TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで
消せない想い 最終回

一覧ページ

「消せない想い 最終回」のメインビジュアル

消せない想い 最終回

1 - 消せない想い 最終回

♥

29

2021年04月05日

シェアするシェアする
報告する

翌日、シズカは涼介くんを学校裏にあるプールに、放課後呼び出した

私がのろのろと帰りの支度をしていると

シズカ

行こう、江美

シズカ

昨日、ついてきてくれるって言ったよね?

江美

……あ、うん

シズカ

緊張するぅー。

シズカ

でも、消しゴムに私の名前が書いてあったから大丈夫だよね?

シズカは不安げな言葉を口にしながらも、余裕の笑みを浮かべている

シズカ

じゃあ、ここで待ってて

プールに到着すると、シズカは私に、フェンスの外で待ってて、と言った

江美

え?なんで?

江美

(告白の現場まで見てなくちゃいけないの?)

江美

(それはあまりにも残酷……)

江美

(2人が上手くいくところなんて見たくない)

江美

あ、私、教室に戻ってる……

言いかけた私をさえぎって

シズカ

私は中で涼介くんを待ってるからさ。絶対待っててね

シズカは自信に満ち溢れた様子で言うと、軽やかな足どりでプールの中に入っていった

仕方なくそこにいると、やがて涼介くんがやってきた

私はさっとしゃがみこんで身を隠した

シズカ

涼介くん

涼介

話って何?

シズカ

……実は私、前から涼介くんのことが好きだったんだ

私は思わず顔を背けた

シズカ

だから、あの……私と付き合ってくれない?

シズカが言うと、数秒間沈黙が流れた

涼介

ごめん

シズカ

え?なんで?涼介くんの消しゴムには私の名前が書いてあって……

シズカが声を震わせる

涼介

やっぱり見たんだ

シズカ

あ……

涼介

とにかく、俺、他に好きな子がいるんだ。だから、シズカとは付き合えないごめん!

涼介くんはそう言うと、シズカに頭を下げた

しばらく呆然としていたシズカは、その場から逃げ出すように走り去った

涼介

はぁ……

江美

シズカ!

私は、校舎の片隅で泣いているシズカに声をかけた

親友なんだからシズカの気持ちに寄り添ってあげないといけないのに、どこか胸の奥でほっとしている自分がいる

そんな自分のことが、凄くイヤだった

江美

あ、あのさ。きっとシズカにはもっといい人が……

シズカ

やめてよ、私、知ってるんだから!

江美

え?

シズカ

江美がいっつも涼介くんのこと見てたの、知ってた。私、ずっと江美の本当の気持ち、言って欲しかったんだよ!だって私たち、親友でしょ!

江美

それは……

シズカ

そんなふうにウジウジしてるの江美らしくないよ!江美はいっつもクールぶって、本当のこと、何も言ってくれないよね?

江美

シズカ、ごめん。そんなつもりじゃ…

シズカ

今日はもう私のことはほっといて!

シズカは大きな瞳に涙をためたまま私を睨みつけると、そのまま走って行ってしまった

とぼとぼと教室に戻ってくると誰もいなかった

江美

(……)

上履きから靴に履き替えていると

涼介

なあ……江美

江美

!涼介くん……

涼介

俺……

涼介

江美のことがずっと、好きでした

江美

(え……)

江美

……でも涼介くんの消しゴムにはシズカって

涼介

お前も見てたんだ……

江美

えっ

涼介

シズカもさっき同じこと言ってたから

江美

ごめん……

涼介

でも、シズカって書いてないから

江美

……でも

涼介くんは自分の消しゴムを取り出し私に放り投げた

そしてこくりと頷く

私はゆっくりとケースをずらしていった

江美

……ほら、やっぱり

同じように『シ』の文字が見えてくる

涼介

もっとよく見ろよ

江美

え?

ケースを更にはずしていくと『江』の文字が見えた

江美

(え……)

ケースをずらし終えるとそこには『江美』と緑のペンで書いてあった

江美

(私とシズカが『シ』だと思っていたのは、豪快にデカデカと書かれた『江』のさんずいだったんだ……)

涼介

おまじないなんか信じない江美にしたら、こんな子どもじみたものに頼る俺なんて、カッコ悪いよな

涼介

でも、おまじないなんかに頼って自分の気持ちを言わなかったせいで、シズカのことを傷つけちまった。

涼介

だから……だから……

涼介

これからは、自分の気持ちははっきり伝えよう、そう決めたんだ

涼介

俺は、江美のことが好きです

江美

涼介くん……

涼介

ごめん。そんだけだから

涼介くんはスポーツバッグを肩にかけて、歩き出した

私はギュッと唇を噛み締めていたけれど……

江美

待って!

立ち止まった涼介くんの元に駆け寄って、鞄の中の消しゴムを握りしめる

そして、その手を涼介くんにさしだした

涼介

え?

江美

本当は私も、2人と同じおまじないしてたんだ

江美

(私の消しゴムも見てみて)

そういう思いを込めて、涼介くんの顔をみて力強く頷いた

涼介くんがケースをはずす

そこには緑のペンで『涼介』の文字があって……

江美

……私もおまじないなんかに頼らないで、自分の気持ちはちゃんと伝える。

江美

好きな人にも。親友にも……

涼介くんは消しゴムの文字を見て天井を仰いでいる

江美

私もずっと涼介くんのことが好きでした

お互いの気持ちを確認した私たちは、どちらからともなく、微笑み合う

涼介

……緊張した

涼介

でも江美の気持ち聞けて、嬉しいよ…

江美

……うん

江美

(おまじないをきっかけに、自分の気持ちも、涼介くんの気持ちも、確かめられた)

江美

(だけどこれからは、おまじないに頼らずに、正直に気持ちを伝えなきゃ)

江美

(明日シズカとちゃんと話してみよう)

江美

(シズカは私と話すのを嫌がるかもしれない)

江美

(それでも、気持ちが伝わるまで、何度でも、何度でも伝えよう)

その後……

私はシズカと仲直りしたくて何度か声をかけたり連絡をしたりしたけれど、ずっと口をきいてもらえなかった

でもある時……

シズカ

ああ、もう分かったよ!

シズカ

ムカついてたけど、私、やっぱり江美のこと嫌いになれないや

江美

シズカ……

シズカ

私に気を遣わないで涼介くんと仲良くしていいからね。あんた達見てると焦れったくてさ!

仲直りできたよって涼介くんに報告したら、一緒に喜んでくれた

今はシズカの新しい恋を全力で応援中です!!

この作品はいかがでしたか?

29

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚