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まいたけ
ポケカメン
まいたけ
ポケカメン
ちょこらびハウスでの撮影が終わりみんなでまったりしている時ふと思いついたことをポケに伝えればメンバーがそばにいるからなのか少し頬を赤く染め目を見開いている
メンバーに茶化されながらも俺はポケの目を見て大人しくポケの返事を待つ。目を逸らしながらもしっかり考えていたポケの目が突然こちらを向き少し恥ずかしそうにされながらも無事承諾を得た
思わずガッツポーズをすればポケが照れたように面白そうに笑いこの空間は優しく楽しい雰囲気に包まれみんなで笑いあった
まいたけ
ポケカメン
翌日、昨日したデートの約束のため朝に起きて出かける準備をしていた 先に準備が終わり玄関でポケ待っていたが少し遅かったもので届くように大きな声で声をかければ同じように大きな声で返事が返ってきてドアが開いたり閉まったりドタバタと忙しない音が聞こえてくる
そんな音に笑みがこぼれながらも俺と色違いのパーカーとお揃いの黒いスラックスを着てドタドタと階段を降りてくるポケを眺める
ポケカメン
まいたけ
まいたけ
そう言ってポケの手を引き外に出て家の鍵を閉める
まいたけ
ポケカメン
家の目の前まで出していた車の側まで行きポケの手を離して助手席の扉を開けば少し照れくさそうにしながら素直に車の中へと入っていきシートベルトをしたことを確認して扉を閉めて直ぐに運転席に乗る
まいたけ
ポケカメン
ポケカメン
まいたけ
ポケカメン
まいたけ
ポケカメン
ポケカメン
まいたけ
ポケカメン
ポケカメン
まいたけ
ポケカメン
まいたけ
すると携帯を取りだしBluetoothを繋げて最近ハマっているらしいお気に入りの曲を流した
その音楽に揺られながら運転しているとふとポケのことが気になりちらっと一瞥してみると車の外の景色を眺めボーッとしていた
その横顔がその何を考えているのかもわからないような表情が言葉に表せないくらい綺麗で少し見惚れてしまったが危険なのですぐに顔を前に向け運転に集中することにした
それから数時間経ってもうすぐ着くかなという頃合いにちょくちょく気になっていたことがあり運が良かったのかなんなのか信号が赤になり車を停止してポケの方を見ればやっぱり目線は俺の方を向いていた すぐに逸らされてしまったが気になって声をかける
まいたけ
ポケカメン
まいたけ
ポケカメン
反応を見る限り大方図星であろう
まいたけ
ポケカメン
まいたけ
ポケカメン
なんて会話をしていると信号が青へと変化しまた車を走らせた
まいたけ
ポケカメン
まいたけ
走行中だったためポケの顔を見ることは出来なかったが言葉にならない呻き声のようなものをあげていておそらく照れているのだろうなと思いながらもう着くから、と声をかけた
まいたけ
ポケカメン
まいたけ
会話しながらささっと車を降りて助手席に回って外からまた扉を開けた ありがと、とお礼を言われながら自分とポケの荷物を後ろの席から取り出し背負う
ポケカメン
まいたけ
ポケカメン
まいたけ
ポケカメン
まいたけ
ポケカメン
行こう、と手を差し伸べれば不思議そうな顔をするので当たり前かのようにそう言えば顔を赤くしてそっぽを向きながらもしっかり差し出した俺の右手に左手を乗せるポケは世界で一番可愛い
その後チケットを買い館内に足を踏み入れたところで分岐点となっている道に辿り着いた
平日の真昼間。学生や社会人は勤務時間なこともあり館内に人はほとんどおらず全体的にカラッとしていたが周りを気にしながら手を繋ぐ必要もなくなるし空いてる方がいいという事でお互い心は晴れていた
まいたけ
まいたけ
ポケカメン
まいたけ
ポケカメン
ポケカメン
ポケカメン
まいたけ
ポケカメン
まいたけ
ポケカメン
まいたけ
ポケカメン
ポケカメン
まいたけ
ポケカメン
まいたけ
ポケカメン
ポケカメン
たくさんの魚達が泳いでいる多分この施設の中で最もでかいであろう水槽の前でポケがそう声を漏らす エイやサメなどの大きい魚から群れで活動するイワシやアジなどの小魚達まで幅広い数の魚が大きな水槽の中で泳いでいる
中でも一番目立っているのは世界最大と言われているジンベエザメ。さすがと言えば良いのだろうか近くで見ると想像していたよりも遥かに大きく迫力があり圧巻すると同時に世界最大と呼ばれるだけあるなと思った
そんなジンベエザメのそばにはコバンザメがくっついていてなんだか親子のように見えてかわいい
まいたけ
ポケカメン
ジンベエザメが水面の方まで泳いでいきどうしたのかと見守っているとどうやら食事の時間のようで水槽に投げられた餌を大きな口で水とともに飲み込んでいた
すると突然ジンベエザメの体制が変わり水面に顔だけを出すように大きな水槽の中で立っているような体制へと変わりその姿に圧巻され目を奪われる
それは隣にいるポケも同じようで感動しているように目を輝かせながら感嘆の声を漏らしていた。そんな姿が子供のようでまた一つポケのことが可愛く見えて好きだという感情が溢れだす
身長も俺より高く年齢にしては大分大人びていて初めは年齢詐称されているんじゃないか疑ったこともあったが顔立ちは幼く子供っぽいところが垣間見える事もありこんな姿を見ているとやっぱり自分よりも年下なんだな、とふと思う
だが何故か、何故か少しだけ
まいたけ
ポケカメン
ポケの意識も目も全てがジンベエザメに向いていることが、どこか少し、気に食わなくて話題を変えようとポケが見たいと言っていたクラゲがいる空間へと促した
ポケカメン
隣でポケがそんな声を漏らす 水槽の中には水の中をふわふわと泳いでいる半透明のクラゲ
泳いでいる様はこの世の言葉では形容出来ない程の儚さと美しさを纏っていて青いライトに照らされているその姿は幻想的に輝いている。海の月と書いてクラゲと読むのも納得がいってしまうほどクラゲの姿は神秘的で綺麗なものだった
ポケカメン
クラゲのいる水槽に張り付きそう呟くポケの横顔はそのクラゲよりももっと儚くもっと綺麗だった
この空間そのものが青いライトの光で埋め尽くされているため青いライトに照らされながら少し目を細めてクラゲを見ているポケにやはり、ポケには青色が似合うなと思った
そんなポケをずっと見ていたい、そう思った俺はスマホをポケットから取り出しカメラのアプリを起動させクラゲをも移さずにポケだけにレンズを向けピントを合わせてシャッターを切った 手が繋がれているから距離も近くそのシャッター音に気づいたポケが驚いたような顔でこちらを振り返る
ポケカメン
まいたけ
ポケカメン
まいたけ
きっと普段あまり写真は撮らないからSNSに投稿でもすると思ったのだろう だがこんな綺麗なポケをSNSというどんな人間でも見れるような場所に載せるわけがない、ましてやメンバーにすらも見せたくない。俺だけのポケの一枚
ポケカメン
まいたけ
クラゲのいる水槽を背景にポケが掲げたスマホに顔を向け左手でピースをする。ポケは片手ではスマホ、もう片手は俺の右手と繋がれているためポーズをとることは出来ないが別に不自然ではないだろう
決して繋がれている手を映すことはないがかといってお互いそれを離そうとすることもなくシャッターはそのまま切られた すぐに二人で確認すると泳いでいるクラゲを背景に幸せそうな顔をした俺らがクラゲと同じように青いライトに照らされてポケのスマホに収められていた
いつも通り口元はよく使っているお馴染みのスタンプで隠し目元を出すくらいなら構わないと思っていたが写真の中の俺らはなんとも幸せそうでメンバーと遊びに来た!という雰囲気ではなく活動上少々過激なファンや変に勘のいいファンがいたりする俺らは顔は出さない方がいいな、とアイコンのスタンプで顔を全て隠してポケのアカウントに載せようということになった
ポケカメン
まいたけ
ポケカメン
まいたけ
まいたけ
自然に出た言葉、言うつもりがあったわけじゃない。でも、隠したくない、隠す必要もないと思って勝手に音になって出てきていた
ポケはそんな俺に目を見開いて頬を赤く染めていた 大きく開かれた菫色の瞳は不思議と明るく光っていて薄暗く青い館内に月のように輝いていた
ここは暗いし人もいない。いつも照れ隠しの一つとして出される人がいるからダメ、と言われて止められる心配もない。と考え大丈夫だろうとポケの赤く染まった少し熱い頬に手を添えて少し開いている綺麗な柔らかい唇にちゅ、と音を立てて触れた
人が全くいないわけではないし、何故外なためさすがに長く触れすぎると怒られるだろうからと触れた唇はすぐに離したがその一瞬だけでも目の前にいる俺の彼女は青いライトに照らされて恥ずかしそうに、幸せそうに笑っていた
まいたけ
ポケカメン
まいたけ
ポケカメン
まいたけ
あの後昼ごはんを食べまた色んな生物を見て周り空が少し赤く照らされ始めた頃、帰ろうと改札口に向かっている最中ポケが足を止めた なんだろうとポケの視線を探ると四台程横並びになっているガチャガチャが目に入った
まいたけ
ポケカメン
まいたけ
少し恥ずかしそうに曖昧に答えるポケの手を引いてそのガチャガチャのそばまで歩くとどうやらこの水族館限定のガチャガチャのようで水族館の中にいた魚達のキーホルダーやアクスタなど色んな種類の水族館グッズがあった
そんなガチャガチャを目の前にポケは目を輝かせていてそんなポケがかわいくてふっと笑うと少しムッとした顔でこちらを見た
ポケカメン
まいたけ
少し不満そうなポケに財布から取り出した三枚の硬貨をポケの手を掴み手のひらに乗せた。すると動揺するように自分の手にある硬貨と俺の顔を幾度と見返して来るものだから別にええよ、と言う意味を込めて笑いかけると顔を赤くして俯きながらもありがとう、と小さく返してくれた
ガチャガチャの種類は全部で四種類。それぞれ五種類ずつ魚がいるようでポケは迷いながらも目の前にあったキーホルダーのガチャガチャに硬貨を一枚ずつ投入していたが俺はその隣にしか目がいかず財布からまた硬貨を三枚取り出してポケの隣に座り込む
すると驚いたようにこちらを見たがガチャガチャに硬貨を入れている俺を見てまた嬉しそうな表情を見せガラガラ、とレバーを回していた それにつられて俺もレバーを回し二つ同時に取り出し口にカプセルが落ちてきてそれを取り出し立ち上がった
蓋を開けるとポケのカプセルの中には透明なビニール袋に包まれたジンベエザメのキーホルダーがあった それを取り出し可愛い、とニコニコ嬉しそうなポケに満足し自分のカプセルを開くとそこには狙い通りのものが入っていて自然と口角が上がる
まいたけ
ポケカメン
まいたけ
ポケカメン
まいたけ
ポケカメン
確か俺の左隣の…と呟きながらガチャガチャの台の方へと体を向けたポケが体を硬直させ気の抜けた声を出した。そんな姿にかわいいなと思いながらポケの前に移動して片膝を立てて座りポケの手を取り手に持っていたものをポケの指にはめた
ガチャガチャの種類は四種類。左からメダル、指輪、キーホルダー、アクリルスタンドと並んでいた ポケが回したのはキーホルダー、その左隣は指輪
俺が出したのはクラゲの指輪、一目見たときこれしかないと思ったからポケのために回してみたら見事当てられて安心した
まいたけ
まいたけ
ポケカメン
驚いたように目を見開きながらも俺を捉えて離さない 赤い夕日に照らされて輝いている菫色の瞳に反射して映ったのはポケを見つめる俺
俺がポケカメンしか見ていないようにポケカメンもまた俺だけを見ている。そんな時間が心地よくて立ち上がり先程ポケにはめた左手の薬指についている透明感のあるクラゲが着いている指輪を見つめる
ポケカメン
まいたけ
ポケカメン
まいたけ
ポケカメン
ポケカメン
まいたけ
ポケカメン
まいたけ
まいたけ
まいたけ
ポケカメン
ポケカメン
ポケカメン
そう言い切ると目から大粒の涙を流しながらも嬉しそうに笑う
人がいるとかそんなの気にせず二人で笑いあって額を合わせた
こいつだけは、生涯手放さない
まいたけ
ポケカメン
その後車に乗って帰宅し一緒にごはんを作って食べて一緒に風呂に入って一緒に歯磨きして同じベッドに潜り込んだ
まいたけ
ポケカメン
まいたけ
ポケカメン
まいたけ
ポケは俺の胸に顔を埋め俺はそんなポケを抱きしめて眠りについた
???
???
まいたけ
ふぇにくろ
まいたけ
誰かの俺を呼ぶ声がうるさくて目を覚ます 目を覚ました先にいたのは正装をしたふぇにくろとかにちゃんとさくらがいた
まいたけ
かにちゃん
さくらくん。
かにちゃん
かにちゃんの言った最後のところはなぜか聞き取れなかったがスーツを着たメンバーたちがそう目の前で会話を交じわしている中俺はまだこの状況に追いつけていない
そもそもここはどこだ?一見結婚式場のように見えるが、俺は先程までポケカメンと一緒にベッドで眠っていたはずだ
両脇にいくつも並べられている四、五人で座れそうなベンチに真ん中に敷かれている赤い絨毯、所謂バージンロードとその両端にある大扉と三段程ある階段の先の教壇 バージンロード脇にはオシャレな柵とフラワースタンドが交互に並べられていて大扉前には赤い花と青いリボンが絡まった大きなアーチ
それになによりメンバーの格好。撮影だとすれば私服かちょこらびパーカーを着用するからスーツなんか滅多に着ることなんてないはずなのに それになんだか息苦しい。呼吸ができないわけじゃないがなんとなく首元を締め付けられているような感覚
そう思い下を見ればスっと目に入ってきたのは白いタキシード
まいたけ
俺のそんな驚いた声に肩をビクッと震わせ三人はこちらを振り返る
かにちゃん
さくらくん。
ふぇにくろ
まいたけ
ふぇにくろ
この結婚式場のような場所
さくらくん。
メンバーのスーツ姿に何故か着ている白いタキシード
かにちゃん
こんな状況、そんなの
まいたけ
そう言いかけた時後ろの大扉が開き四人して振り向くとそこには神父の格好をしたゆぺが立っていた
ふぇにくろ
かにちゃん
さくらくん。
ゆぺくん☆★
ゆぺくん☆★
「「「おっけ」」」
四人でそう話し三人に背中を押されながら浅く小さい階段を登らされ教壇の目の前に立たされる 俺を連れてった三人は両脇に飾ってあったベンチに三人で座ってゆぺは教壇の向かい側に立った
ゆぺくん☆★
一応、の箇所がすごく強調されていたような気がするが、まぁいいだろう。今はそれどころではない そろそろ来るとはなんだ、何が来るんだ。そもそも今何が起きてるんだ。結局なにも聞けずじまいで終わってしまったし
すると結婚式でよく使用されるような曲がどこからともなく流れてきて後ろの大扉が開き振り向く
開いた先には二つの人影、完全に開ききった時その先にはスーツ姿のほんこんさんとそのほんこんさんと手を繋いだ純白のドレスと半透明に青みがかったベールを身に纏ったポケカメンがいた
まいたけ
ゆっくりこちらに向かって歩いてくるポケを見つめる ポケの隣にいるほんこんさんはもう目に入っていなくて、周りの拍手の音も聞こえない。まるで水の中に潜り込んでいるように何も聞こえずただポケだけを捉えて離すことができない
まいたけ
ほんこん
まいたけ
ほんこんさんが俺の手を取って俺の手の上にポケの手を乗せる ほんこんさんがドレスの裾を持ち上げて三人がかりでポケが階段を登り俺の隣に立った
ポケカメン
まいたけ
少し俯きがちだった顔を上げてベール越しに菫色の瞳が俺を捉える。俺を見つめて花が咲くようにふわっと笑うポケは今まで見てきたこの世のどんなものよりも綺麗でこの世の言葉では形容出来ない程の儚さと美しさ、その他全てを兼ね揃えていた
ポケカメン
まいたけ
ポケカメン
二人でそう会話を交わし笑い合う するとゆぺが教壇を挟んで俺らのすぐ目の前に立ち直り俺らもゆぺと向かい合わせに体制を立て直す
ゆぺくん☆★
まいたけ
ゆぺくん☆★
ポケカメン
するとほんこんさんが俺たちの指輪をどこからともなく取り出してきてその指輪を交換する。ポケが用意したのだろうか、言ってくれたら一緒に選んだというのに
そんなことを思いながら両手でベールをすくいあげればぼんやりとしか見えなかったポケの顔がはっきりと見える 長いまつ毛にくっきりとした二重、少し恥ずかしそうに熱を帯びている綺麗な瞳。赤く染っている頬に小さい唇には赤いルージュが塗られておりその赤はさらにポケを輝かせていた
綺麗だ、自然に出た言葉 この世界の誰よりも何よりも、ポケが一番綺麗だ
赤く染まった少し熱い頬に手を添えるとポケが目を瞑りどちらからともなく距離を詰め互いの唇が触れた
さくらくん。
ポケカメン
ふぇにくろ
ポケカメン
かにちゃん
ポケカメン
ゆぺくん☆★
ポケカメン
メンバー四人がポケと話している中俺はほんこんさんと二人で話していた
ほんこん
まいたけ
ほんこん
まいたけ
ほんこん
まいたけ
ほんこん
そのほんこんさんの言葉に俺の時が止まる 驚きすぎて体が硬着している俺に面白そうに笑いながらまいたけはきっとそっちの方が喜ぶからって言ってたよ、と教えられポケに対する愛がまた増した
ほんこん
そう言われ背中を押される。その勢いのままポケの名前を呼び歩いていけばポケは俺の方に体を向け四人がポケから離れていきポケの目の前へと小走りで行く
ポケカメン
まいたけ
ポケカメン
ポケカメン
昨日の言葉がまさか今日現実になるなんて思ってもいなかった 今ポケの指輪についているのはガチャガチャの指輪ではなく特別な意味がこもった本物の指輪
夢みたいだ。こんなに幸せでいいのだろうか
まいたけ
???
まいたけ
溺れてしまいそうなほど幸せな今を噛み締めて目の前で笑っている妻を抱きしめようとすると後ろから声をかけられ思わず振り向くとそこには
まいたけ
赤い髪に茜色の目、赤いパーカーを着て黒いバンダナをつけている正真正銘の俺が目の前に立っていた
……もう、気づいてるんだろ?
まいたけ
何が そう声に出そうとしたが出なかった。思わず首に手を添え必死に声を出そうと口を開くが全く音は出てこない
辺りを見回せばいつの間にか暗く何もないところに目の前の俺と二人きり。メンバーも社長も、ポケもいなくなっていて頭が混乱する
もう諦めろよ。もう無理なんだよ
いつまでも都合のいい夢ばっか見てちゃダメなんだよ
早く立ち直れよ、早く大人になれよ
お前が大人にならなくちゃ、ポケがダメになる
先程から目の前にいる俺の言葉の意味が理解できない。大人になれとはどういう意味だ、何を諦めなければいけないんだ 何故それをしなければ、ポケがダメになってしまうんだ
…いいよ、見せてやるよ。
ポケを助けるために、俺が幸せになるために
すると暗かった辺りが白く光り始め眩しさに思わず目を腕で庇いながら目を閉じる数秒後目を開くとそこはメンバーがいる一面白い病室だった
まいたけ
いつの間にか声が出せるようになっている、がそれよりも何よりも目の前の光景に言葉を失う
立ちすくんでいるメンバーと社長に囲まれて白いベッドに寝かされているのは、間違いなく俺だった 血色の悪い肌に痩せこけた顔。つけられている人工呼吸器と身体中のたくさんの管に絶句する
……お前はもう、死ななきゃならない存在なんだよ
頼むから、生きることを諦めろ。これ以上、俺の
まいたけ
そうだ。全部思い出した
昨日、いや違う 数年前。俺とポケは水族館にデートに行った。
ペンギンショーを見て熱帯魚のいる水槽を見てチンアナゴを見てジンベエザメを見てクラゲを見てごはんを食べてその後も色んなところを見て回って空が少し赤く照らされ始めた頃、水族館を出ようとした時四台横並びになっているガチャガチャを見つけてポケは左から三番目のキーホルダーのガチャガチャを回した。その左隣には指輪のガチャガチャがあった
やりたそうに見つめているポケが愛おしく笑いながら三枚の硬貨を渡すと迷ったようにガチャガチャを選んでいてやがて一つの台に硬貨が一枚ずつ投入されていきレバーはあっけなく回され出てきたカプセルの中にはジンベエザメのキーホルダー
狙っていたものだったようでそれを取り出し可愛い、とニコニコ嬉しそうなポケの空いている方の手を取って帰るか、と言い横並びになり車まで二人で歩いた
そう。本当は、俺はポケにプロポーズできなかった 指輪のガチャガチャが目に入ったのもやろうとしたのも確かだ。でもその時の俺には根性と勇気が足りなかった
昨日の出来事、基数年前のデートの時プロポーズができなかった俺はその後もポケと交際を続けてそれから約一年がたった頃、俺は飲酒運転者の車と衝突し病院へ搬送された 手術したところで何も変わらない、命が短くなるだけだ。そう医者に判断された俺は数年間ずっと今日まで足掻いて足掻いて生き続けていた
あの時の俺を憎んで悔やんで、自分の都合のいいように記憶を塗り替えて、挙句結婚だなんて、人の妄想はほんとどうにでもなるんだな
でも、俺はもう助からない。 このまま足掻き続けたって俺はこの先もう二度と目を覚ますことは出来ない
それをちゃんと理解していたから心の中の俺が俺の姿になって現実から目を背けていた俺に言葉で伝えてくれた
まいたけ
なくしたい現実から目を背けてポケにおかしな期待を抱かせないよう、ちゃんといなくなるから
まいたけ
そう別れの言葉を告げるとどの機械かは分からないがピーと音が鳴り寝ている頭上に映し出されていたメーターの動きが止まった
ポケカメン
ポケの絞り出したような震えた声に胸がギュッと締め付けられた
社長がすかさずナースコールを押すがそんなの気にせずポケはゆっくりと俺の元へと歩み寄る
もう必要のない人工呼吸器と身体中に繋がれているたくさんの管にまだ生きているんじゃないかと錯覚する メンバーと社長は何も言わずにポケと俺を見つめていた
ポケカメン
お前に触れたい
今でも信じられない
ポケカメン
頭を撫でて、手を握って
信じたくない
ポケカメン
俺生きてるよってそう言ってやりたい
まだ生きてるってそう思いたくて
ポケカメン
ポケが握った俺の手は傷だらけで異常なほど血色が悪い
握ったまいたけの手は傷だらけで異常なほど冷たくて
ポケカメン
強く握ってくれている震えた手を握り返したいと思いながら
もう二度と目を開くことないまいたけの手を強く握りながら
ポケカメン
俺は涙を流す
俺の眠る病室にポケの号哭が鳴り響いた
まいたけ
自分の頬に俺の手を当て大粒の涙を大量に流し苦しそうに泣き叫ぶポケを見るのは心が痛い。心の中も頭の中もぐちゃぐちゃで涙を流しながら天を仰ぐことしかできない 今すぐポケを抱きしめたい。手に、頭に、体に触れたい
悔しくて、悲しくて、たった一度でいいからまたポケに触れたくて
そんな思いからいつまでも都合のいい夢を見続けた結果がこれだ
漫画とか小説とか、なんかの物語のようにご都合主義でも起きたらって
あの時、ポケにプロポーズできていたら、
何度願っただろう
そんな叶うことのない夢を