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芝音の仮眠室

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芝音の仮眠室

1 - 2人とも、1人ぼっち【らだぺん】【呪鬼2】

♥

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2022年02月24日

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その日見たそいつの姿は、吸い込まれるほど綺麗だった。

ガタイのいい体型に、深い青。

背景の夕日が美しく照らされ、俺の目を魅了した。

天乃 絵斗

……らだぁ

ゆっくり振り向いた彼には血が着いている。

それは彼の血でないことも知っている。

猿山 らだ男

あ、…あ、天……乃……?

動揺している。

そりゃそうだ、ここは鳥居の中なのだから。

要するに忘れられるものの世界、

要するにタヒんだものの世界。

猿山 らだ男

なんで…なんでいるんだよここに!

初めて見た、お前のそんな顔。

会えて嬉しい気持ちと、苦しい気持ちがグチャグチャに絡み合っているのだろう。

がっつきに来る勢いでお前は泣いていた。

猿山 らだ男

馬鹿野郎…馬鹿野郎!

猿山 らだ男

お前、なんでっ!

猿山 らだ男

俺の望んだ結果じゃないっ!

生きていて欲しかった。

俺のことは忘れていて欲しかった。

もうこんなことが1度も起きないように。

俺で最後にするように。

そう願ってきたのに、

もう諦めていたのに。

俺は天乃の胸ぐらを掴んで泣いていた。

天乃 絵斗

……らだぁ…?

猿山 らだ男

俺で…俺で最後に…

猿山 らだ男

忘れろ…忘れろよ…

猿山 らだ男

もう…誰も、誰にも…

天乃 絵斗

……呂戊汰たちが言うんだ

猿山 らだ男

…は?

天乃 絵斗

お前じゃないと嫌なんだってさ。

猿山 らだ男

なにが…

天乃 絵斗

アイツらの先生は、らだ、お前だけなんだよ。

天乃 絵斗

俺がどんなに忘れたフリしたって、アイツらは騙せなかった

天乃 絵斗

いつも泣いてんだ、『猿はどこいったんだ』って『アイツが居ないとおもろない』って。

天乃 絵斗

見てられなかったんだよ…

猿山 らだ男

だからって…なんでっ

天乃 絵斗

ここの七不思議は、なんでも一つ願いを叶えてくれる

猿山 らだ男

お前…もしかして…

天乃 絵斗

但し1人と引き換えに…

猿山 らだ男

やめろ…やめろっ!

掴んでいた手にそっと触れられる。

温かみが伝わってくる。

猿山 らだ男

お前…やだ、やだっ!

猿山 らだ男

嫌なんだよ!なんで…お前が犠牲になることなんてねぇだろ!

天乃 絵斗

なるしかないんだよ。

猿山 らだ男

じゃぁ呂戊汰はっ!

天乃 絵斗

俺は忘れられるから

猿山 らだ男

…忘れ…?

天乃 絵斗

…俺が同時に願うから。

天乃 絵斗

猿山 らだ男を生き返らせる。そして、俺を忘れてもらう

猿山 らだ男

そんなこと、俺が許すわk──

天乃 絵斗

でも、願うのは俺だ。

天乃 絵斗

俺が押し通せば、らだの思いすら届かないよ。

天乃 絵斗

忘れてもらう

猿山 らだ男

やだ…

天乃 絵斗

お願い…

猿山 らだ男

っ……

なんで…なんで…?

答えのない疑問が俺の頭を狂わせる。

頬を暖かいものが伝って止まらない。

涙なんてとっくの昔に忘れてしまったはずなのに。

猿山 らだ男

忘れたくない…忘れたくないよ…!

天乃 絵斗

うん…

猿山 らだ男

家計に縛られて、もう笑えなくなって、

猿山 らだ男

何度も何度も何度も何度も!

猿山 らだ男

お前らを…大切な生徒を…大好きな友達を…〇したのに…

天乃 絵斗

うん…

猿山 らだ男

俺が許されるわけねぇんだよ…!

猿山 らだ男

元の世界で、どうやって生きてけばいいんだよ!

猿山 らだ男

やだ…消えないでくれ…

猿山 らだ男

俺願いだ…俺を忘れてくれ…
もうここに戻ってくることは無いように…

猿山 らだ男

アイツらと…笑ってて欲しいんだよ…

天乃 絵斗

……それは難しいかな

お前は笑っていた。

昔の子供っぽさは無くて、何かを決心していた。

でも、手は震えている。

お前だって…怖いんじゃないか…

笑顔…それは俺が…お前に羨ましいって思った、第1のこと。

それを奪いたくはないんだ

猿山 らだ男

笑うなよ…こんな時になってまで…

天乃 絵斗

だめ…かな…?

猿山 らだ男

……

何も言わなくなって、ひと時の無言が続いた。

天乃 絵斗

……あのね、無いわけじゃないんだよ…?僕を助ける方法…

猿山 らだ男

っ!じゃぁそれは!

天乃 絵斗

でもね…無理なんだよ

嗚呼、そうか。

お前の願いは俺を助けて忘れさせること。

助ける方法は、もう一度鳥居で願うこと。

でも、忘れてしまえばそれは…

猿山 らだ男

っ……ウッ…

静かに涙が落ちていく。

そんな俺を撫でてくれるお前は、優しく暖かかった。

忘れたくない、忘れたくないよ…!

天乃 絵斗

……そろそろ時間かも。
最後に、僕からお願い事があるんだ。

天乃 絵斗

………今できる限りでいい。
笑って、俺の名前をよんで欲しい。

天乃 絵斗

らだ、お前が忘れても、僕は絶対忘れない…

正義感の強いお前だから信用出来るその言葉。

俺はぎこちない口角を上げて、お前を見つめた。

猿山 らだ男

………ごめんな……ごめん……

猿山 らだ男

『天乃……絵斗…』!

お前は、満足そうに笑った後、俺の事を押した。

驚く俺に向けた言葉、聞こえはしなかったが口だけが見えた。

彼は、笑って…

天乃 絵斗

『────』

あれ、せんせー?

こんな所でなにしてんのや?

猿山 らだ男

…あ、え、…

猿山 らだ男

ここって…

何いってん…どっか頭打ったんか?

大丈夫…?

猿山 らだ男

あー、うん、大丈夫…

あ!そーや、呂戊汰のやつ、兄ちゃん探してんだとよ。

猿山 らだ男

え?兄ちゃん…?

聞いたことないか?

猿山 らだ男

聞いたことないなー…
だって呂戊汰は──

猿山 らだ男

『一人っ子』でしょ?

やっぱそーやんな…

頭が少し痛む。

何でだろ…涙が溢れて止まらなかった。

\キ-ンコ-ンカ-ンコ-ン/

……みんなー、帰る時間だよ

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コメント

8

ユーザー

ブクマ失礼します(´;ω;`)ウッ…(感動してる人)

ユーザー

この連載の名前....センスありすぎです...

ユーザー

めちゃくちゃいい話…

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