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放課後のチャイムが鳴くと同時に、9人は無言で立ち上がった。 教科書もノートもそのまま。 向かう先は、全員同じ――
ゆいの家。
夕方の風が冷たい。 ゆいの家の前に到着すると、9人は一気に緊張で固まった。
「…誰がインターホン押す?」 悠仁が小声で聞く。
「リーダー格の瑞稀でよくね?」
「いや、昨日一番怒ってたの涼だろ。」
結局また揉め始める。
「……ほんと進歩ねぇな俺ら。」 大輝がため息をついた。
それを見た克樹が覚悟を決め、インターホンを押した。
ピンポーン
みんなの心臓の音が聞こえそうなほど静かになる。
「はいー?」
柔らかい声が聞こえた。 ……ゆいのお母さんだった。
「あ、あのっ……ゆいいますか?」 瑞稀の声が普段の半分くらい小さい。
「あら、あなたたち……」
お母さんがドアを開けて、驚いた顔で9人を見た。
「ゆいなら今日、熱出して寝てるのよ。」
菅田琳寧
稲葉通陽
井上瑞稀
9人がざわつく。
お母さんは少し笑って言った。
「ふふ、違うわよ。 昨日の夜ね、泣いたまま寝ちゃって……朝起きたら熱が上がってたの。」
9人は一斉に顔を伏せた。
本髙克樹
橋本涼
「心配してくれてありがとう。 ゆいに伝えておくから……今日は帰ってあげて。」
そう言われたのに、9人は動かなかった。
瑞稀が前に出て、深く頭を下げた。
井上瑞稀
続けて、全員が揃って頭を下げた。
本当にすみませんでした。
お母さんは驚いたように目を丸くし、それから優しく微笑んだ。
「ゆい……あなたたちのこと、大事に思ってるわよ。 だからこそ、あんなに泣いたの。」
その言葉が胸にズシンと重く刺さった。
家の前を離れた瞬間、誰も喋らなかった。 玄関の灯りが遠くなるにつれ、罪悪感だけが濃くなっていく。
急に、黎が口を開いた。
矢花黎
菅田琳寧
井上瑞稀
……俺たちさ。 ゆいが戻ってきたら、何を言う?
全員が足を止めた。
それぞれ、言いたい言葉はあった。 謝りたい。 守りたい。 笑わせたい。 優しくしたい。 本当は、好きだと伝えたい。
でも―― 悠仁が淡々と言った。
鈴木悠仁
そして、星輝が静かに言い足した。
川崎星輝
その頃ゆいは。 家のベッドで、ぼんやり天井を眺めていた。
喉が痛くて、頭も重くて、視界がにじむ。 でも、胸の奥ではもっと別の痛みがうずいていた。
(……みんな、どう思ってるんだろう。)
ふとお母さんが部屋に入ってきて、優しく言った。
「ゆい、みんな来てたよ。 すごく心配してた。」
その瞬間、ゆいの胸がぎゅっと締めつけられた。
(……みんなに、会いたい。)
涙がぽろっとこぼれた。