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"恥ずかしい"という気持ちもなくはないが、知らない相手で正直困惑という状態だ。 新手の悪ふざけの可能性だってまだまだ拭えない。 でもわざわざこんな何処にでもいるただのカフェの店員に?
それに俺自身今好きな人がーーー
と思うものの、それは敢えてこの人に言う事ではないと判断して、返事に迷い次の文字が打てずにいた。 もうスピーカーからは別な曲が流れている。
なんて返そうか悩んでる間にまた立て続けにメッセージが来た。 質問が来た事で困惑しながらも"はい"とだけ返した。
もし住所とか体重とか恋人の有無とか、そんなのを聞いてきたら答え難いどころか、顔も知らない相手に答える必要もないなと身構えていたのに。
全く予想してなかった質問だった。 なんか普通…好きな何とかって聞くなら、食べ物がオーソドックスなんじゃない?なんて。 そう思ったら自然とちょっと笑ってしまった。
でもNからの質問は"色"だ。 これと言って決めた事がなくて、ある意味食べ物を答えるより難しい。 だから頭の中でクローゼットの扉を開けた。 何色の服が多いかな、って。
『緑が好きです。』
クローゼットの中身は思ったより参考にならなくて、自分の緑色のバッグが頭に過って決めた。 その緑のバッグは唯一、一目惚れして値段も見ずに買った物だからだ。
返すとまた直ぐに確認済みになった。
Nとのチャットが終わった。 突然メッセージを寄越して来た割に、かなりの低姿勢で引き際も早い。 その差に唖然だ。
俺だけが困惑を残したまま"おやすみなさい"と返して、手付かずの状態で放置した卵白にまた向き合う。 もはやマカロン作りのテンションは何処かに行ってしまったが、それっきりメッセージ受信はなくて、ハンドミキサーを手にした。
結局テヒョンの要望通りマカロンは作りきった。 当然一個だけ作るってわけにもいかなくて、分量少なめにしたが12個のマカロンが出来た。
どうせ誰かしら店に来るんだろうから、7個は7人にあげればいいし、残りの5個は店の冷蔵庫に入れて沢山買ってくれた人におまけで渡せばいい話だ。
7個と5個を予め別々の袋に入れて置いて、店に出勤するや否や冷蔵庫に入れた そしてから直ぐに店のプレートを"Open"に切り替えした。
7時になる10分前。 エプロンを付けて音楽を流す。
テテ
コーヒー片手にたまたま見ていた携帯の画面の時間は、午前9時を少し過ぎていた。 聞き慣れた声に立ち上がると、まだ少し眠そうなテヒョンがいた。
ホソク
今日は可愛らしい鍵編みのバケットハットを被っている。 俺の質問には首を横に振るだけで、これっぽっちも隠す気もない大きな欠伸をした。
それから唇をにゃむにゃむと動かした後で
テテ
メニュー表を見てぽつり呟いた。 伏し目がちなテヒョンの長い睫毛が、欠伸で出た涙のせいで少し濡れて見えた
緩いジャズだけが流れる店内だったが、ココアを待つテヒョンの小さな鼻歌が聞こえ出した。 眠いけど機嫌は良いみたいだ。
テテ
ココアの優しくて甘ったるい香りに蓋をした時、タイミング良くテヒョンが口を開いた。
テテ
俺がココアを差し出すより先に、テヒョンの骨ばった手が細長い淡いベージュの布袋を差し出して来た。
ホソク
とりあえずココアの入ったカップをテヒョンが肘を付いているカウンターに置いた。
テテ
ホソク
ホソク
やっとテヒョンの手からそれを受け取った。 シンプルなそのベージュの袋を開けて中身を見た瞬間に、Nの事を思い出した
何故って。
ホソク
ホソク
カトラリーは可愛いしお洒落だ。 でも、ココアを一口飲んで唇についたそれを舌で舐めとったテヒョンのキョトンとした顔に目がいった。
ホソク
テテ
テテ
ポケットから取り出したのか、見覚えのある携帯を顔の横に上げて見せてきた 確かに、見慣れたケースだ。
単なる偶然。 それにしてもタイムリー過ぎやしないか、あまりにも。
ホッと胸を撫で下ろした俺にテヒョンが少し大きい声で
テテ
形の整った目を少し丸く開げて言った。 言うべきか言わざるべきか、一瞬少し悩んだけれど。
ホソク
テテ
ホソク
余計な心配をかけない為にNの事は伏せる事にした。
空になったバスケットじゃないけれど、きっとテヒョンの事だから連絡やめろって何回も言い続けるに決まっている。 下手したら変な男と連絡取り合ってるとか、俺の親に有る事無い事言いかねない。
緑色のグラデーションが綺麗なカトラリーセットを袋から出して、シンクの中に置いた。
テテ
バケットハットを一度脱いだと思ったら、前髪を上げた後で再度被り直したテヒョン。 緩い湾曲を描く眉がよく見えた。
テテ
テテ
ホソク
テテ
ホソク
テテ
ホソク
どういう訳で"駄目"なのかは知らないけれど、甘いココア片手に顎に手を置いて真剣に考える様な表情をしたから可笑しくて。
整った顔で飲んでる物がココアだなんてなかなか格好つかないなって意味でだ