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第1話 - あ

2023年09月06日

#恋愛

結城　真矢

マリナ

あっははははははｗｗｗ仕事のデータ入ったＵＳＢ捨ててやったら、

マリナ

ゴミ捨て場でゴミ漁ってゴミ塗れになって探してやんのｗｗｗみっともねーｗｗ

ナオキ

おいマリナ、一体どういうつもりだ！こんなことするなんて…

マリナ

だってぇ、くっさいゴミ親父にはゴミ捨て場がお似合いじゃん！ざまぁｗ

ナオキ

いくら反抗期とはいえ、酷すぎるぞ！

ナオキ

俺のことが嫌いなのはいいが、やっていいことと悪いことがある！

ナオキ

それにあのデータは俺だけじゃなくて、大事な部下達の仕事の成果も詰まってるんだ！

ナオキ

部下たちは関係ないだろう！

マリナ

残念でしたーwwあんたと同じ会社で働いてるってだけで同罪！連帯責任でーすｗｗ

マリナ

それにぃ、私みたいな才能に恵まれなかったから、

マリナ

つまんない会社で社畜として働いてるんでしょ？負け組の自業自得ってやつよｗ

ナオキ

いい加減にしろ！！いくら絵画の才能に恵まれてるからって、

ナオキ

言っていいことと悪いことがあるぞ！

ナオキ

お前がバカにするつまらない会社で俺が社畜として一生懸命働いてるおかげで、

ナオキ

お前達家族を養えてるんだ！

マリナ

はぁ？今あんた、『誰のお陰で食べられると思ってるんだ』って言った？

ナオキ

言ってないだろ

マリナ

でも似たようなこと言ったじゃん

マリナ

そうやって威張る男、私大っ嫌いなんだよね。こんな男と結婚しちゃったママが可哀想

マリナ

働いて稼いでるから、浮気していいっていうわけ？

ナオキ

は？浮気？

マリナ

そうだよ。あんた浮気してるんだよね。最近遅いし、ママが言ってたもん

マリナ

ママ、いつもいつも悲しそうにあんたの帰りを待ってるんだよ

ナオキ

待て、誤解だ！俺は浮気なんかしてない！帰りが遅いのは残業続きだからだ

マリナ

しらばっくれないでよ！ママ、『パパを責めないで、私が悪いの』って

マリナ

すっごく悲しそうに話してたんだよ！

ナオキ

あいつ、何のつもりでそんなことを…！

マリナ

ママの優しさに付け込むなんて、浮気オヤジ、最低！！さっさと消えちゃえ！

ナオキ

落ち着いて聞いてくれ！俺は浮気をしたことなんかない

ナオキ

むしろ、浮気をしたことがあるのはママの方だ

マリナ

は！？あんた、浮気の罪をママに擦り付けるの！？

マリナ

最低！許せないよこのゴミクズ親父！！

ナオキ

聞けって！一度落ち着いて話し合おう

マリナ

あんたからなんて何も聞きたくない！ママをいじめるあんたなんて大嫌い！

マリナ

もっともっと懲らしめてやるんだから！

～翌日～

ナオキ

お前…何考えてるんだよ…大事な書類を燃やすなんて…

マリナ

あっはははははｗｗよーく燃えていい気分だったよーｗｗｗ

マリナ

それと、あんたのご自慢の会社にも、あんたが浮気オヤジだってメール送ったから！

ナオキ

それは知ってる。上司に呼び出されて何事かと思ったよ

ナオキ

大事には至らなかったとはいえ、会社にまで迷惑かけるなんて…

マリナ

あんたが悪いんじゃん。浮気オヤジを庇う会社なんてろくなもんじゃないねｗｗ

マリナ

でもこれでちょっとは懲りた？大事な書類が燃えて、仕事にならないでしょｗｗ

ナオキ

いいや、あれコピーだったんだ

マリナ

へ？

ナオキ

コピー元の書類は会社にもあるし、データにも残ってる。だから大丈夫だ

マリナ

はぁああああああ！？ふざけないでよ！なんで浮気オヤジが報いを受けないのよ！

ナオキ

だから、浮気なんて俺はしてない

マリナ

じゃあしてない証拠を出してみなさいよ！

ナオキ

出せるわけないだろ、してない証拠なんて

ナオキ

そういうのを悪魔の証明っていうんだぞ

マリナ

ほらやっぱりしてるんじゃん！訳の分からない言い訳してさ！

マリナ

キモ親父さっさと出ていけ！あんたと血が繋がってると思うと吐き気がする！

マリナ

ママと離婚して、二度と顔見せんな！

ナオキ

はぁ…わかったよ。お前の言う通りにしてやる

ナオキ

俺、お前と血が繋がってないしな

マリナ

へ？

マリナ

ちょっと待ってどういうこと？

ナオキ

言葉通りの意味だ

ナオキ

俺はお前とは血が繋がってない

ナオキ

嬉しいか？血が繋がってると思うと吐き気がするんだもんなぁ

ナオキ

あ、疑うならDNA鑑定結果もあるからな

マリナ

待って待って！じゃあ私はママの連れ子…なわけないよね。生まれた時の写真だってあるし

マリナ

それにわざわざDNA鑑定したってことはまさか…

ナオキ

そうだよ。お前は、ママが浮気相手との間に産んだ子だ

マリナ

え、えぇええええ！？嘘でしょ！？

ナオキ

最初は俺だって、お前を実の子だと思ってたよ

ナオキ

だけどお前が5歳の時、ママの浮気相手が訪ねてきて、

ナオキ

お前の本当の父親だと言いだして、状況は一変した

ナオキ

DNA鑑定したら、案の定、お前は俺の子じゃないことが分かったんだよ

マリナ

確かに小さい時、周りでなんか大人がゴチャゴチャ言ってた時があったけど…

ナオキ

五歳の子供なんだ。訳が分からなくても仕方ない

マリナ

じゃ、じゃあなんで離婚しなかったの？

マリナ

なんで私達と今も一緒に暮らしてるのよ！

ナオキ

圧をかけられたんだよ

ナオキ

ママは土下座して、許してください、もうあの彼とは終わってる、って泣くし、

ナオキ

その上俺とママ、双方の両親が『子供に罪はないだろう、マリナのために許してやれ』って

ナオキ

俺を宥めすかしてきた。5対1の圧力を跳ね返せなかったんだよ

マリナ

ママの方はともかく、あんたの方のおじいちゃんおばあちゃんまで…？

マリナ

そんなにも私のことを…

ナオキ

勘違いするなよ。あいつらは、お前を愛してるというより、お前の才能を愛してるんだ

マリナ

え？

ナオキ

その頃からお前の絵画の才能は発覚していたからな

ナオキ

あいつらは昔から地位や名誉に弱い

ナオキ

失いたくなかったんだよ。『天才画家の子供の祖父母』という地位をな

ナオキ

ま、色々言い訳してきたが、俺自身お前に情が移っていたのは確かだ

ナオキ

ずっと娘として可愛がってきたお前を捨てられなかった

ナオキ

だから、ママやお前と家族としてやり直すことにしたんだよ…その結果がこれだ

ナオキ

俺が浮気をしてるなんて吹き込まれて、暴言吐かれて、仕事にまで悪影響出て…

ナオキ

だから、お望み通り離婚してやるよ

マリナ

待って！私そんなこと知らなかった！ママに騙されてたんだよ！

マリナ

知らなかったんだから仕方ないじゃん！

ナオキ

知らなかったなら何してもいいのか？

ナオキ

俺はお前に浮気なんてしてないと言ったし、話し合おうとしたよな

ナオキ

それを信じず、逃げたのは誰だよ

マリナ

で、でもママ、本当に悲しそうだったもん！信じるしかなかったのよ！

マリナ

ねぇ、本当に離婚なんてしないよね？

ナオキ

するよ。今住んでる家もお前とママには出て行ってもらう。俺の家だからな

ナオキ

勿論、養育費も払わない。お前は俺の子じゃないからな

マリナ

そんな！血の繋がりなんかなくたって、これまで親子としてやって来たよね？

マリナ

私にとって、父親はパパだけだよ！

ナオキ

今更きれいごと言うなよ。あんなことしておいて

マリナ

私、まだ子供なんだよ！浮気相手の子として産まれたのだって、私のせいじゃないんだよ！

マリナ

私だって被害者なんだよ！それなのに見捨てるなんて酷いよ！

ナオキ

そうだよな。お前だってある意味、大人の事情に巻き込まれた被害者だ

ナオキ

だが、罪のない部下達に、俺と同じ会社で働いているからという理由だけで

ナオキ

見下して害を与えようとしたのは一体誰だ？

マリナ

それは…

ナオキ

これからは本当の父親にでも助けてもらえ

ナオキ

もっとも、元々フリーターだったのが慰謝料請求されてホームレスになったらしい上、

ナオキ

今どこにいるのかもわからないけどな

マリナ

待って！本当に何も助けてくれないの！？

マリナ

私これからも絵画教室に通わなきゃいけないし、

マリナ

美術系の高校にも、大学にも通わなきゃならないんだよ！

ナオキ

大変だなぁ。そういう所はお金もかかるっていうし。でも知るかよ

マリナ

私の才能を潰してもいいの！？パパを天才画家の父親にしてあげられるんだよ！

ナオキ

俺はあいつらと違って、そんなものには釣られないよ

ナオキ

所詮、つまんない会社でしか働けない社畜ですので

マリナ

待って！ごめんなさい！許してください！反省するから！これからはいい娘になるから！ねぇ！

～数時間後～

シズカ

ごめんなさい！許して！マリナにも私にも、あなたが必要なの！

ナオキ

もう何を言われても変わらない。君を許して、マリナの父親としてやってきて、その結果がこれだ

シズカ

全て私が悪いのよ

シズカ

あなたが浮気してるんじゃないかと疑っていたのは本当

シズカ

だけど、私の立場ではそれを咎めることはできないとも思った

シズカ

それでも、辛かったのよ

シズカ

それでつい、マリナに愚痴を溢してしまった。そしたらあの子、真に受けて…

ナオキ

そうか。俺は残業に追われてただけなのにな

ナオキ

子供にこんなこと吹き込むくらいなら、直接俺に確かめてくれたらよかったのに

シズカ

言えるわけない。私には負い目があるんだもの

シズカ

それに、あなたに対して負い目があったからこそ、マリナが味方してくれるのが嬉しかった

シズカ

一人でも、味方が欲しかったのよ…

ナオキ

そうかよ。俺に味方はいなかったけどな

ナオキ

それに、お前はこれからそのマリナに恨まれ続けるんだ

ナオキ

だってこれからマリナに襲い掛かる不幸は、お前のせいなんだから

ナオキ

お前は償いだと思って、マリナのために生きろ

ナオキ

もしマリナを逆恨みするなら、筋違いだからな

ナオキ

あいつはあいつなりにお前のためを思って動いていたんだ

シズカ

本当にごめんなさい…お願い、もう一度チャンスをちょうだい！

ナオキ

チャンスなら与えてきたよ。もう、十分すぎるほどにな

ナオキ

こうやってお前に言い聞かせてるのが、俺がマリナに向ける、最後の父親としての情だよ

ナオキ

あ、俺は実の両親とも絶縁するから、あいつらの介護もよろしくな

ナオキ

いいよな。お前はあの時あいつらを味方に付けて、圧をかけてきたんだから

シズカ

そんな、無理よ！あなたのご両親でしょう！？

シズカ

なのになんで私に押し付けるのよ！

ナオキ

血の繋がりが全てじゃないから、かな

～後日談～

ナオキ

その後、俺とシズカは離婚が成立

ナオキ

シズカとマリナは家から追い出されました

ナオキ

シズカの両親はすでに亡くなっているので、二人は

ナオキ

同じく俺に縁を切られた俺の両親の家に転がり込みました

ナオキ

ですが、年金暮らしの両親にマリナの学費などが出せるわけもなく、

ナオキ

結局マリナは絵画教室には通えなくなり、

ナオキ

美術系の高校も大学も諦めざるを得なくなったそうです

ナオキ

マリナの描いた絵を高額で売ろうともしましたが、結局一枚も売れず…

ナオキ

これも皆、浮気して嘘を吹き込んだシズカのせいだと、

ナオキ

マリナはシズカを罵っているそうです

ナオキ

俺は離婚の二年後、別の女性と知り合って再婚

ナオキ

その一年後には俺にそっくりな実の子が生まれました

ナオキ

俺の過去を理解してくれる嫁の了承を得て、ＤＮＡ鑑定もしたので、間違いありません

ナオキ

その後、どこから聞きつけたのか絶縁した両親が

ナオキ

『実の孫の顔が見たい』と押しかけてきましたが、

ナオキ

『お前らには既に才能ある孫がいるじゃないか』と言って追い返しました

ナオキ

今では家族三人で幸せに暮らしています

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結城　真矢

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