月初兎
ちょいと旦那
月初兎
この子この月初兎が引き取らせてもらうよ
灰燼
えっ…?
今日も明日もずっとここにいると思っていた
ここは魔界で時は魔和時代
この世界で言う平安時代だ
灰燼は見世物小屋にいた
親に忌み子だと言われてここに連れてこられたのだ
旦那
あんたは月初兎さんじゃあねえか
旦那
なんでこいつを選ぶのさ?
月初兎
そんなのあたいの勝手だろう
月初兎
この子いくらだい?
旦那
こんなのただの忌み子だぞ?
旦那
タダだよ
月初兎
………へぇ、こんなすごいやつがタダっていうのかい
旦那
すごくなんかねえさ
旦那
これはなんの取り柄もねぇ、ただの飯食いだけの忌み子さ
月初兎
じゃあなんで見世物小屋にいるのさ
月初兎
ただの忌み子なんだろう?
月初兎
ここにいる意味なんてないじゃないか
旦那
こいつぁ、ちょいと特殊でねえ
旦那
他の魔物にはねぇ特別な力がある
旦那
こいつならあの不動明王も倒せるかもしんねえなあと親が言ってたんだと
月初兎
へえ…面白いねえ
今から約100年前
魔界の王は無聊桃源だった
だが不動明王が無聊桃源を監禁し、不動明王が魔界の王に君臨した
無聊桃源は魔物たちに信仰されていた
だから不動明王が魔界の王に君臨したのを魔物たちはよく思っていなかった
月初兎
余計に引き取りたくなってきたよ
月初兎
じゃあタダで引き取らせてもらうよ
月初兎
ありがとね旦那
灰燼
えっ…あの…
旦那
よかったなあ灰燼
旦那
この月初兎さんに引き取らせてもらえるんだから
月初兎
へえあんた灰燼っていうのかい
灰燼
はっ、はい…
灰燼
あなたは…
月初兎
あたしゃ月初兎っていうのさ
月初兎
よろしくね
灰燼
はっ、はい…
月初兎
敬語はいらないよ
灰燼
あの…食べたり…しないんですか
月初兎
はははwww別に取って食おうなんてするはずないじゃないか
月初兎
せめて非常食だよ
灰燼
ひっ…!?
月初兎
安心しな、冗談だよ
月初兎
頭を使いな頭を
灰燼
はっ……うん…
月初兎
そうさ、それでいいんだよ
月初兎
そうそうあたいの名前は月初兎だろう?
月初兎
でもあたいのことはよく知らないだろ?
灰燼
うん…
灰燼
ずっと、見世物小屋にいたから
月初兎
ふふ
月初兎
旦那!ちょっとでいいからあたい、月初兎のことを教えてやっとくれ
旦那
あいよ
旦那
この月初兎さんはなあ、あの不動明王を倒せるんじゃないかと候補があがっている内の一人、そして滅隊だ
旦那
分かるか?
灰燼
………?
旦那
不動明王はあの無聊桃源様を監禁したとても強え奴だ
旦那
簡単に倒せるはずねえだろ?
灰燼
……はい
旦那
だから滅隊…正式名称は【calamita distruggere】というんだよ
灰燼
そう…なんですね
灰燼
英語…ですか?
旦那
んなの聞いてどうすんだ馬鹿野郎
灰燼
すっすみません…
月初兎
旦那!そろそろいいかい?
月初兎
あたいは時間がまずくてねえ
旦那
そいつぁ申し訳ねぇ
旦那
ほら、持っていきな
あと説明書
あと説明書
月初兎
説明書ぉ?何いってんだい
旦那
言っただろう?こいつはちょいと特殊だって
月初兎
あぁ…そんなにヤバいのかい
旦那
そんなにヤバいんだよ
旦那
だから説明書がついてるんじゃないか
月初兎
あいよ…ありがとね
月初兎
ほら灰燼行くよ
灰燼
うん…!