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一葉
思っていたよりも早く日が沈んでしまい、辺りは薄暗い。 私は足早に住宅街を歩く。
一葉
一葉
きっと大丈夫。 きっと楽しく学校生活が送れる。
両親にも心配はかけたくないし。 少しずつ前に進んでいこう。
一葉
そう、小さく呟いた時だった。
コトン____
小さく何かの落ちる音がした。
ここは住宅街。 何か物音がしてもなんら おかしいことは無い。
それでも、小さな音のはずなのにしっかりと耳に響いたそれにほんの少し違和感をおぼえる。
辺りがやけに静か過ぎる。
コトン____
また、何かの落ちる音。
先程よりも少し大きいその音は、なんだか私に近付いてきているようだった。
辺りを見回してみる。 しかし、特に音がなりそうなものは何も見当たらない。
一葉
ふっ…と息をはいて1歩踏み出す。
コトン____
何かが視界の端をかすめた。
とっさにそちらに視線をやる。
街灯に照らされたアスファルトの上にポツリと何かが転がっていた。
一葉
ポツリと転がる”何か”。
良く見えないがこの”何か”が先程からの音の正体なのだろうか。 それならばさっさと正体を知ってしまおうと”何か”近づいてしゃがみこむ。
一葉
落ちていたのはよく見かけるただの上履きだった。 なんだ…正体がわかり安心しかけるが、おや…と首をかしげた。
一葉
一葉
じわじわと気味悪さが背中を這い上がってくる。
一葉
恐怖を振り切るように立ち上がった時だった。
「ねぇ、待ってよ」
耳元で誰かが囁いた。
聞き覚えのある声だった。
ぞわりと肌が粟立つ。
その場に張り付けられたかのように動けなくなってしまった私は浅く呼吸を繰り返すことしかできなかった。
嘘だ、ありえない。 きっと疲れてるんだ。だから…
一葉
ドシャッ____
何が叩きつけられて潰れるような音とともに、先程と比べものにならない大きな影が私の目の前に降ってきた。
見てはいけない…そう警告している脳とは裏腹に、反射的に視線が下へと落ちる。
最初に認識出来たものは人間の手とアスファルトに飛び散る赤。
手から腕をたどってゆっくりと視線が移動してゆく。
そして私は理解してしまった。
血溜まりのなかで横たわる人間だったもの。
1年前の夏、 自ら命を絶ったあの子だった。
一葉
歯の根が合わないほどの恐怖。 尋常ではない程の汗が吹き出し頬を伝う。
これは何?これは夢?
見たくないのに、目が離せない。
一葉
一葉
一葉
逃げなければ。 脳ではわかっているが、身体が動かない。 呼吸も上手くできず、頭がクラクラした。
やっぱり、私は許してもらえない。
無力な私は。
???
凛とした声が響いた。
それと同時に私の視界が遮断される。 ふらりとよろける私の身体を温かい何かが支えた。
???
一葉
優しい声と温度。
私の意識はそこで途絶えた。
???
???