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朝の5時
ゆあんくん
秒針がカチカチと刻む音だけが、やけに大きく頭に響く
まぶたを閉じれば、昨日のあの光景が、指先の感触が、嫌っていうほどリピートされる
ゆあんくん
自分の右手を見つめる
昨日、あいつの手首を掴んだ時の熱が、まだこびりついている気がして、少し吐き気がした
ガチャ……
ドアが開く小さな音
それだけで、俺の心臓は喉元まで跳ね上がる
うり
そこにいたのは、フードを深く被り、顔を隠すようにうつむいたうりだった
俺と目が合った瞬間、うりの足がピタッと止まる
ゆあんくん
うり
短く、乾いた声
うりは俺と目を合わせた目をそらして、壁際を伝うようにしてキッチンへ向かう
今の二人には、刺すような沈黙しかない
カチャ、とコップを置く小さな音が、静かなリビングに響く
ゆあんくん
ゆあんくん
うり
背中を向けたまま、うりがぽつりと呟く
蛇口から流れる水の音さえ、今の俺にはうるさく感じる
うり
うり
ゆあんくん
うり
うりが、ゆっくりと顔を上げる
フードの隙間から覗く瞳は、怒っているというより、ひどく困惑して、迷子みたいに揺れていた
うり
うり
ゆあんくん
うり
うり
うり
うりは自分に言い聞かせるように呟いて、ぎゅっとコップを握りしめる
その指先が、白くなるほど力が入っているのを、俺は見逃さなかった
うり
うり
うり
そう言って、うりは水を一口も飲まずに、逃げるように部屋へ戻っていく
バタン、と閉められたドアの音が、いつまでも耳の奥で鳴り止まない
ゆあんくん
ポツンとテーブルに残された、一口も付けられていないコップ
ゆあんくん
うりの言葉が、頭の中で何度も、冷たくリフレインする
ゆあんくん
ゆあんくん
胸の奥が、雑巾を絞るみたいに、ぐちゃぐちゃに痛い。
ファンでいられたら、それでよかったはずなのに。
今はもう、あの時の「尊い」が、どんな色だったのかさえ思い出せなかった
コメント
1件
神作ですわね