この時僕たちは生まれた
キノ
え?僕が二人?
キノ
そんなことあるのか
キノ
まぁ、こっちの方が自由だけど
キノ
????
キノ
魂二つは一つの器に収まらないのか?
キノ
なるほど
キノ
?????
キノは二人でも花冠は一つだった
キノ
‼︎
キノ
僕の花冠返せ!!
キノ
⁉︎
キノ
おぉ、分かったって飛びつくな
見事花冠は奪還した
キノ
ふふん✨
キノ
はぁ、
キノ
何?
キノ
お前のお世話を僕がしなきゃダメなのか?
キノ
ん?僕は家に帰るよ
キノ
家?…あぁ人間の家か
僕は帰る場所がない
キノ
…
キノ
どうするの?
キノ
え?何が
キノ
今帰る場所がないって言ったでしょ
キノ
言ってない。思っただけだ
キノ
(言葉にせずとも意思疎通ができるのか)
キノ
…
一応大人とかいう奴らがこいつを探しにここに来られても困る
キノ
お前は帰っていいぞ
キノ
えぇ、君は?
キノ
ぼくはここが家だ
キノ
そこらへんにいるよ
キノ
…
キノ
寂しい?
キノ
は?
キノ
だって今さみ…
キノ
さっさと帰れ!!
キノ
あわわっはい!!
そして僕は家に帰った
キノ
寂しいってなんだよ
キノ
人間の感情は厄介だ
僕は森の中をぶらぶらと歩いた
キノ
まず僕もしっかりとした家を探そう
キノ
人気がないところがいいな
キノ
…
住処を探しながら考えた
キノ
なぜ僕らは分裂したのか
キノ
まず分裂する瞬間何が割れる音がした
キノ
僕はアイツと違ってタイちゃんに興味はない
キノ
寧ろ邪魔としか思わなかった
キノ
離れたい、俺の言うことを聞けと
キノ
そればかり思っていた
キノ
…
キノ
それが原因か?
キノ
実験してみないとわからないなぁ
キノ
それにあの首元のキノコ
キノ
どうして急に胞子なんてばら撒いたんだ?
キノ
うーん
キノ
キノコは湿ってる時に胞子をばら撒く性質がある
キノ
あいつが緊張して手汗かいてたって感じか?
キノ
…
キノ
ほんとうにそうなのか
森を抜けると
キノは古びた少し大きめの家を見つけた
キノ
ここ結構良いところじゃねぇか
キノ
集落などない山の中にポツンと一軒
キノはズカズカと家の中に入っていった
小部屋が沢山ある家だった
一つ一つ部屋を確かめた
パタン
パタン
ガタッ
風呂場に誰かいた
キノ
あ
男の子
え
その男の子に見覚えがあった
そうだコイツ
よく山菜取りしてる男の子だ
嫌な過去がフラッシュバックした
キノ
また、お前僕と同じ場所に生えてる
僕は大きくため息をついた
同胞1
いいじゃないか、そういう仲だろ✨️
そう言いながら胞子を撒いた
キノ
や、やめろ、汚ぇ、僕をお前の胞子で汚すな
同胞1
はははっ、あんたは生え変わっても変わらねぇなぁ
キノ
お前もだろ
同胞1
そうだな、ははっ
あいつは朗らかなやつだった
こんな僕といつも一緒にいてくれた
そんなやつを
男の子
まま〜、ここに大きいキノコがあるよー
キノ
うわ、人間だ!
僕は葉に隠れた
同胞1
なぁに隠れてんだぁ、この前話したろ?人間なんて怖くない、俺が寄生して、食ってやる
そう言いながら牙をむきだした
そうだ、僕はこいつと人間を支配するって約束したんだ
こいつは覚えてる、あの時の約束を
キノ
そーだな、食ってや
ブチッ
男の子
まま〜、みて!大きいキノコ!
僕はその場から動けなかった
ずっとずっと、葉に隠れたままだった
男の子
もうきのこないや、このぐらいでいいかな
たったった
男は走り去った
その場に残っていたのは
胞子だけだった
キノ
はぁはぁ
キノ
僕は何も出来なかった
キノ
あいつを見守ることしか出来なかった
キノ
僕は、、、
キノ
あいつとの約束を、、
キノ
守れなかった、、、
今更葉から出てきた
もう既に遅いのは自分でもわかっている
でも、あいつをまだ探している
キノ
この、胞子で、あいつを生き返らすことは
あいつとは、何回同じ場所で生えただろうか
あいつとは、幾らの景色を見ただろうか、
あいつとは、どれほど笑っただろうか
あいつとは、、、