた時は地獄を見た。
もう思い出したくもないけど。
私は店内の時計を見た。
今頃、のあさんたちは 家に集まって、誕生日ケーキを切り分けてるのかな。
ため息をついて
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と横を見たら、
るながいなかった。
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慌てて周りを探すと、
るなは店の奥で手をひらひらさせながら 踊っていた。
チョコレートが あったからご機嫌なのはわかる。
でもここは踊る場所じゃない。
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駆け寄って止めると、
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と言って右向きにくるくる回り始めた。
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すると今度は左に回り出した。
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周りの人から、ちらちらと送られる視線が、
私の肌を引っ掻く。
るなの手を引いて レジで会計をして店の外に出ようとしたとき、
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振り向くと、 入院着を着たおばあさんが にこにこしながら近づいてきた。
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私の横でるなも頷く。
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私はるなにツッコんだ。
早くお会計して、
お母さんのところに 戻らなきゃいけないんだけどな。
双子だと、 こうして声をかけられることがたまにある。
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おばあさんはよっぽど暇だったのか、
それとも聞いてくれる人がいないのか、
私たちと同じ年頃の孫とやらについて ぺらぺら話し始めた。
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私はまたツッコんだ。
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おでこを押さえる私の横で、 るなはまたしても踊った。
そして入口にの近くにあった クリスマスツリーにぶつかった。
ツリーは勢いよく倒れ、
ぶらさがっていた色とりどりの オーナメントボールが、
あっちこっちに飛び跳ねながら散らばっていく。
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願いは届かず。
るなは、今日も盛大にやらかした。
るなは他の子たちと違う。
私がそう気づいたのは るなと私が幼稚園に通うようになってからだった。
幼稚園で出会った子は、みんなよく喋った。
私が話しかけるばかりじゃなくて、
相手も話しかけてくれた。
『何してあそぶ?』
『わたしは砂場でトンネルほりたいな』
『じゃあシャベルかりにいこう』
『うん。そのあと縄跳びもしようね』
『いいよ!』
会話のボールを投げたら、
その度にちゃんと返ってくる。
私はびっくりした。
だって、
もし同じことをるなと話したらこうだ。
『るな、何してあそぶ .ᐣ』
『うん。あそぶ .ᐣ』
『なにしてあそびたい .ᐣ』
『........』
『ねぇ、何がいいの .ᐣ』
『........』
『トンネルほる .ᐣ』
『それとも縄跳び .ᐣ』
『うん』
『うんじゃなくてどっち .ᐣ』
『うん』
『あそぶ、あそぶよー』
と、独り言を言って踊り始める。
他にも、るなは音や光に人一倍弱かった。
遠足で写真を撮る時には、
フラッシュで大泣きしてたし、
歌の時間はピアノの音を嫌がって、
耳を塞いでしゃがんでた。
こだわりも強くて、
頑なに水色のクレヨンしか使わないから、
背景も人も水色の意味不明な絵を描いていた。
お弁当の時間ではみんな箸を使ってるのに、
るなは使えなくていつも フォークか手づかみで食べていた。
ひとつ、ひとつ、
まるで間違い探しのように、
私はるなと他の子たちとの違いを見つけていった。
るなは、あれもできない、これもできない。
『なんで .ᐣ』
ある日、私はお母さんの前で泣いた。
『なんでるなは出来ないことばっかりなの .ᐣ』
『他の子はできるのに...』
『へんだよ』
『るなはへん .ᐟ』
しゃくり上げる私の背中を擦りながら、
お母さんはゆっくり教えてくれた。
『─それはね、』
『るなに障害があるからなんだよ』
『自閉スペクトラム症と 知的障害っていうのがるなにはあるの。』
『だから色々、出来ないことや苦手なことが、 どうしてもあるんだよ』
『私にもショーガイってあるの .ᐣ』
『─ううん。 えとにはなくて、るなだけにあるの』
『双子なのに同じじゃないの .ᐣ』
『そう。同じじゃないの』
『なんで .ᐣ』
『─なんでだろうね。』
『お父さんもお母さんにもわからないの』
『でもるなはこれから色んなことが できるようになるし』
『えと と双子であることには変わりないよ』
『だから2人で仲良くして、』
『るなが困ってたら、』
『えと も助けてくれる .ᐣ』
その時私は障害というものが よくわからなかった。
でも
お母さんの目がすごく真剣で、 大事なことを話してるんだということ、
そして私は何かを託されているということ だけは、わかった。
背中がピリッとして、 自分が少しお姉さんになったような気持ちになって。
よせばいいのに、私は大きく頷いて言った。
『うん .ᐟ』
『わたし、るなと仲良くする .ᐟ』
『困ってたら助ける .ᐟ』
『約束するよ .ᐟ』
『ずーっと、ずーっと、』
『るなと一緒にいるよ .ᐟ』
と。
まるで選手宣誓のように、
わざわざ膝にぴんと手を伸ばして。
売店の人に謝って、
一緒にツリーを元に戻してから、
私はるなの手を引いて お母さんのところに急いだ。
病院の待合室で、
お母さんは私たちに気付くと、 小さく手を挙げた。
𝕄𝕆𝕋ℍ𝔼ℝ
『誰かさんがツリーを倒したからね』
と心の中で言う。
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そう答えてるなは椅子に座り、
お母さんのマフラーについている フリンジで三つ編みを始めた。
みゆは三つ編み魔人だ。
編めそうなものを見ると、
片っ端から三つ編みにしたがる。
小さい時なんかは、
知らない人の髪にも触ろうとして大変だった。
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お母さんの『ありがとう』は、
時々、『ごめんね』に聞こえる。
『なんてことないよっ』って感じで私は頷く。
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待合室の診察順が表示される大きな画面を 見つめて、
お母さんは言った。
今日はるなが診察を受ける日だ。
病院の児童精神科というところに、
るなは通ってる。
今は半年に1回くらいだけど、
小さい頃はもっと多かった。
大学病院だけじゃなくて、
近所の小児科にもよく通っていたし、
他にも色々な場所に行っていた。
市の児童相談所とか、
児童発達支援センターとか。
『るなは「療育」っていうのを受けているの』
『そのために色んな所に行ってるんだよ』
お母さんはそう言った。
療育っていうのは、
簡単に言うと、
るなの成長サポートだ。
それを受けることで、
るなにもできることが増えていくらしい。
療育でるなは、
大人と積み木やボールで遊んだり、
絵を描いたり、 イラストの入ったカードでゲームをしていた。
どれも 『人とコミュニケーションを取るための練習』 だと聞いた。
けれど、小さい頃の私にはるなが 遊んでいるようにしか見えなくて、羨ましかった。
構ってくれる大人がいて、るなはいいなぁって。
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お母さんが私を気遣うように言う。
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と、お母さんの隣で、るなが真似をした。
千円も貰えてラッキー☆ と思いながら私は病院の廊下を歩いた。
ロビーの天井は高くて、 午前中は窓からたっぷり日差しが入ってくる。
そこを通り過ぎて少し進むと、
休憩スペースがある中庭に出られる扉がある。
中庭にはパラパラ人がいて、
私は自販機で、
冷たいココアを買った。
それから、1人で隅っこのベンチに座って、
ココアを1口飲んだ。
のあさんは今、 みんなと楽しく盛り上がってるのかな。
のあさん。
私の1番仲のいい、友達。
5年生で初めて同じクラスになって、
お互い、女子に大人気のアニメの 『ピーチパルフェ』にハマってると知り、
しかも推しキャラも同じで、
色々、話をするようになった。
そして、あっという間に仲良くなったのだ。
そんな日々が、今ではとても遠く思える。
本当なら今頃、私とるなはのあさんの誕生日会に 参加しているはずだった。
バースデーケーキに刺さった ろうそくの火をのあさんが吹き消したら、
拍手をして、
るなと選んだプレゼントを2人で渡す。
そのあとはケーキを食べて、
みんなで『ピーチパルフェ』を 見て盛り上がって。
色々、考えながら約束の日を楽しみにしていた。
でもある日、のあさんは教室で私に言った。
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最初は冗談かと思った。
だってのあさんはるなとも仲が良いし、
私とるなとのあさんの3人で遊んだこともある。
誕生日会だって、
『2人で来てください』って 言ってくれてたのに。
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るなと私は何度か他の子の 誕生日会やクリスマス会に呼ばれたことがあった。
でもその度に、
るなは何かしらトラブルを起こした。
部屋の電気を消されて大泣きしたり、
クラッカーの音でパニックになったり、
出された料理やケーキを『まずい』 と言って吐き出したり、
そういうことが続くうちに 段々るなは誰からも誘われなくなった。
そして私も。
でも、のあさんは、
のあさんだけは違うと思ってたのに...。
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私が黙ると、
のあさんは怒ったように息を吐いた。
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のあさんのおばあちゃん。
のあさんの家で遊んでいたときに、
1度だけ会ったことがある。
私に話しかけてくれて、
お菓子もくれて、
普通の優しそうなおばあちゃんに見えた。
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それにるなは、 決めた予定を変えるのがとても苦手だ。
のあさんの誕生日会に行けないと知ったら、 どれだけ荒れるだろう。
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るなさんみたいな子? ` ` ` ` ` ` ` ` ` ` ` `
私がぽかんとしていると 女子数名が近づいてきた。
みんなのあさんの誕生日会に誘われてる子だ。
𝒞𝓁𝒶𝓈𝓈ℳ𝒶𝓉ℯ
𝒞𝓁𝒶𝓈𝓈ℳ𝒶𝓉ℯ
𝒞𝓁𝒶𝓈𝓈ℳ𝒶𝓉ℯ
𝒞𝓁𝒶𝓈𝓈ℳ𝒶𝓉ℯ
𝒞𝓁𝒶𝓈𝓈ℳ𝒶𝓉ℯ
𝒞𝓁𝒶𝓈𝓈ℳ𝒶𝓉ℯ
みんな、遠慮がちに、
でもはっきりと、
のあさん側に立った。
ここで私がのあさん側に行かなかったら、
仲間はずれにされるかもしれない。
........でも
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じりじりと胸が焼かれるように熱くなって、 私は首を横に振った。
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言いながら、私はすでに後悔していた。
これで私はグループから外されてしまう。
でも、今更後に引けなくて、
私はみんなの輪から外れた。
それきり、のあさんとは1度も話さずに、
二学期は終わった。
病院の中庭で、強くストローを噛む。
私はこうやってひとりぼっちに、
ううん、
るなとふたりぼっちになっちゃうのかな。
やっぱり"普通"の 家の子たちとは分かり合えないのかな。
そんなの、いやだ...
思い出したら涙が滲んで、
目を乱暴に擦っていると、
.ᐣ.ᐣ.ᐣ
と、声をかけられた。
びっくりして思わず握ってしまったパックから びゃっと中身が飛び出す。
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.ᐣ.ᐣ.ᐣ
私に声をかけた男の子はちっとも悪くなさそうに言って、私の横に座った。
この出会いが私の生き方までも変えた。
#ほたる