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麦野 さとみ

皆さん初めまして

麦野 さとみ

麦野さとみ、と申します

麦野 さとみ

今回は、娘「花蓮」の身に降りかかった

麦野 さとみ

恐ろしい出来事をお話します

麦野 さとみ

最後まで、拝読よろしくお願いいたします

保育園に通う、一人娘の花蓮。 花蓮は、来年度小学校へ入学する。

母一人子一人の母子家庭で、生活もキツキツ。 正直、食べていくのが精一杯で、ランドセルを買う余裕はなかった。

親も他界していて、頼れる身内もいない。 デパートで売られているランドセルは高過ぎて、私の安月給で買える金額ではない。

お店では、赤色の他に、ピンク、イエロー、ブルー等のカラフルなランドセルが売ってある。 保育園が夏休みの時に、花蓮を連れてデパートに行った時のこと・・・。

ーランドセル売り場ー

麦野 花蓮

うわぁ~

麦野 花蓮

ねぇママ?

麦野 さとみ

なぁに?

麦野 花蓮

これ可愛いねぇ?

麦野 花蓮

麦野 さとみ

可愛いわねぇ~

花蓮は、ランドセルを、背中に背負う。

麦野 花蓮

ねぇママ?

麦野 さとみ

なぁに?

麦野 花蓮

似合ってる?

麦野 さとみ

うん♪とっても似合ってるわよ~

麦野 花蓮

ありがとうママ♪

そう言うと、花蓮はランドセルを元の場所に戻した。

麦野 さとみ

(高過ぎて、買えないわ・・・)

麦野 花蓮

ねぇママ?

麦野 さとみ

なぁに?

麦野 花蓮

サンタさんに、ランドセルお願いしていいかな?

麦野 さとみ

サンタさんにお願いしたいの?

麦野 花蓮

うんっ!

麦野 花蓮

花蓮が一番欲しいモノは

麦野 花蓮

ランドセルだもん♪

麦野 さとみ

じゃあ、サンタさんに

麦野 さとみ

お手紙書かなきゃね

麦野 さとみ

(つ、辛過ぎる…)

あの夏の日から、ずっと悩んでいた。 サンタさんに頼むということは、結果的に私が購入しなければならない。

貯金しようか・・・。 でも、その余裕はない。

別れた旦那に、恥を忍んで頼もうか…。 色々と考えていたら、既に季節は師走を迎えていた。 そんな、ある日の事だった。

仕事先から自転車で帰っている時、普段は通らない花房(はなふさ)商店街へ向かった。 この道が、近道だからである。

そして、商店街の外れに質屋があった。 入り口横のショーケースに、ピンクのランドセルが飾ってあった。

ショーケースを見ると、ランドセルには値札が掛けてない。 値札の代わりに、新品という紙が掛けてある。 普段だったら、質屋などには行かないのだが、この日は売られているランドセルが凄く気になった。

麦野 さとみ

ごめんください

麦野 さとみ

(ランドセルの事聞かなきゃ)

質屋店主

いらっしゃい

麦野 さとみ

ショーケースのランドセルの事で…

質屋店主

あぁ、ランドセルね?

質屋店主

買いたいのかい?

60歳は超えてそうな、店主らしき人が店の奥から出てきた。

麦野 さとみ

売り物なら買いたいです

麦野 さとみ

娘が来年、入学するので…

質屋店主

そうかい…

質屋店主

触ってみるかい?

麦野 さとみ

はい!是非お願いします

店主は、ショーケースのを開けて、ランドセルをさとみに手渡した。

麦野 さとみ

ありがとうございます

さとみは手に取り、ランドセルを見た。

でも、新品って変である。 中古品なら分かるのだが、何故新品なのか。

疑問に思って、聞こうと思ったら店主の方から話してくれた。

ある夫婦に、小学校に入学前の娘がいた。 夫婦は百貨店に娘と一緒行き、娘が気に入ったピンクのランドセルを買った。

しかしその後、既にランドセルを購入している事を知らない母親の母親が、孫のためにピンクのランドセルを買って郵送で送ってくれた。 ピンクのランドセルが、二つになってしまった。

しかも、二つのランドセルは偶然にも同じメーカー。 娘には、同じメーカーの同じランドセルだし、おばあちゃんがプレゼントしてくれたランドセルを使う事にして、自分達が買ったランドセルを質屋に持って来た。

というい経緯で、質屋のショーケースで売られる事になった。

質屋店主

買うのかい?

質屋店主

買うんだったら

質屋店主

5000円だよ

麦野 さとみ

えっ!?

金額を聞いて、持っていたランドセルを落としそうになった。

麦野 さとみ

5000円って・・・

麦野 さとみ

そんなに安くていいんですか?

質屋店主

リサイクル品のランドセルは相場が決まっててね

質屋店主

新品でも、この金額にせんと売れんのよ

麦野 さとみ

なるほどですね!

安値で悩んだが、ランドセルがこの質屋に持ち込まれた理由も聞いたし、これは買うしかないと思った。

麦野 さとみ

買います!!

麦野 さとみ

(財布からお金を取り出す)

質屋店主

はいよ

質屋店主

箱があるから、ちょっと待ってな

麦野 さとみ

はい

数分後、店主がランドセルの化粧箱を持って来た。 その化粧箱を見て、ランドセルの実際の売値が分かった。

有名百貨店で取り扱う、高級の部類に入るランドセル。 本皮仕様で、売値も50000円は軽く超える。 それが、半額以下で買えるのだから、嬉しい限りだ!

麦野 さとみ

これ、5000円です

質屋店主

はい、確かに・・・

さとみは、店主に頭を下げて、化粧箱を自転車の前カゴに入れて急いで帰宅した。

????

ランドセル…売れたのね…

店内奥から、店主ではない女性の声が聞こえてきた。

質屋店主

あぁ、売れたよ

質屋店主

これで、あの子も幸せになれるさ…

????

あぁ…良かった…

????

本当に良かった…

女の子の遺影を持つ女性。 これに、なんの意味があるのだろうか・・・。

質屋店主

さて、もう誰も来んだろう

質屋店主

店を閉めようかね…

店主は、店のシャッターを閉めた。

さとみは、アパートの駐輪場に着き、自転車を停めてランドセルが入った化粧箱を手に持ち階段を駆け上がった。

麦野 さとみ

(早く、これを花蓮に!)

そう考えると、花蓮の笑顔が浮かんでくる。

ガチャ・・・

麦野 さとみ

ただいまぁ~

キッチンのテーブルに、化粧箱を置くと・・・。

麦野 花蓮

おかえりなさい

花蓮が部屋から出てきた。

麦野 さとみ

ただいま、花蓮

麦野 さとみ

これ、花蓮が欲しがってたランドセル

化粧箱を、花蓮に渡した。

麦野 花蓮

ありがとぉ

麦野 花蓮

ママ、開けていい?

麦野 さとみ

いいわよ~

さとみがそう言うと、花蓮は笑みを浮かべて、化粧箱からランドセルを取り出した。

麦野 花蓮

麦野 花蓮

ママッ!ありがとぉ~

麦野 花蓮

うわぁぁ~!かわいいっ!

花蓮は、ランドセルをテーブルに置いて、さとみに飛付いた。

麦野 さとみ

(花蓮の頭を撫でながら)

麦野 さとみ

サンタさんがね?

麦野 さとみ

ママがお仕事してるところまで

麦野 さとみ

持って来てくれたんだよぉ~

麦野 花蓮

サンタさん、優しいね

素直な花蓮は、さとみの嘘を信じて、サンタ宛に覚えたての仮名文字で、お礼の手紙を書いている。

麦野 花蓮

麦野 花蓮

ママ!このお手紙

麦野 花蓮

サンタさんに出して?

麦野 さとみ

分かった

麦野 さとみ

サンタさんに出しておくね

麦野 花蓮

ありがとうママ!

花蓮から受けとった手紙を、鞄の中に入れて夕飯の準備に取り掛かった。

年が明けてから、突然忙しくなった。 花蓮の、入学準備が増えたからだ。

入学する小学校の、入学前保護者会。 保育園では、卒園式に向けての歌の稽古。 2月には、教科書やお道具箱や、体操服等の受け渡し。 制服の準備。

お道具箱の、作り物のお金や数え棒等に、名前を書く事が苦痛だった。

バタバタと、時は過ぎ…。 花蓮は、保育園の卒園式を待つだけとなった。 その後は、小学校の入学式。 すると、花蓮の異変に気が付いた。

ランドセルを買ってから、段々とやつれている。 ふっくらしていたほっぺたも、頬がこけている。 首元も、鎖骨が浮き出ている。 全体的に、痩せたという感じ。

毎日見ていたのに、花蓮の異変に今頃気が付くなんて…。 だけど、花蓮の方は、いたって普通なのだ。 病気をしている感じはしないし、元気な6歳の女の子。

そう見えた・・・。

日に日に、その痩せ方が異様に見えてきた。 極めつけは、髪の毛が抜け始め、所々白髪も目立つようになった。 花蓮は、元気いっぱいなのだが、気になった私は卒園式の前に病院へ行く事にした。

看護師

麦野さん、どうぞ~

看護師に呼ばれて、診察室へ。

女医

花蓮ちゃん!どうかした?

女医は、花蓮を見た瞬間、顔色が変わった。 そして、椅子から立ち上がり、花蓮の肩を優しく撫でている。

麦野 花蓮

どうもしてないよ?

花蓮、いたって普通。 いつもの花蓮なのだ。 声だけは…。 見た目だけが、前より痩せているだけ。

女医

(カルテを見ながら)

女医

最後に来たのは、去年の春よね~?

女医

う~ん…そうだねぇ~

女医

花蓮ちゃん、体重計ってみよっかね?

麦野 花蓮

うん

女医は、花蓮を体重計の前に立たせて、花蓮の体重を計る。 花蓮の体重は、12kgだった。

女医

12kgかぁ…

女医

春に比べると、3kgも減ってるわねぇ

女医

本当だったら、少しは増えてないといけないのに…

麦野 さとみ

病気なんでしょうか…

女医

ここじゃ、詳しい検査ができないの

女医

大きな病院に行ってちょうだい

女医

今から、紹介状書くから…

女医

(ササッと紹介状を書き)

女医

これね…

麦野 さとみ

ありがとうございます…

女医

なるべく、早く行ってね?

女医

今年、入学でしょ?

麦野 さとみ

そうなんですよ~

女医

その前に、原因を探らなきゃ!

麦野 さとみ

・・・はぃ…

麦野 さとみ

(ガックシ…)

女医

大丈夫!

女医

原因が分かれば、治療ができるから…

麦野 さとみ

はぃ、ありがとうございます

不安な気持ちは拭えず、気落ちしたまま家に戻った。 職場に事情を話し、翌日もお休みをもらい、明日に備えて早めに休む事にした。

次の日、朝早くから紹介状に書かれてある、総合病院へ向かった。 小児科、内科、外科、眼科、歯科、脳神経外科、心療内科と回されたが、病の原因は見付からず、原因不明だった。

原因不明だったため、そのまま帰宅。 取り敢えず、卒園式を済ませて、花蓮の状態に気を付けながらの生活を送り、あとは、小学校の入学式を待つだけとなった。

この頃から、花蓮は身体以外にも異変が見えてきた。 上手く言葉が出ないようになり、視力も弱くなっていた。 再び、総合病院へ診察へ行った。

しかし、最初の診察と変りなく原因不明。 しかも上手く言葉が喋れなくなり、視力も1.5から0.5に落ちていた。

主治医

しばらく、入院させますか?

麦野 さとみ

はい

主治医の言葉に、頷くしかなかった。 体重も減り続けて、13kgだったのが10kgまで減っていた。 このまま体重が減り続けたら、日常生活は困難になる。

背中も、終始猫背の状態になっていて、そんな風に言われたら、入院しかない。 そう思うしかなかった。 花蓮は即入院。

主治医

入院の手続きを、看護師から聞いて下さいね?

麦野 さとみ

分かりました。

看護師

麦野さんでしたね?

麦野 さとみ

はい

麦野 花蓮

ねぇ、ママ

麦野 花蓮

わ、たし…にゅういん…すりゅの?

麦野 さとみ

そうだよ~

麦野 さとみ

花蓮の身体の中に

麦野 さとみ

悪いモノがいるから

麦野 さとみ

それを消さなきゃいけないの

麦野 花蓮

……わかっ…た

看護師

では、麦野さん

看護師

外で、入院に必要なお話がありますので

看護師

一旦、診察室を出ましょう

看護師

花蓮ちゃんは、そのまま病室に行こうねぇ

麦野 花蓮

うん!

花蓮は、別の看護師が病室へ連れて行った。

看護師

入院手続きの書類です

麦野 さとみ

ありがとうございます

看護師

書類に目を通して記入して

看護師

早いうちに 入院窓口へお持ち下さい

麦野 さとみ

分かりました

麦野 さとみ

よろしくお願い致します

看護師

花蓮ちゃんの状態なんですが

看護師

症例が少ないので経過観察となります

麦野 さとみ

はい

看護師

身体の中に、何かしらの原因が隠れてるのか

看護師

明日以降、詳しく検査します

麦野 さとみ

はい

看護師

検査次第では、手術になる可能性もあるので

看護師

先にお伝えしておきますね

麦野 さとみ

全てお任せ致します

看護師

何かありましたら

看護師

遠慮なくお電話して下さい

看護師

全力でサポートしますので

麦野 さとみ

はい

麦野 さとみ

では失礼します

小学校の入学式は間に合いそうに無いため、小学校の方にも連絡を入れた。 仕事に行く前と、仕事帰りに花蓮のお見舞いに行くのが日課となった。

花蓮が居ないアパートは静かで、逆に不気味に感じて仕方なかった。 中古で買った勉強机の上に、花蓮のランドセルが置いてある。

久々に見ると、ピンクだった色が少しだけ色が濃くなっているようにも見える。

部屋の照明が弱いからだと、この日はそう思う事にした。

1ヶ月後

花蓮の体重も16kgまで増え、視力は戻らないものの、会話も普通にできるようになっていて、退院できるまでに回復していた。

いつものように、仕事に行く前、お見舞いに来ていた。

麦野 花蓮

ねぇママ

麦野 さとみ

どうしたの~?

麦野 花蓮

ランドセル持って来て?

麦野 花蓮

ここに置いときたい

麦野 さとみ

置いときたいの?

麦野 花蓮

うん!

麦野 花蓮

看護師さんにも見せたいのぉ~!

麦野 さとみ

よし!分かった!

麦野 さとみ

夕方過ぎに、持って来るわね?

麦野 花蓮

やったぁ~!

麦野 花蓮

絶対に持ってきてね~!

麦野 さとみ

分かった

花蓮はにそう約束して、さとみは仕事に向かった。

その日の夕方

仕事を終えたさとみは、1度アパートに戻って、ランドセルを花蓮の病室に持って行った。

麦野 さとみ

花蓮~!

麦野 さとみ

ランドセル持ってきたわよ~

麦野 さとみ

麦野 花蓮

わぁいわぁい!

麦野 花蓮

ありがとぉママ~

麦野 花蓮

(ランドセルをじーっと見つめる)

麦野 花蓮

ねぇママ?

麦野 さとみ

なぁに?

麦野 花蓮

ランドセル…色が変わってる…

麦野 さとみ

・・・っ

花蓮の言葉に、悪寒が走った。

麦野 さとみ

気のせいよ~

麦野 さとみ

色なんて変わってないから

麦野 さとみ

(でも少し濃い気がするのよね~)

麦野 花蓮

違うもん!!

麦野 花蓮

変わってるもん!!

麦野 花蓮

ママは分からないの?

花蓮は興奮気味になり、過呼吸になって、そのまま意識を失った。 急いで、ナースコールを押した。

看護師

どうしましたかぁ~?

麦野 さとみ

娘が、興奮して…

麦野 さとみ

過呼吸になって…

麦野 さとみ

い、意識が・・・

看護師

分かりました!

看護師

すぐ行きますね!

数秒後、主治医と看護師が機材と共に病室に入ってきて、さとみは病室の外に出された。

数分後

主治医

危険な状態です!

主治医

もうすぐ退院だったのに

主治医

何があったんですか?

さとみは、全て話した。 昨年末に、花房商店街の質屋で買ったランドセルのこと。

そのランドセルを手に入れてから、娘の様子が変わったこと。 そして、ランドセルの色が変わってること。

一通り聞いた主治医は、病室に戻りランドセルを手に取った。 そして、ランドセルを開いて、奥を覗いている。

主治医

やはり、そうか

主治医

どうぞ、手に取ってください

主治医

主治医は、病室の外で待つさとみに、ランドセルを渡した。

主治医

このランドセル

主治医

花房商店街の、質屋で買ったと言ってましたよね?

麦野 さとみ

そうですけど、それがなにか…

主治医

その質屋の名前って、金本質屋でじゃないですか?

麦野 さとみ

そ、そうですけど…

麦野 さとみ

なんで分かるんですか?

主治医

このランドセルは

主治医

金本質屋の孫娘のランドセルかと思われます!

えええええっ!?

麦野 さとみ

えっ…でも

さとみは、質屋の店主から聞いた内容を話した。 ランドセルが質屋で売られていた理由を・・・。

主治医

それ、作り話だと思います

麦野 さとみ

!?

主治医が、話し出した。

金本質屋には、今から3年前。 6歳になる孫娘がいた。

その孫娘は、小学校の入学式の前に、原因不明の病に侵された。 今回の花蓮のように、身体がやせ細り、言葉が喋れなくなり、視力も落ちて原因が分からないまま、最後は呼吸ができなくなって亡くなった。

孫娘が入院していた病室には、淡いブルーのランドセルが置いてあった。 すると、そのランドセルは、孫娘の病状が悪化すると共に、色が少しづつ変わっていった。

淡いブルーから、淡いピンクへと・・・。 その異変に気付いた時は、孫娘は既に手遅れの状態で、ランドセルを家族の者が自宅に持ち帰った翌日に、孫娘は息を引き取った。

ランドセルの色の変化と、孫娘の病状悪化の関連性は定かではないが、現にこのランドセルには、孫娘の魂が宿っているのだと・・・。 それは、ランドセルの中を見れば分かると・・・。

さとみはランドセルの奥を覗いた

麦野 さとみ

麦野 さとみ

きゃぁぁぁぁ!!

麦野 さとみ

(ランドセルを放り投げた)

主治医

質屋の孫娘の顔も浮かんでたんだ…

麦野 さとみ

花蓮は、ランドセルを買ってから

麦野 さとみ

少しづつおかしくなって…

麦野 さとみ

入院して、退院できそうだったのに

麦野 さとみ

これって、ランドセルが近くに無かったから

麦野 さとみ

回復したって事なんですか?

主治医

私の口からはなんとも…

麦野 さとみ

でも、このランドセルが原因で

麦野 さとみ

体調が悪くなったとしか思えなくて…

麦野 さとみ

花蓮の生気を吸って、濃く色付いたんでしょうか

主治医

今から、金本質屋に行かれたらどうですか?

主治医

直接、店主に聞いてみたらいい

麦野 さとみ

そうですよね!

麦野 さとみ

まだ間に合う!

麦野 さとみ

今から金本質屋に行きます!

麦野 さとみ

行って、本当の事を聞いてきます!

主治医

お気を付けて…

さとみは、その足で花房商店街の金本質屋へ向かった。

金本質屋に着くと、店主がシャッターを閉める直前だった。 さとみは、自転車を放り出して店主に問い詰めた。

麦野 さとみ

このランドセルの、本当の経緯を教えて!!

麦野 さとみ

質屋店主

・・・

質屋店主

まぁ、入りなさい

店主は、さとみが何を言いに来たのか分かったかのように、さとみを店内へ招いた。 そして店内奥の、住居スペースへと通された。

質屋店主

何かあったのかい?

麦野 さとみ

何かあったのかい?じゃないでしょ!

麦野 さとみ

このランドセル…

麦野 さとみ

アンタの孫のランドセルなんでしょ?

麦野 さとみ

よくも…こんなランドセルを…

質屋店主

落ち着きなさいな…

質屋店主

確かに、このランドセルは孫のだよ

質屋店主

だがね?

質屋店主

ランドセルがこの店に来た経緯は、アンタに話した通りだよ

麦野 さとみ

そんな作り話…信じろっての?

麦野 さとみ

娘は…花蓮は…このランドセルに…

麦野 さとみ

生気を…生気を…

涙が溢れてしまって、もう言葉にならない。

店主の娘

母さん…もういいわよ

部屋の襖が開き、女性が入ってきた。

質屋店主

・・・・・・

店主の娘

ごめんなさいね

店主の娘

このランドセル、娘のなんです

店主の娘が、孫娘の話をしだした。

金本質屋の孫娘は、小さな頃から霊体を体内に取り入れてしまう特異体質の持ち主だった。 体内に入り込んだ霊体を、自ら廃除することができず、その都度霊媒師に頼んで浄霊をしてもらっていた。

孫娘が5歳の春咲。 孫娘の体内に、子供の霊体が入り込んだ。

いつものように霊媒師が、浄霊をしたが、直ぐに孫娘の体内に戻ってしまう。 そんなことが5回ほど続いた時、金本質屋に淡いブルーのランドセルが持ち込まれた。

このランドセルは、店主がさとみに説明した通りだった。 孫娘の好きな色が淡いブルーだったから、店頭には出さず孫娘のランドセルになった。

その直後だった。 孫娘の体内に繰り返し憑いていた霊体が、孫娘のランドセルに憑してしまったのだ。

それを知らない家族は、孫娘の異変に気付かず、入院し治療していたが、原因不明で命を落とした。

孫娘が亡くなった後、霊媒師に色が変わったランドセルを見せてみると、ランドセルには最初に憑いていた子供の霊体と、孫娘の霊体が絡み合って憑いていると・・・。

二体の霊体が絡み合って憑いている場合、浄霊は困難になる。 浄霊ではなく、お焚き上げするしか方法がない。

お焚き上げをした場合、どちらかの霊体が地獄へ堕ちるそうだ。

地獄へ堕ちる霊体を霊媒師が選ぶことは不可能で、店主はそのまま淡いピンクへ色付いたランドセルを売り物としてショーケースに置いた。

しかし、ランドセルの中古品なんて、売れる時代ではなく、3年の月日が流れた。 お焚き上げをするしないで悩んでいた時、さとみが来店しそのまま売ったそうだ。

二体の霊体が憑いたランドセルを、さとみは何も知らないまま購入した。

麦野 さとみ

このランドセル!

麦野 さとみ

お返しします!

麦野 さとみ

返金はしなくていいんで!

麦野 さとみ

さとみは、座っている二人に向けて、ランドセルを投げた。

質屋店主

すまなかった…

店主の娘

ご、ごめんなさい

麦野 さとみ

・・・

最後に、申し訳ない感じで、店主の娘が言っていた。

仮に、花蓮が亡くなったとしたら、三体の霊体が絡み合うこととなる。 その後、お焚き上げをした場合、二体目の霊体が天国へ行き、残り二体は地獄に堕とされるそうで、自分の娘さえ天国に行けるなら、残りの霊体が地獄に堕ちても良かったと言っていた。

これを聞いたさとみは、その場でクビを絞めて殺したくなったほどだ。

さとみは金本質屋を飛び出し、花蓮の元へ駆け付けた。

病室に着くと、花蓮はスヤスヤと寝息を立てて眠っていた。

ナースステーションへ話を聞きに行ったら、さとみが病室を出た後、状態も安定して、そのまま緊急処置を終えたらしい。

主治医にも金本質屋で聞いたことを伝えたら、ランドセルに孫娘とは別に霊体がもう一体憑いていたことに驚いた様子だった。

主治医

ひょっとしたら

主治医

ランドセルに書いてあった

主治医

主治医

あの文字は

主治医

花蓮ちゃんに、危険を知らせていてのかもしれないね…

主治医

花蓮ちゃんを巻き込まないように…

麦野 さとみ

その言葉を聞いて、少し落ち着きました

主治医

亡くなる前の、虫の息の時に

主治医

「ランドセル燃やして」って

主治医

うわ言のように呟いてたんだよね…

主治医

本人は、お焚き上げを望んでいたのかもしれないね

麦野 さとみ

・・・そうかもしれませんね

今更知ったところで、金本質屋の孫娘は戻ってこない。

ランドセルは、別れた旦那に泣き付いて、同じランドセルを買ってもらうことになった。 最初から恥を忍んで頼んでおけば、こんなに苦しまなくて済んだのに…と、後悔ばかりが残った苦い経験をしました。

仮に、欲しい品物がリサイクル屋に売られていたとしても、その品物には前に使用してい人の念というものが少なからず残っているはずです。

そう思うと、リサイクル屋で品物を購入するより、新品を購入して大切に使う方が幸せに繋がるのだと身をもって実感した次第です。

花蓮はその後、1週間ほどで退院して、現在に至ります。

もちろん、ランドセルの事は秘密ですけどね(*^^*)

後書き

この小説「わたしのだよ」は、怖い話を投稿する怖話という場所で投稿済みの小説になります。

怖話で読んだ方はおられないと思いますが、怖話で書いた内容を少し変えて投稿しております。

「わたしのだよ」を書いた経緯は、リサイクル屋で赤いランドセルを見付けて、誰が買うんだろう。という考えが頭に浮かんで、この作品が出来上がりました。

最後まで読んで下さりありがとうございました m(*_ _)m

駄作しか書けませんが、宜しくお願い致します。

作者:真砂鈴

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