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お久し振りです、順調に拝読再開しました! 誰が一番レミちゃんに知識を与えられるかでクロトたちが賭けをしてるの笑ってしまいました(*´∀`) 続きも拝読してきます!
これは、私が異世界ランドールで生きていくと決めた次の日のこと。
クロトは突然何の前触れもなく、ドサっと大量の本を私の前に置いた。
……わ、訳が分からない。
レミ
クロト
今、何か不穏な単語が聞こえた気が……。
…………え? きょ、教科書……?
背筋がゾクッとした。
「今から、勉強を始めます」って、クロト言いそう……。 ふ、不安しかない。
チラッとクロトを見ると、彼は目をパチクリとさせ、徐に顔を綻ばせた。
うわ、楽しそう。性格悪い……。
満面の笑みで彼が告げた言葉は、私が予見していた言葉で。
クロト
うん。予想してたからそんなに驚きはしなかったけど……。
なんで、なんでおべんきょうなの?? 私ミティフス学園通ったよ? 勉強のターンはもうおしまいなんじゃないの⁇⁇
内心の悲壮さが顔に現れていたからか、クロトは「勉強と言っても、この世界での一般常識と魔法の応用力を身に付けてもらうだけだ」と慌ててフォローを入れた。何もフォローにはなってないが。
一般常識って、一体どのくらいあるのだろう。想像しただけで気が重くなる。
こうして、長い地獄が始まってしまったのだった。
『一般教養』をクロト一人で教えるのには無理があるらしく、私は彼とユリちゃんとラン君三人に教えを乞うていた。
とはいえ、三対一で私に指導をするわけではない。
クロトは魔法の実践的な応用の仕方を、ユリちゃんは歴史を、ラン君は地理を……といったように三人で分担し、日替わりで教えてくれている。
クロト
クロト
レミ
レミ
クロト
クロト
レミ
クロト
クロト
レミ
クロト
クロト
未確認生物を見るような目で私を見ないで……お願いだから……。
誰だって、一ヶ月以上前から見てない物質より昨日食べた物の方がイメージしやすいの!
時々ギャーギャーと言い合ったりもするけれど、クロトは終始私に合わせて教えてくれていた。
私に甘いんだか甘くないんだか、いまだによく分からない。
ユリ
ユリ
レミ
ユリ
ユリ
レミ
九つでも、私覚えるのに苦労したんだけど……?
途轍もなく嫌な予感がして、私は数歩後退った。
ユリちゃんの瞳は、いつも無表情な彼女のものだとは思えないくらいキラキラと輝いている。
彼女は声を弾ませ、私に一歩ずつ詰め寄った。
ユリ
ユリ
ユリ
ユリ
ユリ
ユリ
ユリちゃんはグッと拳を天へと突き出した。
ユリ
ユリ
レミ
目を泳がせながら、私も天に拳を突き出して、掛け声を上げる。
もう、実は私歴史が一番苦手なんだよね、なんて言い出せなくなってしまった。
頑張らないといけないと息巻いた私は、しかし知らない単語で溢れかえっている教科書一ページ目を見て撃沈することになったのだった。
ラン
ラン
ラン
ラン
ラン
じっとラン君に見上げられ、私はすっと目を逸らした。
イルシス王女の元で働いていたって言っても、仕事のことであの時は手一杯だったし……なんていうのは言い訳に過ぎないよねぇ……。
レミ
ラン
ラン
レミ
乾いた笑い声を上げ、この居た堪れない空気を誤魔化そうと頑張る私。
ラン君、そんな憐憫の情を瞳に浮かべて私のことを見ないで……お願いだから……。
ラン
レミ
ラン
レミ
ラン
ラン
何がどう大丈夫なのぉぉぉ⁉︎
そんな私の心の叫びなど意に介さず、ラン君は拳を握りしめ、私を見上げる。
ラン
レミ
目をキラキラさせているところがユリちゃんにそっくりで、やっぱり兄妹なんだなぁって現実逃避をしながら、私は分厚い教科書のページを開く。
隣にラン君が座って、私と一緒に教科書を覗き込みながら語句の詳しい説明や、その事項に関連した雑学を教えてくれた。
レミ
レミ
レミ
ラン
レミ
……もう何も言うまい。
ユリ
レミ
ユリ
レミ
ラン
レミ
クロト
レミ
レミ
レミ
クロト
レミ
私はホッと胸を撫で下ろした。
やっと確認テスト合格だ……。
確認テストに合格するまでに────。
レミ
カレンダーを見て思わず声が漏れた。
確認テストに合格するまでに、一年くらいかかってる……!
随分長い時間が掛かってしまったなと思ったけれど、見方を変えればたったの一年でこの世界の一般常識は知り尽くしたということになる。
あれ、私、もしかして凄いのでは……?
……まあ実際は、生徒側じゃなくて教師側の熱意が凄かったからだろうけど。
私はちらりとクロト、ユリちゃん、ラン君の方を見る。
つきっきりで私に様々なことを教えてくれた三人は今、誰が賭けで勝ったのか言い争っているようだった。
……うん。折角持っていた感謝と尊敬の念が薄らいだ。
この人達は偉大なんかじゃなくて、ただの変な人達だ。
本当にまったくもう。解散解散。
小さく笑みと溜息を溢し、自分の部屋に戻ろうとしたその時、コンコンとリビングから廊下に繋がる扉がノックされる音が聞こえた。
誰だろう。お客さんだろうか。
そこまで呑気に考えてから私は、ここが空の上だと思い出した。
お客さんなんて、いるわけ、ない。
……私の空耳?
ごくりと唾を飲み込み、恐る恐るドアへと近づく。
……幽霊とかだったらどうしよう。魔法効くかな?
魔法の発動準備をしながら、私がドアノブに手をかけたその瞬間、赤橙の髪をした女性がバァンと勢いよくドアを開けた。
固まる一同。深呼吸する女性。
私たちを見渡して、女性はその顔に笑顔を浮かべながら大仰な身振り手振りで話し出す。
?
?
?
?
?
女性はどこからともなく現れた濃紫の髪の男性に、口を塞がれてもごもごと抗議をしていた。
…………うん?? ちょっと待って。結構待って。
急展開すぎて状況がうまく飲み込めないけど、つまり、この方達は不法侵入してきた不審者ということで……いい、のかな……?
警察は呼んだら不味い。私達も捕まっちゃう。
レミ
クロト
レミ
再度名前を呼んだけれど、クロトの反応はない。
彼は目を大きく見開いて、不法侵入した男女二人を凝視している。
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不審者(男性)と口論を繰り広げていた不審者(女性)は、くるりとこちらへ向き直り、眉を吊り上げてビッとクロトを指差した。
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