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筆箱

第1話 - 筆箱

2020年04月29日

#殺人

睡眠がすべて

龍也

あの。

凛

はい？

龍也

これ、落としたぞ。

凛

あ、ありがとうございます！

凛

(イ、イケメンだ〜！)

凛

(目の保養にいいな〜…。)

龍也

それじゃあ。

凛

あ！あの！！

龍也

ん？

凛

名前、教えていただけませんか？

凛

後日、お礼がしたいので。

龍也

いいよ、べつに。

凛

でも！

龍也

いいって。

凛

あっ！

凛

そうですよね！私ったら名乗らずに名前を聞くだなんて！

龍也

は？

龍也

いや、そういう問題じゃ……。

凛

私は凛、宮城凛(みやぎりん)です！

龍也

…俺は凪龍也(なぎりゅうや)。

凛

龍也さんですね。

凛

ありがとうございます！

凛

明日もここを通りますか？

龍也

え？あ、あぁ。

凛

明日、お礼をさせてください！

龍也

だからいいって言って……。

凛

じゃあ！

凛

ありがとうございました！

龍也

ちょ、おい！

龍也

はぁ。

龍也

めんどくせ〜。

龍也

まぁ、いいや。

手間がはぶけた。

凛

でね！

凛

イケメンに筆箱拾ってもらっちゃったの！

沙耶

へ〜

凛

反応薄くない？！

凛

もっとこう……

凛

「いいな〜」とか「羨ましい〜」って反応はないの？

沙耶

ないね

沙耶

私は3次元に興味はないの

凛

相変わらず沙耶(さや)は2次元オタクだね

沙耶

ちょっと！

沙耶

「オタク」じゃない！
ヲ・タ・ク！

凛

ゴメンゴメン

沙耶

間違えないでよ！

凛

はいはい

沙耶

んで？拾ってもらって、どうしたの？

凛

あ、そうそう！

凛

名前聞いて、明日お礼しよかなと

沙耶

お礼ってなにすんの？

凛

それを沙耶に聞いてんじゃん

沙耶

は？やだメンドイ

凛

だって〜！私じゃ何もいいアイディアが浮かばないんだもん

沙耶

何で私なのよ

凛

沙耶が一番頼れるから

沙耶

凛

沙耶？

沙耶

まったく

沙耶

可愛すぎてフリーズしてたわ

凛

誤字ってるよw

沙耶

は？誤字ってなんかないわよ

凛

「可愛い」って

沙耶

本心よ

凛

え？

凛

私可愛い発言なんかしてないとおもうけど？

沙耶

まぁいいわ

沙耶

それよりお礼でしょ？

凛

何がいいかな？

沙耶

無難にお菓子とか

凛

あの人の好物じゃなかったらどうしよう、って思うと気がすすまない……。

沙耶

そうね……

沙耶

じゃあ、時間があるんだったらお茶にでも誘ったら？

凛

あ、それがいいね

凛

時間がなかったら、ある時にもっかい誘えばいいもんね

沙耶

うん、そうしたら？

凛

ありがとう、沙耶！

沙耶

どういたしまして

沙耶

もう遅いし寝るわ

凛

うん、おやすみ

沙耶

おやすみ

凛

昨日会った時間より30分前に来てしまった……。

凛

まぁでも、待っていれば通りかかるよね。

凛

1時間待って通りかからなかったら諦めよう。

ー30分後ー

龍也

あ、昨日の子。

凛

あ！

龍也

えっと…、凛ちゃん…だったっけ？

凛

！

凛

覚えていてくださったんですね！

龍也

うん、勿論覚えていたよ。

龍也

だって

龍也

凛

え？すいません、聞き取れなくて。

凛

今なんて言いました？

龍也

なんでもないよ。印象に残っていたから。

凛

そうなんですね。

凛

あの、今、お時間大丈夫でしょうか？

龍也

え？うん。今から帰るところだから大丈夫だよ。

凛

よかった。

凛

あの、昨日のお礼として、お茶していきませんか？

凛

私が奢るので。

龍也

え？いやいや、大丈夫だよ。

凛

でも！

龍也

いや、君高校生でしょ？

龍也

だから気持ちだけで十分だよ。

凛

………。

龍也

あ、だったらちょっと付いてきてくれる？

凛

え？

龍也

僕さ、写真関係の仕事をしてるんだけどうまくいかなくてね。

龍也

でも、凛ちゃんならうまくいくと思うんだ。

凛

そんなことでいいなら、ぜひ！

龍也

本当に？

凛

はい！

龍也

ありがとう。

龍也

じゃあ、付いてきてくれる？

凛

はい！

龍也

ふふっ。

よかった

凛

あの、ここは？

龍也

ん？俺の家。

凛

龍也さんの…家。

龍也

そう。ここで写真を撮りたいんだ。

凛

どんな写真を撮るんですか？

龍也

それはね……

君の死んでゆく過程

龍也

！

凛

って、言おうとしてました？

龍也

なんで？

凛

だって

沙耶を2年前に殺したのは貴方だから

龍也

！

凛

2年前、筆箱を落とした沙耶はとある男に拾ってもらった。

凛

そしてその男と付き合うことになった沙耶は数日後行方不明になった。

凛

私は沙耶の行方を追った。

凛

そしたら裏社会に沙耶の死んでゆくまでを写真・ビデオに撮ったものが出回っていた。

凛

そしてようやく掴んだ。

凛

お前を。

龍也

凛

沙耶との最後のLINEのやり取りは、

凛

「あの人にお礼をしたい」「何がいいかな？」というものだった。

龍也

だから？

凛

は？

龍也

だからなんだよ。

龍也

仕事をして何が悪い！

龍也

俺の仕事は可愛い女の子の死に様を撮ることだ！

龍也

仕事をして何が悪い！

凛

腐ってやがる。

龍也

あぁ、凛ちゃん、可愛い女の子がそんな汚いこと言っちゃダメだよ。

凛

は？お前を見つけるために猫かぶってたんだよ。

龍也

へ〜、そうなんだ。残念だなぁ〜。

龍也

もっと女の子らしくなきゃ。

凛

そんなに余裕ぶっこいてていいのか？

龍也

何が？

凛

私は沙耶の仇を打ちに来た。物理的にも、法的にも。

凛

敵が目の前にいるのに余裕だな。

龍也

俺の目の前にいるのは敵じゃないから。

凛

は？

大事な商品だよ

凛

！

龍也

油断してたのはどっちかな？

凛

〜っ！
てめぇ！

龍也

あはっ！

龍也

やっぱいいねぇ、女の子の苦しむ顔は最高だよ。

龍也

ねぇ、刺されるのはどんな気分？

凛

はっ！私が刺されようとも、お前の罪は暴かれる！

龍也

あ〜、途中から俺たちのことつけてたヤツ？

凛

！

龍也

凛ちゃんの協力者なんだろうけど、

龍也

彼は敷地内に入ってからはもう、

生きていないよ？

凛

！

龍也

俺の協力者の手によって始末されてるだろうね。

凛

そ、んな……。

龍也

あっは！その顔！いいねぇ。高く売れるよ？

凛

龍也

この一部始終は録画してるからね。いい感じだよ。

凛

(沙耶、ごめん。
でも、今からいくよ。
沙耶が味わったであろう痛みを私も感じて。)

龍也

凛ちゃん、

もっと、楽しませてね？

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