テラーノベル
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-碧視点ー
目を覚ますと、薄いカーテン越しに朝の光が差し込んでいた
部屋は静かで、時計の音だけがやけに大きく聞こえる
昨日の夜、あのままベッドに戻って……いつ眠ったんだっけ
ゆっくり起き上がると、鼻をくすぐる匂いがした
コーヒーと、少し焦げたパンの匂い
台所のほうから、皿の当たる小さな音もする
(……起きてる)
足音を忍ばせて廊下を抜けると、キッチンのカウンター越しに隼人の背中が見えた
無造作に伸びた髪、タンクトップからのぞく広い肩
背中の筋肉が、ちょっとだけ動くたびに服が揺れる
碧
声をかけると、隼人は片手でマグカップを持ったまま振り返った
隼人
碧
隼人
ふっと笑って、トースターからパンを取り出す
端っこがちょっと焦げてて、黒い
それを気にする様子もなく、皿に乗せてカウンターに置いた
隼人
碧
隼人
碧
隼人
そう言いながら、隼人は自分のマグに口をつける
口元から立ちのぼるコーヒーの香りが、なぜか妙に大人っぽくて、俺は少し見惚れてしまった
パンをかじると、表面はカリッとしていて、中はやわらかい
ちょっと焦げた味も、なぜか悪くなかった
碧
隼人
碧
隼人
碧
隼人
短く答えて、またコーヒーを飲む
その表情が、少しだけ疲れて見えた
昨日の夜、触れそうになって――やめた手
あれがずっと頭の中に残ってて、
距離は近くなってないのに、前よりこの人のことを知りたくなってる自分がいた
(……また会えるのかな)
そんなことを考えながら、俺はパンをもう一口かじった
皿を流しに置いて、「ごちそうさまでした」と軽く頭を下げる
隼人はカウンターに肘をついたまま、面倒くさそうに片手をひらひら振った
隼人
碧
靴を履こうと玄関に向かう
ドアノブに手をかけたとき、不意に背後から声が飛んできた
隼人
碧
振り返ると、隼人は片手でマグを持ちながら、少しだけ笑っていた
けど、その目は笑ってない
隼人
隼人
碧
隼人
短いやり取りなのに、胸の奥が妙にざわつく
“誰にも言うな”――それは、俺のためなのか、隼人のためなのか
靴ひもを結び終えて立ち上がると、隼人は玄関まで来ていなかった
キッチンのほうから聞こえるカップの置かれる音だけが、静かに響く
碧
思わず小さく呟いた
声に出したつもりじゃなかったのに、たぶん届いてしまった
隼人
背後から、くぐもった声が返る
碧
急いでドアを開けて外に出た
朝の空気は冷たくて、昨日よりずっと現実的な匂いがした
でも、胸の奥に残ったざらつきは、家を離れても消えなかった
だいふく
だいふく
だいふく
コメント
10件
最高すぎる✨
ぐっじょーぶ!
うん、安定に最高😇