葵波翠璃
お早うございます
有給消化をして出勤した今日。
先日の事をナオミちゃんに 相談した手前、
乱歩さんと顔を合わせるのを 勝手に気まずく感じながらも、
事務所の扉を開いた。
すると、1番奥の何時もの 席から立ち上がった乱歩さんが、
小走りで駆け寄ってきた。
其の予想外の行動に 少し身構える。
葵波翠璃
?、如何しました?
江戸川乱歩
其の…一昨日はごめん
斜め下を向きながら ポツリと云う乱歩さん。
江戸川乱歩
これ、
そう手を差し出され 私も手を出すと、
渡されたのはポップな柄の 包装紙に包まれたキャンディ。
葵波翠璃
これ…乱歩さんが好きなキャンディ…
これは…私に くれるという事だろうか。
葵波翠璃
貰っちゃって良いんですか?
恐る恐る聞く。
江戸川乱歩
良いからあげてるんでしょ
口を尖らせながら そっぽを向く乱歩さん。
彼の耳は何故か ほんのり赤かった。
葵波翠璃
ふふ、
乱歩さんの素直な一面を見て、
思わず笑みがこぼれる。
葵波翠璃
ありがとうございます
私は微笑んで そうお礼を口にした。
少し、 ほんの少しだけだけど、
乱歩さんとの心の距離が 近付いた気がした。